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ちっちゃなパンツ

 娘と夫が朝ごはんを食べている。私は、食卓に背を向けて息子のオムツを替えていた。

 「ねえ、お父さん見て。ちっちゃなパンツ」

 夫は娘の言葉がよく分からず、「ん?」と聞き返した。

 「ちっちゃなパンツがある」

 娘が指をさしている壁を見てみると、ほんとだ、そこにはちっちゃなパンツがあった。

 建物から出たばかりの朝日が、カーテンの隙間から差し込み、なぜか台形をひっくり返したような、まさにパンツのような形になって壁を照らしている。金色に輝く小さなパンツ。

 「ほんまや、ちっちゃなパンツや。かわいいねえ」
 「誰のパンツかな?」

 ちっちゃなパンツは、太陽が昇るにつれ、みるみる大きく長く伸びていった。

 「どんどんおっきくなる!」

 ちっちゃなパンツは細長い光の筋になり、夫と娘を送り出し、私が朝ごはんを食べるころにはもう消えていた。

 今朝の幸せなひととき。

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