電通を世界企業にした男、電通四代目社長、通称・広告の鬼、吉田秀雄の伝記、「われ広告の鬼とならん 電通を世界企業にした男・吉田秀雄の生涯」の読書ノートです。
大変内容の充実した本なので、色んな視点別に区切って読書ノートを作成したいと思います。
今回は、吉田秀雄の凄まじいエネルギーに着目して、その働きっぷりに焦点を当ててみたいと思います。
※ちなみに、人材集め、人材教育の視点から構成した、「会社づくり篇」はこちらでございます。
※電通の歴史はそのまま日本の広告の歴史と重なる…という訳で「広告ビジネスの歴史篇」はこちらです。
鬼の朝は早い
皆さんは朝何時に起きていますか?
ご自身のスケジュールと照らし合わせながら見ると興味深いです。
また、車の中では、後述する朝の会議の準備として、部下の業務日誌に目を通していたようです。
鬼の朝の習慣
会社に着いてからの習慣が面白いです。
朝、その日を設計する時間だったのでしょう。
一年の計は元旦にありと言いますが、一日の計は朝にあるのかもしれません。
「この時間に邪魔が入ると機嫌が悪くなる」というのが、なんかカリスマ経営者っぽいですね(笑)
秘書も相当気を遣ったんでしょうね、、目に浮かびます。
恐怖の朝会議
その後は朝会議です。
出社時間といい、コーヒーを飲む文化といい、社長の影響が相当大きかったことがわかります。
いまの時代にはそぐわないと思いますが・・・ただ、吉田は単に恐れられていたのではなく、大変慕われていたことが本書全体を通して感じられます。
また吉田自身も、叱りすぎてしまった部下へ手紙を書いたり、自分のスーツをプレゼントしたり、とにかく愛情の厚い人だったようです。
帰宅後も、たくさん手紙を書いた。言葉で人の心を動かすプロ。
吉田は、筆まめだったようです。
手紙を書くことはもちろん、社内に檄文を書いて配布していました。
やはり広告のプロらしく、人の心を動かす文章、言葉を作るのが好きで、うまかったのでしょう。
電通鬼十則も、普段から言葉の力を信じていた、吉田の信念の結果の一つなのだと思います。
このことは、吉田が幹部になるための資格として作った十の法則、「第二の鬼十則」からも窺えます。
東京と大阪を夜行寝台列車で往復。
吉田が大阪での仕事を重点的にしていた時の働き方もまた凄まじいです。
東京で深夜に仕事を終えると、そのまま夜行列車で大阪へ行ったと言います。
鬼の休日
そんな猛烈な働き方をしていた「鬼」ですが、休日はあったのでしょうか?
吉田は、日曜日にはゴルフに熱中していたようです。
吉田は旧制高校時代から野球が大好きで、自ら監督兼選手として野球チームを組織するほどでした。
しかし50を過ぎると、「野球は少し過激すぎる」と思ったようで、ゴルフに目覚めました。
単なるリフレッシュとしての休息ではなくて、広告業界、メディア業界を巻き込んでゴルフブームを先導し、人材交流の場にしてしまうあたりが、なんとも鬼らしいです。
また、吉田は仕事の合間の気分転換には、銀座の街でショッピングをしていました。そのショッピングというのも、自分のものを買うだけではなくて、部下たちへのプレゼントを買っていたのでした。
すべてが仕事に繋がっていたのだなぁと思います。
鬼の檄
吉田のスケジュールを切り口としてみてきましたが、最後に、仕事の姿勢をみてみたいと思います。
吉田がことあるごとに「檄文」を書いて社内に配布し、意識の統制を図っていたことは上述の通りです。
その中から興味深いものをご紹介します。
売り上げ30億円を突破した際に発した檄文です。
はじめに見た時、「武家諸法度」かと思いました。
「ホ、」に「巧言令色鮮し仁」とある通り、やはり吉田は漢文を好んだようです。敢えて漢文調にしたのではないでしょうか。
そのせいか、全体的に四角い感じの言い回しで、歯切れがよくて説得力があります。
吉田は広告マンは常に研究を続けなければならない、というような思想を持っていたとみえるのですが、そのことが「一、」に表れています。
また、「二、」では広告代理店の組織論が語られています。
案件に応じて、最適な人材を組み合わせて組織を編成すべし、という意図かと思います。これは今日でも重要な組織論かと思いますが、吉田は既に組織編制の本質を見抜いていたのかもしれません。
なかでも特に興味深いのが、「四、」です。
「ゆっくり歩くな!」というのが当時の前のめりな雰囲気をよく表しているように思います。背筋が伸びる感じですね。
意外だったのは、「敬語を使うな」というものです。
かなり体育会的に見えるのですが、タメ口なんか使って大丈夫だったのでしょうか・・・?「(上司が部下に対しては)敬語を使うな」という括弧付きだったのかもしれません。
おわりに
圧倒的なバイタリティ、無尽蔵とも思えるエネルギーを垣間見ることができました。
再三になりますが、時代にそぐわない部分はあるかもしれません。
しかし、当時の時代の雰囲気を知ることができたり、エネルギーをもらえる気がします。
また別の切り口からこの本の読書ノートを作成したいと思っています。