見出し画像

人類殲滅を目論む電磁波の襲来!未知の機械生命体が迫りくる海上SFパニックスリラー「ヴァイラス」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(652日目)

「ヴァイラス」(1998)
ジョン・ブルーノ監督

◆あらすじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
南洋を航行中の輸送船が、嵐と遭遇後、ロシアの衛星探査船を発見する。だがそれは、宇宙ステーションを経由して侵入した電磁波生命体に乗っ取られていた。人類殲滅を企むその生命体は、捕えた乗組員たちを殺人ロボットに改造し、攻撃を開始する…。(Filmarksより引用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『宇宙から飛来した未知の電磁波生命体と運搬船の乗組員たちの人類存亡をかけた壮絶な戦い』を描いたSFパニックスリラーで、原作は同タイトルのアメコミです。

内容的にはいかにもなB級ホラー映画なんですけども、本作の脅威となるモンスターを“姿が見えない電磁波”にしているところに非常にオリジナリティが感じられ、他作品としっかり差別化が図られていてとても良かったです。

人間の目には見えない“電磁波”というものを生命体にして、その電磁波が船内のコンピューターやら機械を操って自分たちの体を構築したり、人間の体を乗っ取って殺戮マシーン“バイオメカノイド”になったりと、“目に見えない”という条件を最大限に活かしており、そのマシーンたちか狭い船内で所狭しと暴れ回るのは非常に見応えがあって面白かったです。

VHS版のパッケージ
「あなたのデータは狙われている」という煽り文句が時代を感じますね。(Amazon.co.jpより引用)

監督を務めたジョン・ブルーノ氏は今作が監督デビュー作であり、それまでには「ターミネーター2」(’91)など数多くのジェームズ・キャメロン監督作品で視覚効果などを担当し、同監督の名作SF映画「アビス」(’89)ではVFXスーパーバイザーを務め、アカデミー賞の視覚効果賞を受賞するなどハリウッド屈指の映像クリエイターとして活躍しておりました。

今作以外だと、『ジェームズ・キャメロン氏が子どもの頃から憧れていた深海探索の夢を叶えるために、自身で設計した潜水艦でマリアナ海溝の1万1000メートル底まで単独で潜行する』という内容のドキュメンタリー映画で監督を務めています。

これもちょっと見てみたいですね。しかも劇場だと3Dバージョンもあったっぽいです。

ちなみに本編に登場する独特かつグロテスクな外見の蜘蛛型の機械モンスター等の造形やデザインを担当したスペシャル•エフェクト•スーパーバイザーのフィル・ティペット氏は「スター・ウォーズ」シリーズ、「ロボコップ」シリーズ、「ジュラシック・パーク」など数々の名作で特殊効果等を務めてきたハリウッド界の超大御所です。

フィル・ティペット氏
(フィル・ティペットWikipediaより引用)

同氏が30年以上かけて完成させた長編ストップモーションアニメ映画「マッドゴッド」(’21)は内容はほとんど理解出来ないんですけども、そのディストピアで奇天烈な世界観が凄まじく、脳天を稲妻が貫くようなえげつない衝撃を受けること間違いなしです。

デヴィッド・リンチ監督が好きな人は確実にハマると思います。

現在アマゾンプライム、U-NEXTにて配信中です。

公開当時の1998年はちょうどパソコンやインターネットが一般家庭にも浸透してきており、“コンピューターウイルスによる被害”など電子機器の危険性が叫ばれていました。
(Filmarksより引用)
『人間でいられない』というシンプルなキャッチコピーがいいですね。(natalie.muより引用)
natalie.muより引用

◇宇宙の彼方より飛来した知的生命体が電磁波となってロシアの宇宙ステーション•ミールを襲撃。そのままアンテナを介して、海上の衛星探査船•ヴォルコフ号を乗っ取った。その8日後、運搬船•シースター号の乗組員たちは台風の被害に見舞われ、遭難しかけていたところでヴォルコフ号を発見。その船をロシア政府に引き渡せば3000万ドルの報酬が得られることを知った乗組員たちはさっそく乗り込んで電源を入れて船を再起動させる。しかし、それと同時に彼らはこの船に潜む何かを目覚めさせてしまった…

という風に展開していきます。

先述しましたが、脅威の対象となるものが“目に見えない電磁波”というのがB級感たっぷりで非常に好みでした。

主人公の航海士•キット役のジェイミー•リー•カーティス氏がとてもかっこよかったです。(thecinema.jpより引用)

この電磁波の設定も非常にしっかりしており

その正体は知性を持つ電気の塊である未知の生命体で、ロシアの宇宙ステーションを襲撃し、アンテナを介して探査船を乗っ取り、船内のコンピューターを支配して言語、専門知識、医学データ等など、人類の全てを学習するなど非常に知能が高い。また、船内の機械等を利用して狭いところも移動可能な蜘蛛型の見た目になったり、船内にある遺体を利用して大量の殺戮マシーン“バイオメカノイド”を生み出したりすることもできる。

唯一の生き残りであった科学担当官のナディアが電気系統の電源を落としたことで活動が止まっていたが、わざと救難信号を出すことで近くにいたキットたちの船をおびき寄せ、無人船だと思わせて侵入させたところで電源を入れるのを待つというクレバーな一面を併せ持つ。

コンピューターのデータベースから人間は絶滅するべきものだと判断。人間こそがヴァイラス(病原菌)であり、人類を全員バイオメカノイドにすることで殲滅することを行動原理としています。(これに関してはちょっと正論な気もしてしまいますね…)

シースター号の乗組員たち(ktv-smart.jpより引用)

電磁波の生命線は電気エネルギーであるため、大元を断ちさえすれば全員倒すことが出来るので、船内のどこかにいる大元(ボス)を倒すためにキットたちは奔走します。

バイオメカノイドは半アンドロイドのような生々しいビジュアルで、生きた人間を乗っ取ることも、死体を操ることも可能です。機械なので当然痛覚などは無く、腕や足がもげても何度も襲いかかってくるなど相当な耐久性を誇ります。また、開頭手術で脳を支配する魔改造シーンや顔面から機械の足がガバっと出る描写はかなりインパクトがあり良かったです。

バイオメカノイドになってしまったスクィーキー
(watcha.comより引用)

蜘蛛型の機械モンスターも独特な見た目と手作り感があって非常に好みでした。しかし、機械モンスターが大元(ボス)を含め全員蜘蛛型だったので、欲を言えば違うビジュアルの機械モンスターも見てみたかったです。

正直なことを言うと中盤はかなり中弛みしているように感じ、『狭い船内で蜘蛛型の機械モンスターかバイオメカノイドが襲いかかり、キットやベイカーが反撃したり逃げたりする』という展開の繰り返しに少々飽きてしまいました。

爆発や銃撃シーンも迫力がありました。
(cinemanavi.comより引用)

また登場人物の味付けも一部を除いてかなり薄味なので、疑心暗鬼になって単独行動をし続けていたリッチーが終盤で漢気を見せて仲間のために体を張って息絶えるシーン等にもドラマ性を持たせて感動させようとしているのはなんとなく分かるんですけど、あまり効果的とは思いませんでした。

しかし、常に冷静な判断を下し、時には船長を殴り倒すなど大胆な行動を見せてくれる航海士•キット役のジェイミー•リー•カーティス氏は流石の存在感と演技力で作品の魅力を一段階引き上げているように感じました。

ジェイミー•リー•カーティス氏
(ジェイミー•リー•カーティスWikipediaより引用)

同氏は名作ホラー映画「ハロウィン」シリーズのヒロインであるローリー役など、どちらかというとか弱い役の印象が強かったので非常にギャップが感じられてすごく良かったです。

ちなみに、金にばかり執着し、キットにぶん殴られる等人望の欠片もなく、世捨て人の如く立ち振る舞い、最終的にはバイオメカノイドになって殺されてしまう憐れof憐れなエバートン船長役のドナルド•サザーランド氏はその名前からお分かりの通り、「24 -TWENTY FOUR-」のジャック・バウアーでお馴染みのキーファー・サザーランド氏のお父様です。

ドナルド・サザーランド氏
(ドナルド・サザーランドWikipediaより引用)

名脇役として数多くの作品に出演しており、2001年には興行的に大ゴケしたことで有名な3DCGアニメ映画「ファイナルファンタジー」にてシド博士の声優を務めていました。

名作とまではいかないかもですが、時代を感じる手作り感やVFXは非常に良い出来ですし、オリジナリティ溢れる内容は中々のものでした。エンディングを除くと90分ほどの尺なので、さくっと見られるというのも良かったです。

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?