見出し画像

峯澤典子×古屋朋 対談『てばなし』刊行記念 vol.11

スイッチ。

峯:…あ、もうだいぶ、話しちゃってますね、すみません……。古屋さんの詩集の魅力を伝えねば!という思いが強すぎて……ずっとしゃべってました……(笑)。

後藤さんからも何かありましたら(笑)

後:(笑)そうですね。『てばなし』の構成はどのように考えられていたのかなとお聞きしたかったのですが、今の話を聞いていたら、一つのライブを見ている感じなのかなって。

古:なるほど……!

後:最後の方はどんどん改行のタイミングが早くなっていって、平仮名が多用されていき、ゆっくりゆっくり名残惜しい空気になっていく。

峯:なってます、なってます。

後:その流れが好きで。どんな感じで書いていかれたのかなというのをお聞きしてみたいです。

古:たしかに最初はけっこう現実にあったことを書いている話が多くて、真ん中の方はだいぶ想像の世界、ほとんど現実には関係ない感じで、精神のほうに近づいていっている感じなんですけど、最後は言葉の音みたいなところを重視して、もっと削ぎ落していった感じはあります。そうした三段階みたいなのは何となくですけど、考えながら流れを組んでいました。

後:最後の方にシンプルに、自身の方に寄って来るという構成になっているところもいいなぁと思っていたんです。音楽的、映像的という気持ちよさもあったのだと、今日お話を聞いていて思いました。

古:音楽や映画がとても好きで、詩を書くときも一度映像で見えるというか、想像するんです。映画みたく、最初の主人公の視点から景色が見える感じです。

最近はよく森が見えるんですけど、遠くに空があって高い木がいっぱいあって、そこに白い馬が5頭走っているのが見え隠れしたり。そうしたイメージが離れなくて。映像から、音から、描写していくという感じです。

後:そうなんですね。

古:なので、区切りがあまりないのもそういうところからなのかもしれません。

峯:映画のワンシーンをきっかけに詩を書かれることもあるんですか?

古:このシーンがすごく……とかはあまりなくて。もちろん大好きなシーンはたくさんあるんですけど、シーンをきっかけにはしていないですね。でも影響は確実に受けているので、何かしらの映像が反映されているところもあると思います。森のシーンとかも普遍的でどんな映画にも出てくると思うんですけど、それと自分の生活とどう結び付けられるだろうという感覚ですかね。

後:そうすると、詩を書くという発端としては、ご自身の中というよりは向かい合う何かから刺激をされるんですか。

古:きっかけとしては音楽を聴くと書きたくなることが多いです。何かを作りたい、表現したい、みたいになるんですよね。音楽から映像が浮かぶこともあります。
一つ書くときに、音楽などで書くきっかけをもらって、現実のある事象から広げていくことも。たとえば蜘蛛だったら、本当に家に蜘蛛がでてそこから映像が広がっていく、という流れです。

後:先日ある詩人さんたちの詩を書くスイッチをお聞きする機会があったのですが、お一人の方はご自身の中にあるものを素材にして書いていく。もうお一方は、知らないことでも、書きたいなと思ったことを手繰り寄せていって、より近く感じられるようになっていく時に詩に書けたという感覚があると仰っていて、視点が対照的で面白いなって感じたんですね。

それで、他の方たちはどんな発端で書いているか興味がでてきておりまして。

古屋さんは例えば音楽を聴いたり映画をみたり、実際蜘蛛を見たりされた時、いくつかのスイッチが入って書かれるっていうご様子ですね。

古:そうですね。日常の中で目にしたものなどをメモして。
最近最寄りの駅に、謎の巨大な白いモニュメントみたいなものができて(笑)

後:巨大な謎の物体(笑)

古:本当に実用的じゃない謎なものなんですけど、それをきっかけとして書いたりとか。きっかけが現実世界にたくさんあって、それらをずっとインプットし続けてためていくんです。

そして、書くときにためてたものから映像が流れてきて、それを描写していく、みたいな感じです。言葉を選んで作っているんですけど、基本は映像で見たものを書いている感覚で。なので、「深すぎた青」とかは、海に沈んでいる場面が思い浮かんで自分の体が崩れていくのを見た、とかそういうイメージを書いた感じでしたね。

峯:そうなんですよね。

古:峯澤さんの執筆の発端はなんでしょうか?

峯:私も、映像なんですよ。

古:そうなんですね!

峯:具体的な映像の世界に自分が入っていって動いていく感じ。
古屋さんと似ているんですけれど。気になる映画のワンシーンをずっと覚えていて。煙なのか霧なのか、そういう半透明なシーンにいつも惹かれるのですが。

書くときはそんな霧の中に自分が入っていくと、だんだん何かが見えてきて、それを書き留めていくという感じですね。なので、先に言葉と言葉の表面上のつながりがあるわけではなくて、自分が惹かれるシーンの中に身体ごと入っていって、浮かんできたものを書き留めていきます。

古:すごく似ていますね。

峯:だから古屋さんの詩は好きなのかな。入り込んでいけるから。

古:言語化すると不思議ですけど、私も峯澤さんの詩に惹かれる理由がわかりました。

峯:書き方の出発点はさまざまで、ある言葉から別の言葉をどんどんと連想していく方もいると思いますが。私も古屋さんと同じように、最初に具体的な映像が見えて……っていう地点から、ですね。こんなふうに書く方がどれくらいいるかはわからないんですけど。

後:いろいろな方のスイッチを聞いてみたいです。

古:そうですね、知りたいです。



最終回 vol.12「内側で流れる時間のなかから。」へつづく

古屋朋『てばなし』のご購入はコチラから
峯澤典子関連本は
コチラから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?