宇宙戦争そっちのけ!本筋とは無関係過ぎる冗長SF会話劇!ビッグフットと悪魔も出るよ「ビッグフットVSクランプス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(660日目)
「ビッグフットVSクランプス」(2021)
B•C•ファートニー監督
◆あらすじ
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イルミナティ軍との休戦が続く中、同盟軍のカリ王女は恋人のVHとの間に子を授かり、ビッグフットはクリスマスに浮かれクッキーを焼いていた。しかし、突如一晩でイルミナティ星が壊滅、カリ王女の盟友であるアトラス族のシャリア王女が、イルミナティ星を壊滅させた敵と交戦するも戦死してしまう。仲間の死を悲しむカリ王女にクランプスと名乗る敵は、クリスマスを闇の存在にするため、人類に対して宣戦を布告する。些細なすれ違いによって軍から失踪したVHの捜索をビッグフットに託したカリ王女は、同盟軍の終結を呼びかける。今、クリスマスの存在をかけて、人類と悪魔たちの最大最悪の戦いが始まろうとしていた。(Filmarksより引用)
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『地獄の底から召喚された悪魔•クランプスが人類に宣戦布告!迎え撃つは同盟軍のエースパイロットのビッグフット!今、人類対悪魔連合軍の闘いの火蓋が切って落とされた…』
という内容をフルCGアニメの冗長な会話劇でお送りするSF映画です。(ビッグフットやクランプス等様々な種類の怪物が登場しますのでホラーにも分類されていますがホラー要素はもちろん皆無です)
先日視聴した「ビッグフットVSメガロドン」(’21)の続編で、時系列的にも前作の続きとなっております。
今回も魅力的なキャラクターや宇宙の命運をかけた壮絶な戦いはそっちのけで、“夫婦間の悩み”、“カプチーノ派かエスプレッソ派か”、“同盟を組んでくれたら写真アプリが使い放題”など、本筋とは何ら関係の無い会話劇で構成されております。
◇ちなみにクランプスとは
主にヨーロッパ中部の国(ドイツ、オーストラリア、ハンガリーなど)に存在するとされている伝説上の生き物。クリスマスのシーズンになると聖ニコラウス(サンタクロースの起源と言われているキリスト教の主教)に同行して、悪い子供には罰を与える役割を担っているそうです。
クランプス(Krampus)という名前の由来は鉤爪を意味する古高ドイツ語のKrampenに由来しています。特定の地域では毎年12月の最初の2週間の間、クランプスの扮装をした若者が錆びた鎖や鐘を持って練り歩き、子供や女性を驚かすという伝統行事が存在するそうです。時期は異なりますが、なんかちょっと秋田のなまはげみたいですね。
そして、監督•脚本•編集を務めたのは前作から引き続きB•C•ファートニー氏です。代表作としては今シリーズの他に『クローンとして復活したトランプ大統領が人類存亡をかけて爬虫類人たちと壮絶な戦いを繰り広げる』という方方から怒られそうなフルCGアニメ映画「Trump vs the illuminati」があります。
前作では『エースパイロットのビッグフット要する人間たち宇宙反乱同盟軍VS殺戮兵器メガロドン要する爬虫類人たちのアルコン軍』という中々に面白そうなお話をほぼ無駄な会話のみで構成し、肝心の『ビッグフットとメガロドンの戦い』は1ミリも描かれておらず、思いっきりタイトル詐欺な作品でした。
しかし!ご安心ください!
今作ではビッグフットとクランプスは戦います!
戦うと言っても別にステゴロ上等の殴り合いや広大な宇宙を舞台にした空中戦ではありません。
口喧嘩です。
一度だけ相対してほんのちょっと挑発し合います。前作ではそれすら無かったので大きな前進です。褒めて伸ばしてあげましょう。
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ここでもう一度今作のあらすじをご確認ください。
読めば読むほど意味不明ですね。そもそもなぜビッグフットが普通にパイロットをやっているんでしょうか。(あと、VHとはカリ王女のパートナーであるヴァン・ヘルシングの略です)
おおまかに本作をまとめると
『同盟軍と敵対していたイルミナティ軍が一瞬にして全滅。そんな強大な力を持つ悪魔•クランプスは次なるターゲットを同盟軍に定めた。ビッグフット率いる同盟軍はクランプスたち悪魔連合軍を迎え撃つ』
という感じになると思います。
素直にこれを描けばいいものを、カリ王女とすれ違いが続くヘルシングが家出をし、それをビッグフットが捜索しに行ったり、クランプスが様々な悪魔(宇宙人)と同盟を組んだり裏切ったり、不必要にキャラクターを登場させ過ぎたりと、一切話が進展しないまま時間だけが過ぎていきます。
無駄なシーンや会話の具体例としては
•『最近全然かまってくれないカリ王女への愚痴をこぼすヘルシングとそれを優しく諭すビッグフット』
「まぁでもさ、王女も王女である前に女性なんだよ」みたいなヘルシングに寄り添いつつも王女を擁護するビッグフットの大人なセリフが良かったですが、本編にはあまり関係の無いやりとりでした。
•『ビッグフットがアヌビス神のところへ直接赴き、ヘルシングが本当に死んだのかどうか聞きに行く』
クランプスの部下に襲撃され生死不明とされていたヘルシング。何千年も前にオシリスと融合し現世と来世を司る神となった太陽神ラーはヘルシングは死んだと断定するもビッグフットはそれを信じることが出来ず、美味しいカプチーノを入れてくれるでお馴染みのアヌビス神のもとを訪ね、真偽を確かめに行くという無駄なシーンです。ビッグフットが旅立つ直前に脇役のロボットが「私はエスプレッソ派です」と言って、ビッグフットに「うるせぇ!」と一喝される茶番もあります。
•『闇の帝王ルシファーとクランプスの手を組むか組まないかの不毛なやりとり』
ルシファーの「俺と手を組めば写真アプリが使い放題だぞ」という謎の発言と、「いや、別に写真は撮らないからなぁ」とそれを普通に受け流すクランプスの無駄なやりとりは少々退屈でした。
しかし、これらは氷山の一角に過ぎません。
本編のほとんどがこういった無意味なシーンと会話で構成されています。
あと一応クランプスは先述したようにクリスマスの時期に登場する存在なので、あらすじ等でもクリスマスの存在を云々と言っておりますが、本作にクリスマス要素はほぼありません。でもなぜか実写のサンタクロースは登場します。ビッグフット曰く野草で作った大麻が大好きだそうです。
登場人物は前作よりも遥かに多く、セリフは無いながらもどこかで見たことがあるような宇宙人が多数登場します。「新世紀エヴァンゲリオン」のリリス(ロンギヌスの槍が刺さってるやつ)みたいな見た目のヤツ、カニ、人形、ピエロ、トロール、狼、メガロドン、あとは「スターウォーズ」のグリーヴァス将軍みたいなヤツ等など無意味にたくさん登場します。
一応最後は『同盟軍はクランプスたちに滅ぼされ、カリ王女やヘルシングも宇宙の塵と化す。生き残ったビッグフットは戦略的撤退を図り、復讐を誓うのだった』という風にそれっぽく続編を匂わせて幕を閉じます。しかし、このラスト2分を除く残りの約68分は完全に無駄な会話ばかりです。時間の配分がイカれています。
あと、言うまでもありませんが今回も同じシーンの使い回しが多々見受けられます。
何でしょうか。前作も今作もそうなんですけど、フルCGのアニメーションはクオリティが高く、登場人物のデザインもシンプルながらそれなりに良いと思います。
ただ!絶望的に脚本にセンスが感じられません。
大筋自体はB級っぽくて面白そうなんですけど、ビッグフットやクランプスなど登場人物の設定や良さをこれっぽっちも活かすことなく、風呂敷を広げるだけ広げて収拾がつかなくなり、荒唐無稽な会話の応酬で場を濁し、やっつけで話を終わらせてしまうあたりが少々残念です。
ファートニー氏は監督と編集に専念して、それとは別にちゃんとした脚本家を雇えば数倍面白くなると思います。それこそB級おバカ映画として一部のファンからはそれなりに愛される作品になるのではないでしょうか。
これだけ酷い内容だからこそ強烈なインパクトを残しているわけなのでなんとも言えませんが、なんか色々と勿体ないような気もする作品でした。
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