#9 【書評】人生は20代で決まる
今日紹介するのは、メグジェイ著 人生は20代で決まる。
なかなか攻めたタイトルだが、大学生や新卒社会人にとって一読の価値がある本だと思う。というのも、よくある”この手の本”は大体が経済的に成功した経営者などが半ば自分の努力や奇抜さを世の中に自慢するために書かれているような本が多い。しかし、この本はそうではなく、長い間20代の若者について研究してきた学者が、その研究をもとに書いた本だ。
さまざまな若者の事例を通じて、人生においてぶつかる壁をどうやって超えていけばいいのかを教えてくれる。
20代のキャリアをどう過ごすべきか?
本書では、仕事、恋愛、健康の三つに分かれて構成されているが今回は仕事にのみ言及する。それ以外が気になる方はぜひ自分で読んでみてほしい。
そして、仕事に関する教訓の中で最も印象に残っているものは、1番最初に出てくる「アイデンティティキャピタル」を作り上げるというものだ。
アイデンティティキャピタルとはなんなのか?本書の中ではこう述べられている。
要するに、自分の中で武器になる経験やスキルということだ。「これを武器に食べていける!」と思えるものを持とうよ!という至って単純なことだ。
しかし、これが難しい。なぜなら、定義にもあるとおりアイデンティティキャピタルは身につけるのに「時間がかかる」からである。
最近はとにかく効率的に、手っ取り早く物事を身につけようとする傾向が高い。タイパという言葉が身近なものになってきていることからもわかると思う。
しかし、この効率性というのに落とし穴があることを示したいと思う。
無駄が生み出すオリジナリティ
経営学の学問領域に、「競争戦略」という領域がある。この領域は、名前の通り他の企業と比較して成功する企業はどんな企業なのか?ということを研究している。(ざっくりとした説明なので厳密ではないが大体こんな感じ)まあ、より稼げる企業はどんな企業なの?みたいなことだ。
その中で、自社と他社の経営資源を比較する際の観点として「模倣困難性」というのがある。名前の通り自社資源が他社と比較して真似するのが難しいかどうか?という観点だ。
真似が難しいというのは、さらに噛み砕けば「どうしてその資源を得ることができたのかがわからない」ということであり、因果関係が不明瞭であるということだ。
ここで再び効率性の話に戻ってくる。効率性というのは無駄がない、つまり因果関係が極めて明確である状態であるため、誰でも同じようにその因果関係を辿ればそのアイデンティティキャピタルを得ることができてしまう。
そしてこれはそもそもアイデンティティキャピタルとは言えないことはわかるだろう。あくまでもアイデンティティ、独自性を持たなければ意味がない。
そして、その独自性を得るにはある程度の時間が必要になる。時には遠回りしたり、無駄なことをすることで得たアイデンティティキャピタルはそれを獲得するための因果関係が不明瞭になり模倣しにくくなる。
そうすることで初めてオリジナリティあふれるアイデンティティキャピタルを得ることができるのではないだろうか?
自分が好きなことを突き詰めるしかない
ではどうすればこのアイデンティティキャピタルエオ得ることができるのだろうか?
それは「好きなことを突き詰めていく」しかないのだと思う。
アイデンティティキャピタルを獲得するためにはどうしたって無駄なことや遠回りが必要になるが、無駄なことはなるべく避けたいと思うのが人間の性だ。しかし、この時自分が好きなことであればその無駄なことさえも喜んでやれるのではないだろうか。
ゲームを例にとってみるとわかりやすい。もし好きでもないゲームを絶対にクリアしてくださいと言われれば、なるべく遠回りせず効率的に進めることを考えて、途中にある必要のないギミックやイベントは全て飛ばして進めていくだろう。
しかし好きなゲームであれば、全くやる必要のないものまで細かくプレイしていきたくなる。むしろ一つも無駄にしたくないと熱中することになるだろう。
まさにこの「無駄を無駄と思わないもの」を探すことが重要であり、それは言い換えればその人にとって「好きなもの」を探すことと同義だ。
そしてそれをとことん突き詰めて楽しむことで、振り返ってみたらアイデンティティキャピタルができていたという最も理想的な状況に導くことができるようになると私は思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?