#263 読書感想:『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織づくり、地域づくりの実務家。竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点で、ゆるゆるとお話をしていく番組です。この番組が面白かった。あるいは参考になったら、フォロー・コメントなどをいただけると嬉しいです。
昨日は、若い世代の「飲みニケーション」の話でした
昨日はですね。#262 若い世代は本当に「飲みニケーションが苦手」なのか調べてみたというお話をしましたね。
よく「最近の若い世代は飲みに行かない」は、おじさん世代に、まことしやかにつぶやかれている話ですが、いろんなアンケートや調査をデータから見ると、どうなのか? というお話でした。
一言でまとめると、「必ずしも、若い世代が飲みに行かない、というわけではないんじゃないか?」というのが、データから見えた僕の意見です。
今日の話は、書籍『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』について
昨日の記事の最後に引用した本があります。『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか 〝ゆるい職場〟時代の人材育成の科学』という本です。
この本は、古屋星斗さんが書かれた本です。今日は、この本についてお話したいと思います。
若手の育成が難しい理由をデータから読み解いた本
この本は、いま「若手を育てるのが難しい」あるいは、「世代間ギャップを感じる」と思っていらっしゃる管理職世代やベテラン世代、中堅世代の方々が、「なるほど」と。「だからわたしは、若手世代を育てるのが難しいと感じていたのか」という理由が、とてもよく理解できる、腑に落ちる本です。
一般的に「世代論」といえば、「若手世代はこうだ」「マインドセットが違うんだ」「価値観が違うんだ」といった、特徴を理解しようとするものが多いように思います。
でも、「価値観が違うから」といって、関わり方を変えていくのも、正直難しいものです。その結果「どう関わったらいいんだろう?」と悩むのではないかと思います。
一方、この本に書かれているのは各世代の価値観というよりは、「なぜ、若手世代は、そういった考え方や行動をするのか?」ということを、データや、社会環境の変化、職場環境の変化といった時代背景から読み解いています。
その結果、「社会や職場環境が〇〇のように変わってきているので、若手世代はこのように考えるんです」ということが、感情論や「VUCAの時代だから」といったふわふわした内容ではなく、データからきちんと読み解いているところが、とても優れた本です。
管理職世代だけではなく、若い世代にもおすすめ
タイトルからすると、この本は管理職世代が対象だと思いますが、僕はこの本を、若い世代のみなさんにも勧めたいなと思いました。
なぜならば、若い世代が抱えているであろう、不安や悩みが生じる原因が、とてもよく理解できる本だからです。
高校生、大学生、そして、入社して間もないみなさんは、「将来、このままで大丈夫なのかな?」とか、就職前後に感じる「この会社でいいんだろうか?」といった不安や悩みを感じることがあると思います。でも、なぜ、その不安を感じたり、悩んだりするのがわからないってことも、よくあると思います。
この本を読むと、若い世代のみなさんが、悩んだり、不安に感じたりする「理由」が、とてもよく分かるはずです。
ですので、この本のタイトルからすると、上司向けの本に感じられる方も多いと思いますが、上司だけに限らず、若い世代も含めた、すべてのビジネスパーソンがこの本を読むと、いま、あなたが置かれている状況が、データや客観的な視点から、現在の状況を理解できるのではないかと思います。
この本に書かれているエッセンス
この本に書かれているエッセンスはとてもたくさんあるので、一言でまるっとまとめるのは難しいです。
しかし、あえて一言でまとめてみると、『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』という観点で言えば、1つは「心理的安全性が足りていない」こと。もう1つは「キャリアの安全性が足りていない」こと。
「心理的安全性」とは、ここ何年、よく耳聞きする言葉ですよね。知ってる方も多いと思います。心理的安全性とは、不安や悩みを遠慮なく話せる、共有できること。「この場にいても安全だ」と思えるような関係性です。
「キャリアの安全性」とは、「わたしは、この会社で働いていて、将来大丈夫なのだろうか?」という、将来のキャリアに対する不安感がないこと。「この会社にいても安全だ」と思うことができれば、その環境にいるし、「不安だ」と思えば、離れていく、ということです。
いても無駄、言っても無駄
話は少しずれますが、この、心理的安全性とキャリアの安全性については、以前、Momentor代表 坂井風太さんが、「いても無駄、言っても無駄」と表現されていました。
「いても無駄」とは、「この会社にいても無駄だな」という、キャリアの安全性が欠如していること。「言っても無駄」とは、「この人には何言っても無駄だな。もう諦めよう」という、心理的安全性が欠如していること。
改めて、心理的安全性とキャリア安全性の大切さを感じました。
世代間ギャップの講演で感じる「管理職の悩み」
さて、僕の本『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本』を出版してから、世代間ギャップに関する講演の依頼を多くいただいています。
世代間ギャップの問題は、ここまでお話してきた心理的安全性とキャリア安全性の課題の「現象」として、さまざまな職場で起こっています。
管理職世代からの「何で若手は、自分が若いころとこんな違うんだろう?」と悩む声を多くいただきます。
その理由は、いま、若い世代が体験している経験を、管理職世代が若いころに経験していないからですよね。自身の経験とまったく違うし、はじめて経験することばかりだから、悩んでいる方がすごく多いです。
悩みや課題に対して、古屋さんの本を読むと「なるほど!」と思えます。悩みの背景にある、社会環境や職場環境、労働環境の変化。それによって「こんなに変わったんだ」と。「なるほど、だからいま、若手と関わるのが難しいのか」ということが、よく理解できると思います。
僕の『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本』は、心理的安全性の課題を解決する
ちなみに、僕の本『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本』は、「心理的安全性」の部分について、特にコミュニケーションの部分について書いてあります。
古屋さんの本をお読みになって、「若手世代との間に心理的安全性を築くために、具体的にはどうすればいいのかな?」と思ったときには、僕の本をぜひお読みいただければと思います。
「キャリア安全性」については、いま、さまざまな企業で「この課題をどう解決しようか」と、実践されている真っ最中ではないかなと思います。
「この会社にいても大丈夫だ」と思えるようなキャリアを築けるようにするためには、キャリアの主体性が高まるような育成が必要だと思います。しかし、それを「どうやって育成していけばいいの?」という部分は、まだ試行錯誤が必要ではないかなと思います。
この部分は、この番組でもさらに深掘っていきたいと思っています。引き続き、ごらんいただければと思います。
というわけで、今日の話はこれで終わりにします。じゃあね、バイバ~イ!