特殊メイクの可能性を広げた珠玉の一作!ラストシーンの衝撃が忘れられない…「ハウリング」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(653日目)
「ハウリング」(1981)
ジョー・ダンテ監督
◆あらすじ
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女性ニュースキャスターのカレンは、最近続発している猟奇殺人事件の犯人エディにポルノショップへと呼び出された。エディは彼女の目の前で得体の知れないものに姿を変えて襲い掛かってきたが、駆けつけた警官に射殺される。カレンは一命をとりとめたものの、襲われた時の記憶を失っており、仕事にも影響を及ぼすようになる。医者のワグナーの勧めで、夫と共に"コロニー"と呼ばれる保養所へ療養に向かうが、そこは今回の事件の発端になった場所であった。(ハウリング(映画)Wikipediaより引用)
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ドラキュラ、魔女、フランケンシュタイン等、モンスター界を代表するホラーアイコンの一人である狼男を題材にした1980年代ならではの意欲作で、製作費100万ドルと少ない予算ながら興行収入はアメリカだけで1800万ドルと大ヒットを飛ばしました。
詳しくは後述しますが狼人間が人間から狼に変身する描写は出色の出来で、特殊メイクによる表現の可能性を広げた作品と言えるのではないでしょうか。内容ももちろん面白いんですけども、この変身シーンのインパクトが非常に強いです。
監督を務めたのは「ピラニア」(’78)や「グレムリン」(’84)でおなじみのジョー・ダンテ氏で、今作は同氏の出世作とも言われており、かなり初期の頃の作品(長編映画監督作品としては3作目)です。そして、原作はゲイリー•ブランドナー氏によって1977年に発表された同名小説ですが、内容は大分異なるようです。
「グレムリン」はこれまでに少なくとも30回以上を見てるくらいに大好きな作品ですが、個人的にはこの企画で見た「ピラニア」も結構好きでした。ちなみにこの「ピラニア」も製作費100万ドルに対して興行収入4000万ドルと大ヒットを記録しています。やはり低予算映画の帝王と呼ばれていた伝説の映画監督ロジャー・コーマン氏の門下生なだけあって、お金をかけなくても面白いものを作ることに長けているのだと思います。
今作のヒットを受けてこれまでに「ハウリングⅡ〜Ⅵ」、「Howling:New Moon Rising」、「新•ハウリング」とビデオスルーを含めて7作の続編が作られていますが、続編に関してはあまり評判が芳しくありません。「ハウリングⅡ」はシリーズにおいて唯一前作と関連性があり、前作の内容が原作とかけ離れていたことにお冠だった原作者のゲイリー•ブランドナー氏が脚本として携わっています。
その結果、前作とは大分作風が異なってしまい、歴史的迷走作品とまで言われております。エンドロールで狼人間の女王(上記画像)が勢いよく服をはだけて胸を露わにするカットがなんと17回も使用されたのが未だに語り継がれているようなので、これはなんとしてでも近い内に視聴したいと思います。
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◇報道番組でキャスターを務めるカレンは数日前にエディと名乗る謎の男から指定の場所に呼び出されていた。ロサンゼルスで連日テレビを騒がせている連続殺人事件の犯人だと踏んだカレンは警察の協力のもと、探知機を携帯したうえでエディと接触を試みる。指定されたポルノショップの個室でカレンはエディと思われる男に背後から襲われるも、駆け付けた警官によりエディは射殺される。しかし、ショックが大きかったカレンはあの時何を見たのか、何を言われたのかなどを思い出せず、事件のフラッシュバックで仕事も手につかなかった。そんな折、犯罪心理学に造詣が深いワグナー博士の勧めで、心に傷を負った人々が共同生活を送り、グループカウンセリングやセラピーなどを行うコロニーにカレンは夫のビルとともに宿泊することに。一方、カレンの同僚であるテリーとクリスは独自の調査でエディの人物像を追う。その結果、狼男の存在に辿り着いた二人は『狼男は銀の弾か炎以外では倒せない』という情報を耳にし、エディの遺体が収容された安置所に赴く。すると案の定エディの遺体は姿を消していた…
という流れになっており、シンプルに狼人間たちの脅威を描くとともに、後半にかけてのタネ明かしパートからの捻りのあるクライマックス、そしてもうひと展開欲しいなと思うところでやって来る捻りのある落とし方が非常に秀逸です。また、カレンとビルのコロニーでの生活パートとテリーとクリスの捜査パートが同時に進行しながら中盤で交わっていくという構成が分かりやすくてとても良かったです。
ここからは完全なネタバレになってしまいますが、
カレンが訪れたコロニーの住人は実は全員狼人間で、コロニーに入るよう彼女に勧めたワグナー博士は狼人間を集め、人間社会との融和を試みるための実験としてコロニーに住まわせていたのでした。しかし、一部の過激派狼人間たちが無謀を起こし、人間たちを襲っていたというわけでした。クリスによってカレンは助け出されますが、逃走時に肩を噛まれてしまいます。『狼人間に噛まれた者も狼になる』ということを知っていたカレンは自身の運命を悟り、その足で生放送の報道番組に出演。狼人間がいることを世間に訴え、それを証明するためその場で狼に変身し、直後にクリスの手によって射殺されます。(おそらくは事前に「私が変身したら撃ってくれ」と言っていたのだと思われます)
テレビでその様子を見た人々は口々に本物だのヤラセだのと半信半疑で、真剣に取り合うこともありませんでした。そして、とあるレストランでステーキをレアで注文する妖艶な女性。彼女はコロニーにいた狼人間のマーシャだった。マーシャが素敵な笑みを浮かべる中、注文した肉が焼けている様子をバックにエンドロールが流れる…
という素晴らしい締め方でした。「たったの90分でこのボリューム?」と言いたくなるほどの満足感でした。これは本当に良作ですね。すごく面白かったです。
そして!
兎にも角にも今作の見どころは特殊メイクによって表現された狼人間の変身シーンです。
それまでの映画におけるモンスターの変身シーンはいわゆるオーバーラップによって表現されていました。
しかし、今作ではこの変身シーンを特殊メイクとダミーの人形を用いることでよりリアルな表現を可能にしました。この特殊メイクを担当したのは当時弱冠21歳のロブ•ボッティン氏です。元々は同氏の師匠であるリック・ベイカー氏が担当する予定でしたが、同年のジョン•ランディス監督の「狼男アメリカン」の仕事を受けたため、弟子であったボッティン氏を推薦しました。
変身中に顔が歪むカットは特殊メイクと機械操作のダミー人形を併用して撮影し、大きく膨らむ胸周りは服の下に風船を仕込むことで表現したそうです。そして、顎が徐々に伸びて狼の顔になるカットはダミー人形の顔にボッティン氏が自らの手を入れて、顎の部分を押し出して撮影したそうです。
結果的にこのボッティン氏による特殊メイクの出色の出来はベイカー氏とランディス監督を大変驚かせ、なんと「狼男アメリカン」を撮り直すことを決定させるにまで至りました。
余談ですがこのロブ・ボッティン氏は仕事への情熱が半端じゃないようで、ジョン•カーペンター監督の「ザ•フォッグ」(’80)で特殊メイクを担当した後、同監督の「遊星からの物体X」の撮影が始まることを知ったボッティン氏は特殊メイクを担当させて欲しいと直談判。しかし、カーペンター監督は「ザ•フォッグ」の一度きりと考えていたようで一度は断わりを入れたそうですが、今作「ハウリング」における同氏の活躍を見て改めて参加を要請しました。
そして、やる気みなぎるボッティン氏は一年以上休む事なく働き続けた結果、思いっきり体を壊し、カーペンター監督の手によって強制的に入院させられたそうです。
ここまで来るとやる気があるとか情熱があるとかを超えて、もはや変態の域ですね。
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