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目を逸らしたら一巻の終わり!設定が薄っぺら過ぎる殺人マネキンも音響の力で怖さマシマシ!「キラー•マネキン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(668日目)

「キラー•マネキン」(2023)
マイケル•バファロ監督

◆あらすじ
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何者かに怯えて道路に飛び出してきた男を車でひいてしまって以来、フランキーは不気味なマネキンが自分をつけまわしていることに怯えている。フランキーの友人が不可解な死をとげると、彼女は自分や仲間たちが危険にさらされていることに気が付く。仲間たちは結束して、この殺人マネキンの暴走を止めることができるという人物にたどり着くがーー。(Filmarksより引用)
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私の大好きな「キラー〇〇」系のホラー映画です。

『殺人マネキンのターゲットとなった若者たちが次々と理不尽に命を奪われていく』

というシンプルな内容ながら、演出やマネキンの不気味なビジュアル、そして音響の力でB級ホラーの中でもそれなりの部類に入るのではないでしょうか。

特に音響やBGMは相当良かったです。オープニングで流れるロカビリー調の曲も一見ホラー映画にはそぐわないんですけども、それが逆に「これから何が始まるんだろう」と視聴者の興味を惹くので非常に効果的だなと思いました。緊張感のあるBGMや効果音なんかも秀逸で、監督を務めたマイケル•バファロ氏がおそらくは音楽好きでかなりこだわりが強いのかもしれません。

“遠くに佇んでいるマネキン”みたいな構図がまた良いですね。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

正直に言うと内容自体はかなりシンプルというか、悪く言えば薄っぺらくも感じました。

詳しくは後述しますが特に殺人マネキンの設定がとにかくスカスカで、一番の見所のはずなのにあまり作品内で機能せず、終盤には大したバックボーンもないくせに物語の鍵を握ってそうな雰囲気をビンビンに出している盲目の老人ビクターや、急に出てくる自動掃除機ルンバで恐怖演出を増しており、何を見せたい作品だったのかがブレていました。

また、被害に遭うフランキーたち若者グループもそこまでキャラが立っておらず、関係性や生い立ちなどのディテールも薄く、必要最低限の味付けとなっております。

主人公のフランキー
(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

なもんで、本来であればかなりC級よりのB級ホラーになっていたかもしれません。しかし先述したような音響や演出の妙、俳優陣の演技でなんとかカバーし、B級に留まっているように思いました。

現在配信は無いようですが、アマゾンプライム、U-NEXT、Lemino、RakutenTVでレンタルが可能です。

10月末までアマゾンプライムでは100円でレンタルが可能です。ちなみに私の大好きな「キラーコンドーム」(’96)も同じく100円レンタル対象なので、もしまだ未視聴の方はこの機会にぜひ!

原題は“目を逸らすな”という意味の「Don’t Look Away」ですが、個人的には邦題の「キラー•マネキン」のほうが分かりやすくて好きです。(Filmarksより引用).

◇深夜、人気の無い道を走行中の一台のトラックを襲撃した窃盗団。運転手を殴り倒し、積み荷を奪おうとするも荷台には厳重に保管された大きな木箱が一つだけ。それを開けた瞬間、突然トラックの荷台が閉まり、中にいた2人は謎の死を遂げる。そして恐る恐る中を確認した残りの一人も突如苦しみだして死亡。取り乱した運転手は道路に飛び出し、車に撥ねられてしまう。

という王道の始まり方ではあるものの、『殺人マネキンがどれくらいヤバいのか』がしっかりと伝わってくる良い導入だと思いました。

中で何が起こっているのかは分からないけど、悲鳴とトラックの揺れで恐怖を演出するというのがキマってました。
(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

以降は

この運転手をたまたま撥ねてしまった女子大生のフランキーが殺人マネキンを見てしまったことで狙われてしまい、さらには友人たちと気晴らしにとクラブに行ったことで、友人たちもクラブ内でマネキンを見てしまいターゲットになってしまう。一人また一人と友人たちが不可解な死を遂げていく中、フランキーに片思いをしているジョナがSNSで情報提供を求め、マリックと名乗る謎の老人とコンタクトを取ったり、皆で集まり策を講じてなんとか死を回避しようと奮闘する…

という感じで展開していきます。

思いの外活躍するジョナ
コワモテですがナイスガイです。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

冒頭でも少し触れましたが、今作の一番の見どころである殺人マネキンの設定がとにかくペラッペラかつ低予算感が滲み出ていました。

ビジュアルはシンプルながら非常に不気味でとても良かったんですけど、本編で一度も動いているところを見せません。

キレイなオールバックの中肉中背成人男性のような見た目です。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

正確には動いているんですけども、そのマネキンのターゲットとなった人物(作中ではフランキーたち)全員が目を逸らすと“だるまさんがころんだ方式”で近づいてきます。なので、フランキーたちがマネキンを発見し、目を離したら離した分だけ近づいてきて、至近距離になると何かしらの方法で命を奪います。

そのため、その場にいる誰か一人でもマネキンを見ておけば、近づいてくることも、襲われることもありません。

暗がりのシルエットも不気味です。クラブのDJ卓に鎮座している絵面が非常にシュールで面白かったです。
(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

なので“動かない”ではなく、正しくは“動いているところを映さない”という表現が正しいと思います。

製作陣からしたら、マネキンを一体用意して、その都度近づけたり遠ざけたりするだけなので楽は楽だと思いますが、さすがに手抜き過ぎて見逃せないです。

殺し方もプールに沈める、建物から突き落とす、眼球を抉り取る、首をもぎ取る、感電させる等などバラエティに富んでいますが、いかんせん1ミリも動かないですし、死体の側に立っているだけなのであまり怖くはなかったです。どう殺しているのかを見せて欲しかったです。

ただマネキンを置いているだけなのに、音響と照明が備わると怖く見えてくるので不思議です。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

そして個人的に一番気になったのがマネキンのバックボーンについてです。

普通この手の人形系のホラーに登場する殺人人形って、殺人鬼の魂が乗り移ってるだとか、過去の持ち主の怨念が込められているとか、呪術の道具として用いられていた、だとか何かしらのバックボーンがあってこその脅威なんですけど、本作に登場するマネキンについては本当に何一つ情報がありません。

“どこからやってきたのか”や“なぜ人間の命を奪うのか”という一番重要な部分が不明瞭なままなので作品自体がボヤケていました。

なので、作中に出てきた情報だけでマネキンに関する設定をまとめると

•マネキンの姿を見た者は死ぬまで狙われる
•目を逸らすと近づかれる
•誰か一人でも見ていれば動かない

ぐらいのものです。

『マネキンの視界に姿身を置いて、鏡の中の自分と目を合わせ続けることで行動不能にする』

という倒し方は地味ながら中々に面白いアイデアだなと思いました。そんなんでいいの?とはなりましたけど…

遠くからこちらを見ているみたいな構図のほうが怖かったです。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

マネキンの秘密を知っているであろう盲目の老人マリックについては

30年以上前に何かしらのきっかけでマネキンを見てしまい、妻と子供が殺された。仕方なく自身の目を潰すことで難を逃れ、それ以来マネキンの行方を追い続けていた。ようやく居場所を突き止め、厳重に保管して自身が引き取ろうとしていたが、輸送中に冒頭のあの事件が起きてフランキーがマネキンを見てしまったという流れになります。

「自分のことはマリックではなくビクターと呼んでくれ」と言っていますが、果たして本当の名前や生い立ち等はどのようなものだったんでしょうか。(株式会社ビデックス『キラー•マネキン』予告編YouTubeより引用)

何かしら解決策を知っているかのように振る舞ってフランキーたちと接触を図るも、実のところは何の策も無く、『どうせフランキーたちは全員死ぬのだから手っ取り早く自分の手で生き残ってるやつらを殺して、とっととマネキンを回収しよう』というのが彼の腹の中でした。

なので作中では情報提供キャラではなく、ただの恐怖提供要員の狂人であり、「ドント・ブリーズ」(’16)のあの無敵ジジイから狂気や強さ、バックボーンを全部取っ払った残りカスのようなキャラでした。

色々と浅く、ところどころ手抜きが感じられるものの、なぜかこだわりまくっている音響やシンプルに俳優陣のクオリティ高めの芝居でなんとか最後まで持ちこたえている印象の一作でした。決してつまらないわけではないですし、尺は90分弱と見やすいので人形系のホラーが好きな方はぜひ!

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もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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