「自発的な進捗報告」の落とし穴とは?進捗報告MTGの適切なタイミング
発注担当者のよくあるお悩みに、プロフェッショナルの先輩がお答えする連載『発注あるあるお悩み相談室』第2弾 です。
今回、発注担当者のスケジュールに関する悩みにお答えいただくのは、数社のメディア制作を経験し、社内外調整のプロフェッショナルである、黒木 鈴華 さん(株式会社LANY)です。
発注あるあるお悩み相談室vol.2「自発的に作業進捗を報告してほしい!都度聞くしかない?」
進捗管理を任されるようになった発注担当者がぶつかる第一関門がこのお悩み
「めっちゃ気持ちわかるな〜」と思わず共感してしまいました。発注者という立場としてはもちろん、プロジェクトマネージャーという形でメンバーに仕事を依頼するケースでも同じような壁にぶつかることがあると思っています。
発注担当者は往々にして複数プロジェクトに関わっており、同時進行で制作進行管理を任されているケースが多いでしょう。そのため、発注先の現場(発注者からは見えない部分!)で何がどこまで進んでいるのかをリアルタイムで把握するのも一苦労です。
「自発的に進捗を報告してほしい」という切実な思いは、発注担当者であれば誰しも抱いたことがあるという確信があるため、黒木が辿り着いたとびきりの解決方法をご紹介したいと思います。
■スケジュールの中に「進捗共有MTG」を組み込もう
元も子もないのですが、今回のお悩みに回答すると、「自発的に」進捗を報告してもらうことを期待しないのが吉です。
つまり、どのタイミングで進捗を共有してほしいのか発注者側が整理した上で、「進捗共有」をスケジュールの中にあらかじめ組み込み、Google MeetやZoomを活用したビデオ通話でやり取りする場を設けることがベストだと黒木は考えます。
■「自発的な進捗共有」における落とし穴
自発的に進捗を報告してほしい……もう少し詳しくいうと「現場の進行感をリアルタイムで正確に把握している受注側の担当者から、適切なタイミングで適切な報告を入れてくれるのが無駄なやり取りを省けて一番効率的では?」という考え自体は、繰り返しになりますが黒木自身も共感できます。
しかし、この「適切なタイミング・適切な報告」における認識が発注者と受注者で完全に一致しているケースはまずないという点が最大の落とし穴だと感じています。
発注者視点で見れば
と考えるかもしれません。しかし、受注者も発注者サイドでどのような動きや事情があるのか把握しきれているわけではないため、
といった形ですれ違いが生じてもおかしくありません。
その結果、発注者視点で「こちらが望むタイミングで進捗報告がされない=毎回こちらから聞かないといけない!」という捉え方になってしまっているのではないでしょうか。
したがって、「よしなに進捗を共有いただけますと幸いです」というフワッとした依頼で受注者に報告を入れるタイミングを一任するのではなく、最初から「いつ・どこまでの進捗を共有するのか」を明確に定めておくことがすれ違いを防ぐためにも必要です。
「進捗共有MTG」をスケジュールにあらかじめ組み込むメリット
進捗共有MTGを最初からスケジュールに組み込むことを「本来不要だったはずのコミュニケーションコストも増えて手間になりそう」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、進捗管理にかかるコミュニケーションは決してコストではありません。そのちょっとした手間があるからこそスムーズなプロジェクト進行につながると黒木は思っています。
具体的には3つのメリットが挙げられます。
(1)オンスケでの進行が期待できる
キックオフから納品までの期間が中長期に及ぶケースでは特にこのメリットを実感できます。あらかじめ進捗共有をする場を設定すること自体に、程よい緊張感を維持する効果があります。
発注から納品までの期間や作業工程によって最適な間隔は異なりますが、「◯日にこの工程までの進捗を共有することになっているから、そこまでにしっかり終わらせよう」と明確に意識させるタイミングを都度設けることで、中だるみさせず、想定通りのスピード感での進行を促すことが可能です。
(2)すぐに軌道修正を図ることができる
定期的に進捗を確認する場を設けることで、進行上のトラブルが発生した時も後手にならず状況把握と対処に向けて動くことができます。
「特に進捗報告がなかったから順調だと思っていたけれど、蓋を開けてみたらかなり進みが遅れており、それを発注先だけでなんとか対処しようと苦戦している状態だった」というケースと比較しても、リカバリーにかかる工数を最小限に抑えられるでしょう。
また、明確なトラブルが発生していなくても、今後の進行におけるちょっとした懸念や相談事項がないか合わせて確認することで未然にトラブルを防ぐことも可能です。
(3)コミュニケーションを取る機会が増え、発注先への理解も促進する
「取引先への催促が気まずい」の記事でも言及した通り、仕事は人と人のコミュニケーションの上に成り立っています。
ビデオ会議という、双方向の会話によって構成される進捗共有の場を設けることで、業務遂行においてマストの情報だけでなく、担当者の人柄や先方社内の作業フローや体制といった「+αで把握できると、円滑な進行を実現する上で大いに参考にできる周辺情報」も収集しやすくなり、発注先への理解を深めることが可能です。
さらに、
といった、発注先の汎用的なビジネススキルの水準やパートナーと仕事を進めるときのスタイルも把握することもできます。
そのため、進行中のプロジェクトをつつがなく進めるためのコミュニケーションの場として機能するだけでなく、今後も継続発注するか否かという発注先選定の観点でも役立ちます。
プロジェクト期間に応じて「進捗共有MTG」を設定しよう
実際に進捗共有MTGを開催する場合、どのようなタイミングで設定するのが良いでしょうか?
これはケースバイケースでいくらでも最適化できると思いますが、進捗を定点観測するという意味でも下記のような間隔で設定するのが黒木の肌感覚としては良い気がします。
ただし、これは「プロジェクトが軌道に乗り、基本的には安定した進行状況」という前提における間隔になるため、必要に応じて開催頻度を調整できるとより進捗共有MTGの意義が高まります。
たとえば初めて取引をする発注先であれば、最初の頃は週次でこまめに進捗を共有するようにし、進め方に問題なさそうであれば隔週、最終的には月次開催に変更するといった柔軟性があると、お互い安心して進行できるでしょう。
このように、日常的なテキストベースのやり取りだけでなく、進捗共有のMTGを定期的に設けることで発注先の進捗管理におけるToDoがクリアになるはずです。
ぜひ本記事を参考にして進捗管理にひと工夫加えてみてください。
【著者プロフィール】
イラスト:みけ みわ子 編集:丸山恋(比較ビズ編集部)
制作協力:CINRA, Inc.