『認知』を眺める練習ー『人間馬車説』
インド哲学の聖典にある、私の好きな(憧れの)一節です。
ヨーガ・スートラの中でも
『ヨーガとは、心の働きを止滅することである』
と説かれています。
ヨガ哲学と絡めて考える自律神経的には、物事に対する『認知』を整えることで自律神経反応も穏やかに整えたいところ。
でも、それってなかなか難しい。
穏やかでいるつもりなのに身体反応としては呼吸が乱れたり、汗が噴き出し止まらなくなったり。怖くて震えが止まらなくなるなんてこともあるかもしれません。
今回は、そんなちょっとまだまだ完璧になれない私たちのための練習の
手がかりとして、ヨガ哲学の『人間馬車説』をご紹介したいと思います。
『人間馬車説』は、インドの経典『カタ・ウパニシャッド』の中で説かれている例えです。
この例えを使い鑑賞者意識を養うことで、まずは自分の心のクセに気づいてみましょう。
これまで『認知』を整えることに着目してきましたが、今回は自分の『認知ー身体反応』に気づくアプローチです。
では。
ちょっと中世の気分に浸りつつ・・・
数頭の馬が引く馬車をイメージしてみてください。
馬車の車体(『肉体』)には真我(誰にでも奥底に潜めている純粋意識)が乗っています。
馬車の手綱は御者(『理智』=物事の道理を判断する能力)が握っており、手綱は『思考』にあたります。
手綱の先の数頭の馬たちは諸感覚器官です。
元々『人間馬車説』は、
感覚器官の反応に思考が引っ張られ判断が鈍ると正しい目的地に到達できない。
だから正しい理智を持って感覚器官を制御し人生の向かう方向を正しく定め、見失わないようにしましょう。という教えです。
今回は、感覚を制御する前段階である『自身の判断により生じた感覚器官の暴走に気づく』ためのの練習として『人間馬車説』を挙げています。
ある日の出来事を例に出します。
自身がプレゼンテーションを行う会議の場で読み原稿を忘れたことに気づいた私。
『理智』の声:「読み原稿がないということはプレゼンはもはや失敗!!」
『思考』の声:「上司に叱られる。怖い。部下にも馬鹿にされるやん。そんなん悲しい。」
感覚器官:大量発汗。瞳孔は開く。血管収縮。胃痛。心拍数激増。
ここで。
先ほどの馬車になりきります。
私は諸感覚器官の状態を鑑賞者意識(真我からの視点)で優しく眺めます。
『ヨシヨシ。
激しく焦っているな。私。
めっちゃ汗かいとるし瞳孔開いとるし声もうわづってるやん。
そっか。
原稿を忘れたということはプレゼンは失敗したも同然と捉えていて、その判断によって恐怖を感じてるんだ。上司に怒られるのが怖いし、部下に馬鹿にされるのが悲しいんだ。』
今回の目的は、解決策を導き出すことではなく、あくまで状態を鑑賞者的に眺めること。
鑑賞者意識を持つことで『物事』と『心の反応』の間にスペースを作ることができます。
この繰り返しにより前頭前野が鍛えられ、扁桃体の暴走を防ぎ、徐々に冷静な意識を保ちながら問題解決法を導き出せる自分に、長い目で見て近づいていきます。
そのための第一歩の練習です。
瞑想を含めたマインドフルネスと同じシステムですね。
心理療法でいう『認知行動療法』の一ステップにもなるかと思います。
『今、ここ』に意識を置きつつ、一歩引いた視点でただ状態を眺める。
「へえ〜。そうなんだ。」と温かい気持ちで受け流す。
日常はとっても素敵な修行の場。
楽しく取り組む中で、人としてちょっとずつ成長していくために。
日々の生活に取り入れていただければ幸いです。
最後まで読んでいただき有難うございます。
以下のオープンチャットでは、自律神経についての知識を持つ専門家(理学療法士・作業療法士・栄養士)が無料で定期配信を行なっています。私の記事もこちらで紹介させていただいています。
ご興味のある方は、登録してみてくださいね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?