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色気のある佇まい
連休、敬老の日の18日はご予約もあり開けることにした。
その早朝には、ラグビー日本代表の大切な試合。残念な結果ではあるが、評論、評価はいろんな人がやってくれるので、走らない、戦わない外野には声援を送り続けることしかできない。また彼らと会う機会があれば、彼らのできないことをやっている今の僕の姿を見せたい。品位と尊重の関係性で。
「ゴルフのアドレスってどうやったら良くなるんですか?」
なぜ僕に聞いてくるのかよく分からないが、業界の仕事の関係で知人も多く、昨今のゴルフ事情も垣間見ている立場からかよくそんな話になる。
この場合はゴルフスイングの導入部、構えのことだが、僕の答えは至極シンプルで、「上手そうな雰囲気を作り込む」ことだとしか伝えない。今は月に一回ほど、しかも誘われるラウンドしか行ってない(実家の事情と、下肢手術の経過がおもわしくなく躊躇する)が「アドレスシングル(上級者に見えるってこと)」だけは変わってない。醸し出す空気は、雰囲気上手。
ゴルフの100倍自信がある玉撞き(ビリヤード)に関して言えば、フォームとレスト(キュー先に近い方の手のブリッジ)で、大抵上級者かどうかが判る。台全体に散らばる球の配置の見渡し方、チョークの使い方、構えるまでの所作が美しい。そして、手玉(白)から先玉に伝わるアクション、キュースピードがブレず、迷いなくストロークをする。それはいい佇まいである。
初めての店に入る。店主の姿勢がいい。ちゃんと来訪者を迎える術を心得ているかのように。年上年下は関係なく敬語を使う。心地良い声のトーンで、長話をダラダラしない。断定的にモノを言わない。相手の興味を感じ取り、自分の話を一方的にせず、話題を繋げてゆく。酔客にも同じ対応を見せる。
お客の想像は掻き立てられる。店を始めるきっかけは?なぜこの場所を、内装、インテリアを選んだのか?この人のこれまではどういう過去があるのだろうか?普段はどんな生活をしているのだろう?その動きや会話に「意図がある店」は、一度では知り得ない空間と人を再び見たいと思わせる。その店の一つ一つ、その所作に、この人は只者ではないと感じさせるものだ。
佇まいの潔さ。そういう人や店は目指すところだ。
モノの姿、有り様、雰囲気。それをダンディーと呼ばれて喜んでいるオヤジは憂き目に遭うものだ。そう言っておけばおっさん達は安心し、本来の意味も語れない人々が使い勝手のいいカタカナとして放つことに気づいていない。あくまで無頓着を装うことこそが本来のダンディズム。ここ日本では「いかにも」の容姿をそう表現したり、喜ばせようとする人がいるから厄介な言葉になった。医師や政治家をまとめてセンセイと呼んだりするように、そんな「楽」を選ぶよりも、その人ならではの言葉で表す方が突き刺さる。
つい先日、ちょっとタイプな女性から教えられたのは、ダンディーなんて言葉よりも、「セクシー」と言われる方が喜ぶべきことで、その人の本音が見えると話してくれた。男の色気、魅力、セクシーと言われたことがあるか。答えのない曖昧=雰囲気とも取れるが、個の振る舞いをセクシーと言われるようになるのであれば、年齢を重ねることにも悪い気はしない。
セクシーな佇まい。思い浮かぶ人が何人かいる。昔のディスコのVIPルームのように、憧れの背中が僕の周りには多くいた。しかし今は、最近の若者はと偉そうに言う大人の背中に、カッコイイ佇まいはほとんど見られない。
微動だにしない。受けて立つ姿勢。余裕のある懐。高貴な佇まいを備える、
そんな大人に会いたいがために、今夜もこの店に立ち続けている。
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