場面98:黒岩のモノローグ(音楽劇「君の名は希望」97)
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舞台中央に照明が切り替わる
そこに黒岩が受刑者の姿で立ち、自分がしたためた便箋を手にして立っている
黒岩、その手紙を読み始める
黒岩
「中田兼親様
中田さん、いつも面会に来てくださり感謝します。日々の報告をしながら中田さんの話を聞く時間がいつも新鮮です。
私が拘置所に入ってから、国選の弁護士が面会に来ました。先生は毎週欠かさず来てくれます。ですが私は最初その先生が信用できませんでした。人権派弁護士とかカッコ付けて、自分のようなヤンキーを利用しているだけだと思いました。
私が先生に心を開くようになったのは、先生が担当した死刑囚の話をされた時でした。
刑が執行された時、先生は彼が本当に納得してそれを身に受けたのか悩んだそうです。そしてこの人は私の身代わりになって刑を受けたと思った、と先生は言いました。その話を聞き、私は先生に自分の罪と向き合いたいと伝えました。
また私は刑務所の受刑者に本を送っているボランティアの方と連絡が取れました。中田さんが紹介してくださった方です。
その方を通して多くの方から手紙をもらい、私も返事を書きました。そんなやりとりを通して私をただ一人の人として向き合ってくれる方々と出会えました。
何の罪もない人を刺しておきながら、いまだに自分がやったことなのか分からなくなります。ですが今大勢の方が私を信頼してくれています。私はそれにこたえたいと願っています。
松井さんが一命を取りとめたことを聞き、ただうれしく感じました。
刑が軽くなるという思いもあります。ですが私に人の心を教えてくれた人が生きていることを知り、これほど心が軽くなったことはありませんでした。
私は今弁護士になりたいという夢を持っています。ただどんな立場であれ犯罪に関わった人を受け止め、支えられる存在でありたいと思います。
ここまで地に落ちた私が立ち直ることなど出来ない、私を傷つけ、あざ笑ったあの男やヤクザたちの言葉を思い出すとそう感じます。
それでもこれから出会う人の温かさを信じ、人の助けを借りながらただ一人の人として生きていきたい、私はそう願います。
また中田さんとお会いできるのを楽しみにしています。
黒岩彰紀」
舞台中央の黒岩の周りに一人、また一人と、登場人物たちが集まる
やがて出演者全員がステージに立ち、合唱する
本作品は、私がほんにかえるプロジェクト様の活動を知ったことから生まれました。
以下のサイトと、代表汪楠様の以下の著作をご参照ください。
ほんにかえるプロジェクトオフィシャルサイト
受刑者の方々から送られる手紙はこちらから読むことができます
「怒羅権と私」彩図社
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