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解熱鎮痛剤の闇:鎮痛補助成分は必要なのか

アリルイソプロピルアセチル尿素

アリルイソプロピルアセチル尿素(以下アセチル尿素)についてはイブシリーズ内で解説しましたがおさらいしておきます。
アセチル尿素とは、
・鎮痛作用を高める鎮静成分です
・副作用として眠気が出ます
・眠気が出るので車の運転はしないでください

解説といっても重要だと思う箇所を添付文書から抜き出してわかりやすい表現に変換したにすぎません。
間違ったことは言っていない、はずだと思っていた。

大事な、大事なところが抜けていました

難しいところです。添付文書を改めて見直しました。すべてが大事な注意書きです。
では、これを一言一句もらさずにすべて書き出して、一体誰がそんなもの読みますか?一般の人にとっては気分が滅入るだけです。
そうしたことのために、私を含めた医療関係者がいるのです。

アセチル尿素の副作用

では、アセチル尿素の何が抜けていたのか。
まず、アセチル尿素の副作用は3つあります。その内1つしか私は解説していませんでした。
アセチル尿素の副作用は以下の3つです。
・眠気
・薬疹
・依存

眠気はすでに解説済みです。
薬疹についてはアセチル尿素に限ったことではありません。体に合わなければどんな薬でも出ます、薬疹が出たら薬を止めればそのうち治まるのでそれほど恐れる必要のない副作用です。
問題なのが最後の副作用、これが最強にして隠れた副作用でした。

依存です

依存とはたばこやアルコールと同じ、なければ不安でイライラするあれです。
その依存が強くなったのが「中毒」です。手が震えたり冷や汗が出たりするあの症状が中毒症状です。

アセチル尿素に依存性があることを私は知っていました。
しかしそれを伝え忘れたのは、添付文書に「依存」の記載がなかったから。
その点において添付文書は巧妙にできています。「依存」の記載はないけれど、
・長期連用しないでください
・5、6回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止して、医師や薬剤師に相談してください

そして依存はアセチル尿素だけではありません。もう一つの鎮痛補助成分である「無水カフェイン」にも依存性があります。
無水カフェインとはコーヒーやお茶などに入っているあのカフェインから水を抜いたものです。
カフェインに依存性(また飲みたくなる)があることは説明するまでもありません。
そしてまだ解熱鎮痛剤には依存がありました。

鎮痛剤そのものが依存だった

これはアセチル尿素以上の盲点でした。
理由は以下です。
・痛いから痛み止めを使う、これはわかります。間違ってはいません
・痛み止めからあるから痛くなっても、痛み止めを持ってるだけで安心、「あれ?」
・今日大事な会議があるから、試験があるから痛くなる前に痛み止めを使う、「あれれ?」

痛くないのに、痛みが出そうだから鎮痛剤を使う。これは間違っています。
痛みが出たときに痛みを和らげるのが鎮痛剤です。痛みがないのに使うのは過剰摂取であり、薬物乱用につながります。

ブロモバレリル尿素

令和5年4月より「濫用のおそれのある医薬品」(以下濫用リスク)の指定範囲が改定されました。
現在6つある内の1つに「ブロモバレリル尿素」(以下バレリル尿素)があります。
海外では販売禁止になっており、日本国内でもほとんど使われていません。
かぜ薬においては配合禁止とされている催眠鎮静剤です。
ではなぜ販売禁止や配合禁止となっているのでしょうか。

依存性やその他いろいろ問題の多い、濫用リスクがあるから

催眠鎮静剤は他にもあるのに、依存性のある成分だって他にいくらでもあるのに、このブロモバレリル尿素だけが濫用リスクに指定されている唯一の催眠鎮静剤です。

催眠鎮静剤とは簡単にいえば「睡眠薬」です。
眠れない人にとっては重宝する薬でも、それ以外の目的で使う人がいる。
効能効果より副作用に問題があるから濫用リスクに指定され、かぜ薬の配合も禁止された。
でもね、

解熱鎮痛剤は禁止されていません、どういうわけか

それどころか、濫用リスクの薬は指定2類という区分なので薬剤師がいなくても買えてしまいます。

鎮痛剤はイブプロフェンを例にしてすでに示したように「服用間隔」があります。
イブプロフェンは4時間、6時間以上の間隔をあけて服用するように注意書きされています。
これはまだ体内にイブプロフェンが残っているからです。
しかしバレリル尿素は違います。

バレリル尿素の体内滞在時間は10日前後です(10、12、15日と諸説あり、個人差もあります)。10時間ではありません(それでも長いですが)。
つまり鎮痛剤は体の外へ排出されたのに、バレリル尿素だけが残っている状態です。
これを1日2回3回と続けて飲めばどうなりますか?
バレリル尿素だけがどんどん体に溜まっていき、決して好ましいとはいえません。

そしてこのバレリル尿素と同じような化学構造を持ち、同じような効能効果を現す催眠鎮静剤があります。それが、

アセチル尿素です

アセチル尿素は濫用リスクにこそ指定はされていませんがかぜ薬配合禁止、海外での販売もほとんどの国で禁止されています。

ただ残念ながらアセチル尿素がどれだけ体内に滞在するかは調べられませんでしたが、バレリル尿素と同じような化学構造を持つならそれほど大きな差はないように思います。

そもそもメーカー発表で鎮静剤(睡眠薬)は鎮痛効果を高めると表記していますが、鎮静剤にそういった研究報告はないと医師や薬剤師は断言しています。
ただし、難しい問題があるのも事実です。

頭痛がひどくて、痛みが強くて眠れないときはどうするのか

日中であれば病院に行けばいいですが、夜中だったら?救急車を呼ぶ?
痛みに対する睡眠薬を全否定できない理由がここにあります。
その辺はもう、
・神経質にならないで、
・痛くなったら飲んでもいいから、
・でも、1日3回、1箱までだよ、
・それでも痛かったら病院へ行って診てもらうんだよ

自分で結論を出そうとするから難しいわけで、やっぱり医者に診てもらうのが一番いいわけです。
市販薬はそれまでの「つなぎ」にすぎません。
鎮痛補助成分のアセチル尿素、バレリル尿素には注意をしましょう。
薬を買うときは成分表をまず確認しましょう。
今日の記事で、
・鎮痛補助成分、催眠鎮静剤
・アセチル尿素、バレリル尿素

もう覚えましたね?
私は覚えましたよ。

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