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【ハーブ天然ものがたり】梨
バラ科の果物
イタリア・ルネッサンス期の画家ボッティチェリによる、愛と美の女神ヴィーナスの絵画には、風にまう白薔薇が描かれ、まるでヴィーナスとともに薔薇がこの世に誕生したかのような印象をうけます。
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薔薇はギルガメシュ神話に登場し、聖母マリア、クレオパトラに縁深く、薔薇の冠・ロザリオがいのりの道具となり、薔薇戦争によって王家の紋章に配され…と、植物のなかでもとりわけ地上世界での活躍ぶりがきわだっています。
植物学上バラ科に分類された植物たち、花はもちろんですが果実をつける植物も、人々に愛され、愛の女神の名にふさわしい役割をはたしてきました。
果物を実らせる植物のうち、お花のガクの下(土台)部分がふくらんで実となるものを梨状果といいます。
その名のとおり梨を代表として、林檎、カリン、マルメロ、ビワなどがあり、バラ科の果実は他にも、桃、苺、さくらんぼ、あんずにスモモ、梅にラズベリーなど、眺めてうれし、食べてうまし、まさに愛と美と豊かさの象徴です。
梨の原産は中国といわれていますが、日本でも登呂遺跡(静岡にある弥生時代の集落)から梨の種が多数出土されています。
日本で梨が食べられはじめたのは弥生時代と考えられており、日本書紀には栗、芋、蕪、桑とともに梨の栽培を奨励する記述がのこされています。
江戸時代に入ると栽培技術が発達して、100を超える種類の梨がつくられていたそうです。
古代中国から西洋にもちこまれた梨はセイヨウナシ(ラ・フランスなど)になり、古代ギリシャ時代に栽培されていた記述があります。
日本の梨とちがって、細長い瓶のようなかたちで、糖度と香りが高く、石細胞(シャリシャリした歯ごたえのもと)がないので実はやわらかいです。
セイヨウナシの形は pear-shaped(ナシ型)といって、現代では人の体系を表すのにもつかわれます。
ビーナスのような豊穣なからだを形容するほめコトバにもなるし、悪い意味では下半身太り。
また宝石のカットで涙滴(ティアードロップ)の形のものをペアシェイプトといい、豊かで朗々と通る声を pear-shaped voice(梨型の声)と表現します。
梨に例えられる声質は「梨園(芸能関係)」つながりで紐づいたのでしょうか。
むかし唐の時代に梨の植えられた庭園で、宮廷音楽家を育てる養成所がありました。
時の皇帝が直々に教えていたことから、梨園で音楽を学んだものたちは皇帝梨園弟子と呼ばれ、一目置かれていたそうです。
日本では一般社会と一線を画した特殊社会、歌舞伎俳優の社会を梨園と呼びますが、歌舞伎が一世を風靡した江戸時代につけられた呼び名だそうです。
現代では演劇や音楽など芸能の世界を梨園と表現することもあり、劇「壇」ではなく梨「園」と表現するあたり、一般大衆との段差はないけれど、梨の魔法で、すばらしい声を出せるクラスターなのだよ、という感じがします。
声は息、息は感情
東西を問わずバラ科ナシ属(Pyrus)の梨はとても栄養価の高い果実で、ビタミンE、ミネラル、食物繊維が豊富です。
バラ科植物特有の天然甘味成分ソルビトール、アミノ酸のひとつアスパラギン酸、美白成分で知られるアルブチン、ポリフェノールの一種フラボノイドと微量のアミグダリンを含みます。
ソルビトールはグルコース(ブドウ糖)が変換されてできる糖アルコールのひとつです。
口のなかに入れると、ひんやりした感触があり、甘味成分ですが酸への代謝がされにくいので、虫歯になりにくい特徴をもっています。
保湿効果が高く、化粧品の保湿や増粘目的で使用されることも多いです。
アスパラギン酸はアンモニアを体外に排泄するための利尿効果が高いアミノ酸で、神経伝達物質の低下を防ぐといわれています。
アルブチンは紫外線などによるメラニン合成を抑制する作用をもつことがわかり、肌を守る物質として有名になりました。
アミグダリンはバラ科植物の未熟な果実、葉、種子に多く含まれる成分ですが、果実が成熟するにつれて酵素分解が進み消失します。
血液浄化作用があるといわれています。
栄養価のあるバランスよい果物を食べると、具体的な栄養素がなんであれ、純粋にからだがよろこんでいるのがわかります。
からだのよろこびび具合は声色に直結し、気分のよしあしもだだ洩れしがちです。
音をだす箇所・声帯は、からだの一部で血のとおった細胞なので、感情と連動しつつ肉体の元気具合にも大きく影響を受けると思います。
声帯は喉仏(甲状軟骨)のなかにあり、2本の細長い帯のような形で、内喉頭筋群によって構成されています。
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喉頭・咽頭の断面図です(頭をグイッともたげた大蛇のようだといつも思います)
声帯のながさには個人差があり、楽器と同じでながい人は低音が出やすく、みじかい人は高音を出しやすいです。
それを訓練によって音域調整できるのが、梨園クラスターということでしょうか。
声は、吐く息が声帯にあたることで振動して発せられますから、声質は呼吸によって調整することができます。
そして呼吸は感情によって大きく変調するので、意識してみていると面白い発見があるかもしれません。
好きなコトやヒト、モノの前では吸い込み量が大きくなって、息を交感したい、共有したい思いで自然と深い呼吸になりますが、逆に嫌いなコトどものまえでは息をひそめて、同化を拒絶します。
いい香りはいっぱい吸いたい、嫌だと感じる匂いは鼻をつまむのとおんなじですね。
感情が呼吸を変化させるのならば、逆もまた真なり。
呼吸によって感情を、ある程度コントロールできるともいえます。
数十年前に気功で習った技のひとつに、吸う息を60秒以上できるようにするという訓練がありました。
はじめは20秒が精一杯でしたが、練習をかさねると2分ぐらいは吸いつづけることができるようになります。
コツはからだをリラックスさせて、ストローで吸うようにゆっくり、少しづつ吸うことです。
肺がパンパンにふくらみ、横隔膜や胸膜、骨盤底筋まで、うごいているのが感じられます。
60カウントしながら、身体中に空気を満たしていくと、全細胞をストレッチしているような感覚になり、からだのあちこちがポキポキなって、かってに調整される感じがします。
水神・九頭龍様の好物
今は昔(鎌倉時代に記された文献から)、九つの頭をもつ龍(鬼とも)が岩戸に閉じこめられ、善神に転じて水神様となり人々を助けた、というお話があります。
鎌倉中期に記された『阿裟縛抄諸寺略記』の中に、西暦800年代の中盤頃の話として「学門」という名の修行者の法華経の功徳によって、九つの頭と龍の尾を持つ鬼がこの地で岩戸に閉じこめられ、善神に転じて水神として人々を助けたという言い伝えが残されている(調伏善龍化伝承)。
その後、九頭龍権現として崇められ雨乞いが行われた。
雨と水を司る他、歯痛の治療にも霊験があり、好物の梨を供えると、歯の痛みを取り除いてくれるとされている。
水神様は九頭龍権現として崇められ雨と水を司り、歯痛の治療にもご利益があるとして好物の梨を供えることで、歯の痛みを取り除いてくださる、とあります。
日本各地にある九頭龍伝説、9つの頭をもつ龍は八つの股をもつ、ということで八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説を彷彿とさせます。
古事記には「須佐之男命は神通力で櫛名田比売の形を変えて、歯の多い櫛にして自分の髪に挿した。」とあります。
歯は自他との一線を画す、最後の砦です。
自分ではないもの(たべもの)を身の内にとり入れるからには、他物のカタチをかみ砕き、同化しやすい液状にしなければなりません。
他物は歯の砦をとおりぬけたが最後、龍、オロチの形である筒(食道、胃腸、小腸大腸)を通りぬけるあいだに、火・風・水・土、4つの元素が消化(昇華)されながら、まったくべつのものへと変化してゆきます。
人体が小宇宙を表すフラクタルな存在であるなら、歯をまもる九頭竜さまは砦のようなお役目で、事物が変容する次元の変わり目・境界線の守り神、と考えることもできます。
梨をはじめとする梨状果の果実には、エデンの園の知恵の実のように、食べたものを別の次元にいざなう魔力がひそんでいるのかもしれません。
「梨が好物である」と伝承された九頭竜さまは、9つの頭がそれぞれに、いくつもの次元の扉をまもりつつ、歯のような(あるいは櫛のような)形状で「とうりゃんせ」のお役目を担っていらっしゃるのでは。
なおかつ容易に境界線を破られぬよう強面威厳作戦を発動しつつ、自らの移動のためには梨を活用され、ご咆哮(声色)を変化させながら声帯のような門の開閉に使っていらっしゃる?(と、まいど逞しく妄想はつづきます)
「守る竜」はギリシャ神話、ヘラクレスの12功績物語のひとつに、黄金の林檎をまもる竜のお話があります。
ヘスペリデス(ニンフたち、黄昏の娘たち)は世界の西の果てにある「ヘスペリデスの園」に住んでいる。
その近くでは、父アトラースが天空を背負って立っている。
「ヘスペリデスの園」にはヘーラーの果樹園があり、ヘスペリデスは果樹園に植えられた黄金のリンゴの木を世話して、明るい声で歌を歌っている。
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百の頭を持つ竜(または蛇)・ラードーンがリンゴの木の周りにぐるぐる巻き付き、番をしている。
この神話で黄金の林檎を守っていた竜はラドンと呼ばれる百の目を持つ怪物です。
ラドンは天に昇ってりゅう座になりました。アルファ星はトゥバン。
百の目をもつということは「すべてを観ている」ことを象徴しているので、星界に戻ってトゥバンになったラドンは、いまなお現地球史に連なるすべての展開を滞りなく観て記録している、アカシックレコードを守る星、と考えています。
竜を倒し地上の栄華を手にするほど、ヘラクレスは地上にしっかりと地盤を固め、逆に退治された怪物たちは地上要素(土元素の楔)から解放されて、液状(水)になり大気(風)になり、精妙なエーテル(火)、そしてアストラル体へと昇華して星座となりました。
ドラゴン、ペガサス、ケイローン、ネメアの獅子やデイダラボッチ。
地上世界で役割を終えたものたちが天界に昇るたび、彼らが守っていた民族魂も一緒に昇華して、地球次元から消えているのかもしれません。
*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
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セイヨウナシ果実を保湿目的で配合しています。
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お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
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