マシンガンで蜂の巣にされる庵野秀明が見られるのはこの作品だけ!特撮愛に溢れたZ級巨大カッパ映画「デスカッパ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(664日目)
「デスカッパ」(2010)
原口智生監督
◆あらすじ
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東京でアイドル歌手の夢に破れ故郷に戻ってきた加奈子。帰省したその日、車を暴走させて村にやってきた若者たちが祖母をひき殺した上に村の守り神である河童地蔵も破壊し、海に突き落としてしまう。やがて河童地蔵にまつられていた“河童様”が怒りのあまり長い眠りから目覚め、加奈子たちの前に現れるが……(cinematoday.jpより引用)
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『村の守り神“河童様”が長い眠りから目覚め、加奈子たちと心を通わせていく。そんな折、突如として巨大怪獣ハンギョラスが出現!次々と町を破壊していく!』といういかにもな内容のZ級カルト映画です。
しかし!
全特撮マニアが泣いて喜ぶであろう遊び心がふんだんに盛り込まれており、個人的には相当面白かったです。いつまでも童心を忘れていない大人たちが大勢集まって和気あいあいと作ったんだろうなと思うと微笑ましくもあり、見ているこちら側も楽しくなってきます。
同じく日活製作の作品である「大巨獣ガッパ」(’67)をオマージュしております。こちらの作品ではガッパの親子の愛を描いているのに対して、本作ではデスカッパが加奈子たち人間と心を通わせていく様子を描いているなど内容自体は大分異なるようです。
今作はこれまでのホラー映画やスプラッター映画の常識を覆す試みのB級映画を生み出す『TOKYO SHOCKシリーズ』として「片腕マシンガール」(’08)、「東京残酷警察」(’09)に続く3作目として、アメリカのエンターテインメント企業メディア•ブラスターズの子会社であるフィーバー•ドリームスの出資を受け、日本で製作されました。
監督は日本の特撮映画における特殊メイクアーティストの重鎮である原口智生氏が、脚本は長きに渡りウルトラマンシリーズの脚本などを務め、円谷プロを支えていた右田昌万氏がそれぞれ担当しています。
ある意味超豪華な出演者たちの顔ぶれも本作の見どころであり、おそらくは原口氏と右田氏だからこそキャスティングできたのではないでしょうか。
そんなすごいキャストをほんの一部ご紹介させていただくと、
元アイドル歌手の主人公•河堂加奈子役には「ウルトラマンメビウス」でアマガイコノミを演じた平田弥里さん、その加奈子の祖母役には「ウルトラマン」でフジ・アキコ隊員を演じた桜井浩子さん
日本政府の重役には「ウルトラマンA」の南夕子役の星光子さん、仮面ライダーシリーズの仮面ライダーストロンガー(城茂)役でお馴染みの荒木しげるさん、あるゆる特撮作品でキャラクターの声を担当した柴田秀勝さん
加奈子たちの前に立ち塞がる国家親衛隊隊長にはみんな大好き庵野秀明御大、そして隊員には数々のウルトラマンシリーズでスーツアクターを担当した俳優の北岡龍貴さん
重部アナウンサー役は特撮映画の巨匠•樋口真嗣氏(明らかに軽部アナを真似した喋り方をしています)
デスカッパのスーツアクターはウルトラマンシリーズでお馴染みの横尾和則氏、ハンギョラスもウルトラマンシリーズで数々の怪獣のスーツアクターを務めた三宅敏夫氏
めちゃくちゃ片言でストーリーテラーを務めている外国人の方はダニエル・アギラル氏というスペイン出身の映画史家、翻訳家です。太宰治や江戸川乱歩、さらには鶴屋南北、水木しげるまであらゆるジャンルの作家の翻訳を手掛けており、日本の妖怪やサブカルにも造詣が深いようで、本作以外だと「シン・ゴジラ」(’16)にも俳優として出演されております。
そして、タレントのなべやかんさんが一人4役(加奈子の幼馴染、政府の出っ歯職員、御本人、群衆の一人)で出演されています。もしかしたらもっと出ているかもしれません。なべやかんさんを探すという目的で今作を繰り返し見るのも楽しいかもしれません。
現在配信などは無いようです。私は池袋のTSUTAYAにてレンタルさせていただきました。
映画の前半部は
せむし男の駅員や人面瘡がある酒屋のご主人など、加奈子が尻子玉村に帰郷してすぐに出会う人々が妖怪じみているのが不思議でした。その後、結局彼らが何者だったのかについて回収されることはなく、少々消化不良でした。
一番の見所でもあるカッパは不良たちに像を撥ね飛ばされた怒りで目覚めているので基本的には凶暴だと思われます。しかし、加奈子など心優しい人間に危害を加えることはなく、アイドル時代の加奈子の歌を聴くと陽気に踊りだすなど怒りがおさまります。
この加奈子の歌は力が抜けてしまうような緩い歌詞と曲調が特徴的で、中毒性が高いです。ちなみに本編でフル尺のPVが流れるなど、かなり擦ってきます。そして、そんな加奈子の歌がクライマックスで重要なポイントになってきます。
中盤は
国家親衛隊のユリコの祖父は戦時中に旧日本軍でカッパを利用して生物兵器を作っており、終戦後も研究を続けるも、あと少しのところで亡くなってしまう。その研究をユリコが引き継ぎ、“海彦”という水陸両用魚人兵器を生み出しました。さらに海彦の数を増やすためにカッパを攫おうということになり、さらには加奈子に改造を施して海彦婦人部隊に入れようとしていました。それをカッパと加奈子に阻止され、最後は焼けを起こし、原子爆弾で全員を道連れに自爆します。その原子爆弾の影響で加奈子やカッパが巨大化したと考えられます。
ちなみに庵野秀明氏は「この国は腐りきっている!」、「お前たちこそアジアの新しい牙だ!」など過激な発言をする国家親衛隊のへっぽこ隊長役で出演しておりますが、ユリコのマシンガンによって最後は蜂の巣にされてしまいます。
そして後半は
ハンギョラスとデスカッパの取っ組み合いは非常に見応えがあり、製作陣の力の入り具合が伺えました。取っ組み合いのシーンはなぜかプロレス中継のようになっており、どすこいプロレスの矢沢孔明さんとなべやかんさんが解説をしながら展開し、これがまた遊び心満載で楽しいです。プロレス技の応酬やガスホルダー(ガスの貯蔵タンク)をバレーボールのようにアタックするデスカッパ、そしてハンギョラスの火炎放射やデスカッパの熱光線など終始ワクワクしっぱなしでした。ちなみにデスカッパの熱光線はゴジラの熱線の発射音を流用しているそうです。
ラストは巨大化した加奈子の例のあの歌で怒りが鎮まったデスカッパが海へと帰っていくんですけども、加奈子は大きいままでした。
私は特撮に関してほぼ知識ゼロなので、作中のパロディの元ネタや分かる人にだけ分かるシーンみたいな部分をおそらく気づかぬままスルーしてしまっているのがなんとも口惜しかったです。置いてけぼり感といいますか、特撮に詳しい人と見たらもっと面白いのになと悔しい気持ちになりました。
それでもこれだけ面白いのが逆に凄いですが、気づけていない魅力も多々あると思いますので有識者の方などいらっしゃいましたら色々と御教示いただける幸いです。尺も85分程と見やすく、しっかり満足感が得られる作品でした。オススメです!
☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。
渋谷裕輝 公式HP↓
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