〈みみずくの会〉関連事項年表
まえおき
現在、私が維持し、愛知県名古屋市・長久手市・春日井市で活動している〈みみずくの会〉(旧『みみずく』編集部)という文学集団について、その成立や関連事項を概観できる資料として編年体形式で年表を編んでおくことにしました。
同会は、もともと長久手市に存在する愛知淑徳大学という大学に在学していた久納美輝・染よだか・竹輪太郎の3人が計画した『みみずく』誌からはじまりましたが、現在ではその内の久納だけが残り、私(鷸井)とともに『みみずく』別冊である『デュメリル』誌を発刊しています。
久納美輝はもともと小説家の諏訪哲史ゼミに学んでいましたが、氏が退職されたため歌人の森井マスミ氏のゼミで卒業制作を行いました。大学卒業後には歌人・詩人としての活動を続けています。
年表については客観的に執筆することを心がけましたが、あくまで鷸井という個人の目を通して見た歴史である点にご留意いただければ幸いです。
年表
2013年(平成25年)
・1月 久納美輝(大学1年生)が平成24年度後期の「愛知淑徳大学図書館〈書評大賞〉」コンクールにて〈準大賞〉を受賞する。受賞作は「『幸福な死』から読み取れるカミュの世界観」(カミュ『幸福な死』新潮文庫、2004)。
・5月 新入生の鷸井が文芸部「紙上創作サークル CILOS」に入会。例会で久納美輝に書評の書き方について教えを乞うが、「そういうことは自分で考えるべきだよね?」と諭される。久納の書評を参考にしつつ試行錯誤する。このとき久納はすでに諏訪哲史のゼミ生(プレゼミ)だった。
・7月 鷸井(大学1年生)が平成25年度前期の「愛知淑徳大学図書館〈書評大賞〉」コンクールにて〈大賞〉を受賞する。受賞作は「デジタルな生物、その名は世界」(福岡伸一『生物と無生物のあいだ』 講談社現代新書、2007)。同回の書評大賞で久納は佳作となった(「タイポグラフィとその奥にあるもの」(『カミングズ詩集』思潮社、1968)。やや気まずい衝撃が走った。・9月 鷸井が諏訪哲史の授業に潜りはじめる。講じられていた内容の一部は、後に「言語芸術論――音楽と美術の精神からの文学の誕生」として『紋章と時間――諏訪哲史文学芸術論集』(国書刊行会、2018)に収録された。
2014年(平成26年)
・1月 久納美輝(大学2年生)が平成25年度後期の「愛知淑徳大学図書館〈書評大賞〉」コンクールにて〈佳作〉入選(「詩的作用とそのアプローチ」(池上嘉彦『詩学と文化記号論:言語学からのパースペクティヴ』筑摩書房、1983)。
・4月 久納美輝(大学3年生)が大学公認サークル「紙上創作サークル CILOS」の代表者(部長)となる(~2015年3月)。
・10月 「紙上創作サークル CILOS」で久納の先輩にあたる川岸直貴(大学4年生)がサークル外の読者を想定して文芸誌『GALAXY』を発刊する。久納が小説作品「古本屋奧の銀河」で参加。当時のCILOSが大いに盛り上がる。
・同月 後に『みみずく』第3号に参加することになる早川元将(大学4年生)が、小説「手練手管」により第14回「愛知淑徳大学文藝&マンガ大賞」文学部門で〈優秀賞〉と〈諏訪哲史個人賞〉をダブル受賞する。
・12月 鷸井の小説作品「手」がSF誌『宇宙気流』88号(SFM同好会)に掲載される。
2015年(平成27年)
・1月 鷸井(大学2年生)が平成26年度後期「愛知淑徳大学図書館〈書評大賞〉」コンクールにて〈大賞〉を受賞する。受賞作は「「ゆとり」の構造」(中島梓『ベストセラーの構造』講談社、1987)。
・2月 久納美輝が詩作「きうりの庭」「リサイクル」「感情はバカじゃない」により第10回「『文芸思潮』現代詩賞」〈入選〉に入賞する。
・3月 川岸直貴が大学を卒業。
・5月 諏訪哲史が退職。久納が森井マスミ(歌人・批評家)ゼミに移る。
・6月 「紙上創作サークル CILOS」の部員であった松田菜々(大学2年生)が、浅野梨郷顕彰短歌大会(中部日本歌人会主催)で入賞する。
・8月 松田菜々が久納美輝・染よだか(大学4年生)らとともに岐阜県郡上市で開催された短歌バトル・トーナメント「短歌道場in古今伝授の里」(大学短歌会の部)に「愛知淑徳大学短歌会」チームとして団体参加し、京都大学短歌会に次いで準優勝となる。
・9月 川岸直貴(社会人)が昨年に引き続き、「紙上創作サークル CILOS」の書き手を中心に『GALAXY Ⅱ』を編纂・頒布する。久納が小説「死者の声を聴け」で参加。鷸井も小説「Self-Sufficiency ENGINE」で参加する。
2016年(平成28年)
・3月 久納美輝(卒業間際)が中心となり『みみずく』誌を創刊主宰。川岸、松田、鷸井らが参加する。
・同月 久納美輝が大学を卒業。
・6月 松田菜々(大学3年生)の尽力により、大学公認サークルとして「愛知淑徳大学短歌会」が創立される。創立規定の人数を集めるため学内の文芸部(「文芸倶楽部」「紙上創作サークル CILOS」)から精鋭(?)が集められる。鷸井も数合わせのため入会。特集記事「大学短歌会が行く!(15)愛知淑徳大学短歌会」が『短歌』7月号(KADOKAWA)に掲載される。
・10月 愛知淑徳大学短歌会の機関誌『淑大短歌』第1号が発刊。鷸井も編集を手伝う。
・12月 松田菜々が第20回「「前田純孝賞」学生短歌コンクール」(佐佐木幸綱選)で「大学生の部」の〈準前田純孝賞〉(第2位)となる。
2017年(平成29年)
・1月 久納美輝が歌論「孤独者としての寺山修司」により「中部日本歌人会六十周年記念歌論賞」の〈佳作〉に入選する*。久納が中部日本歌人会に入会(~2023年)。 *正賞受賞者は杉森多佳子(「未来」所属)、佳作のもう1名は三田村広隆(岐阜県可児市)。
・3月 久納美輝が短歌結社「まひる野」に入会する。
・同月 鷸井が大学を卒業し、大学院に進学。
・4月 鷸井が、久納ら諏訪ゼミ出身者による無自覚で行き過ぎた純文学のキャノン(正典 canon)志向への反発心もあって、SF作家である火浦功を論じた評論を『みみずく』第2号用に提出するが没となり、個人発行のSFファンジン『火浦功研究』第1号として発刊。読者の要望によって電子書籍化して頒布される。久納との話し合いの場が持たれる。
・7月 久納の編纂で『みみずく』第2号が発刊。鷸井も編集を手伝う。
・9月 川岸直貴が詩集『音源郷』(休み社)を上梓する。
・10月 愛知淑徳大学短歌会機関誌『淑大短歌』第2号が発刊。鷸井も編集にわりと参加する。久納が短歌連作「勝手にしてくれ」を寄稿する。
・11月 久納による短歌連作「オオサカ奇譚」が『中部日本歌集』第61集(中部日本歌人会)に収録される。
2018年(平成30年)
・5月 鷸井(修士課程2年生)が第8回「日本児童文学者協会評論新人賞」にて〈佳作〉を受賞。受賞作は「還暦の麒麟――佐伯千秋「燃えよ黄の花」試論」。鷸井が協会の児童文学評論研究会に入会(~現在)。
・11月 『みみずく』第3号が発刊。鷸井も編集を手伝う。久納が鷸井の部屋に来て編集の缶詰が決行されるなどする。久納が仕事と創作に忙殺され同人誌編纂が負担になっていることを実感する(このときの編集缶詰が鷸井主宰・編集による2020年10月の『みみずく』別冊発刊につながる)。
・同月 久納による短歌連作「酔客」が『中部日本歌集』第62集(中部日本歌人会)に収録される。
2019年(平成31年/令和元年)
・4月 久納美輝によるエッセイ「第5回 大学短歌バトル 2019 観戦記」が『短歌』5月号(KADOKAWA)に掲載される。
・10月 久納美輝、川岸直貴が詩誌『インカレポエトリ』に参加する。
・同月 久納が『みみずく』の休刊を宣言する。
・11月 久納美輝が「まひる野」会員の立花開との共編で短歌アンソロジー『くわしんふう』を発刊する。
・同月 久納による短歌連作「モーターガレージ」が『中部日本歌集』第63集(中部日本歌人会)に収録される。
2020年(令和2年)
・5月 『デュメリル』(※本年10月部分参照)参加の田本悠馬・日下いさな が文芸誌『小筆生活』を創刊主宰する。
・6月 『デュメリル』(※本年10月部分参照)参加の鯨峰狩肴が電子作品集『幻点』(宇宙雑音叢書)を上梓する。
・10月 川岸直貴が詩誌『ナゴヤポエトリ ナラティヴズ』を創刊主宰。おもに名古屋芸術大学文芸学科の学生が作品を発表する場となる。
・同月 久納による『みみずく』続刊が不可能であるならばと、鷸井が文芸誌『デュメリル』(『みみずく』別冊)を創刊主宰。旧『みみずく』寄稿者と合わせて当時の大学院生(創作表現専修、国文学専修)などが参加する。久納も小説「夜の顔」を寄稿。
・同月 『デュメリル』参加の鯨峰狩肴による小説作品「テルミナ・ルミナリエ」が同人文芸誌『宇宙雑音』第3号に掲載される。
・11月 久納による短歌連作「だいじょぶだぁ」が『中部日本歌集』第64集(中部日本歌人会)に収録される。
2021年(令和3年)
・2月 久納美輝が詩集『アイスバーン』(七月堂)を上梓する。
・8月 久納美輝が短歌連作「嬌声と黙(もだ)」により第66回「まひる野賞」(短歌結社「まひる野」主宰)を受賞する。
・9月 久納美輝の短歌連作「爆ぜてゆく日々」が『短歌往来』10月号(ながらみ書房)に掲載される。
・11月 久納美輝の詩作「アイスバーン」が『現代詩手帖』12月号(思潮社)の「2021年代表詩選」に採録され掲載される。
・同月 久納による短歌連作「映画みたいに激しくて」が『中部日本歌集』第65集(中部日本歌人会)に収録される。
2022年(令和4年)
・3月 『デュメリル』参加の草村うさぎ による小説「夜を超えて」が第2回「羊文学賞」最終候補作となる。選評が『小説現代』4月号(講談社)に掲載される。
・7月 川岸直貴による詩人論「鈴木漠の押韻詩論―「愛染**」「 向日葵」を中心として―」が『詩と思想』8月号(土曜美術社出版販売)に掲載される。
・同月 久納美輝による「我が母校での思い出」(短歌1首とエッセイ) が『短歌総合新聞 梧葉』vol.74 2022年夏号(梧葉出版)に掲載される。
・9月 久納美輝の短歌連作「ルドンの眼」が『短歌』10月号(KADOKAWA)の結社新人賞特集に掲載される。
・11月 久納美輝が歌人の中村美智 、 大野理奈子とともにネットプリント短歌紙『marginal』を発刊する。
・同月 久納による短歌連作「満月の面」が『中部日本歌集』第66集(中部日本歌人会)に収録される。
2023年(令和5年)
・2月 川岸直貴の詩作品「荘園」が第1回「西脇順三郎賞新人賞」最終候補作となる。選評が『現代詩手帖』5月号(思潮社)に掲載される。
・3月 鷸井が博士課程を修了。
・5月 久納美輝が歌人の中村美智とともにネットプリント短歌紙『marginal』No.2 を発刊する。
・6月 久納美輝によるエッセイ「削ったり、足したり」が『短歌』7月号(KADOKAWA)に掲載される。
・9月 鷸井の編纂により『デュメリル』第2号が発刊される。久納が小説「霊園ブルース」を、川岸が小説「落水」を寄稿。松田菜々が俳句・短歌連作を寄稿する。草村うさぎが小説「蟻は飛ぶ夢を見ない」、鯨峰狩肴も小説「湖底に捧げ」を寄稿した。
・11月 久納美輝が詩人のモリマサ公とともに作品集『しとたんかとはいく』を編纂し発刊する。
・12月 久納美輝が歌人の中村美智、菅原海春とともにネットプリント短歌紙『marginal』No.3 を発刊する。
・同月 『デュメリル』第2号の告知が『S-Fマガジン』2024年2月号(早川書房)の「エト セトラ」欄に掲載される。
2024年(令和6年)
・2月 『デュメリル』創刊号参加者の田本悠馬が第43回「春日井市短詩型文学祭」(春日井市主催)短歌部門にて〈市長賞〉(第1席)を受賞する。
・3月 『デュメリル』参加者の杈鴉アスカによる小説「ブギーポップ・イデオフォン 月夜の淵に腰掛けながら」が「HARU COMIC CITY 32」内「上遠野浩平作品非公式オンリー/プチオンリーイベント「世界はきみのためにある」」運営編纂のアンソロジー『はるか遠くの未来より』に収録される。
・同月 久納美輝の詩作「酸性雨」が『現代詩手帖』4月号(思潮社)に掲載される。
・4月 『みみずく』『デュメリル』参加の松田菜々が短歌結社「まひる野」に入会する(以降「大澤菜々」名義でご活躍中)。
・同月 久納美輝が歌人の中村美智、菅原海春、花島照子とともにネットプリント短歌紙『marginal』No.4 を発刊する。
・5月 『デュメリル』参加者の杈鴉アスカによる小説「何についてはどう思ってるの?」が『東京流通センターありがとう合同誌「Thank you foR Cooperating!!!!!」』(善之新)に収録される。
・同月 鷸井の小説「From Yapooful Archipelago, With Love」が『伊藤計劃トリビュート 閉ざされた世界と、その敵』(メルキド出版)に収録される。
・6月 『まひる野』6月号(まひる野会)の「新進特集「わたしの郷土・わたしの街」」にて、久納美輝のエッセイ「あらゆる場所に中心がある」が掲載される(短歌連作10首「仏滅だから」併録)。
・7月 鷸井が、トークイベント「今インディーズ出版は?~名古屋・東京大阪~」(沖鳥灯(メルキド出版主宰)氏企画立案 、文化集団「文学砂漠」主催、於 特殊書店Bibliomania〔名古屋市栄〕)にパネリストの一人として登壇した(27日 19:00~21:30)。
・9月 久納が本棚探偵〔名古屋市大須の喫茶店〕にて、第1回本棚探偵歌会を開催する(29日 14:10~15:20、歌提出5人、当日参加7人)。なぜか鷸井も参加した。
・10月 久納美輝による短歌連作50首「半身に感じ取る風」が、第70回角川短歌賞 予選通過作品となる(応募総数721、予選通過33作。予選通過作に対して選考委員による選考が加えられ、受賞作1作品および佳作3作品が決定された。詳細は『短歌』2024年11月号、67頁を参照のこと)。