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“エロを見せるための抜け道だった?”キングオブ•クソ映画「死霊の盆踊り」【ホラー映画を毎日観る人】(365日目)

「死霊の盆踊り」(1965)
A•C•スティーヴン監督

◆あらすじ
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小説家のボブは恋人のシャーリーとともにネタ探しのために墓場に向かっていた。シャーリーの反対によりもと来た道を戻ろうとしたボブは運転を誤り、二人は車ごと崖から落下してしまう。一方その頃、墓場では夜の帝王と闇の女王が宴を開いており、死霊となった女性たちが次々と踊りを披露していた。その様子を物陰から見ていたボブとシャーリーだったが途中で見つかってしまい囚われてしまう。
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この「ホラー映画を毎日観る人」という企画を始めてから一年が経ちました。
たくさんの素晴らしいホラー映画に出会ってきましたが中には香ばしい駄作も多々ありました。

しかし今作「死霊の盆踊り」の前では
そんな駄作の数々も霞んでしまいます。

まごうことなきキングオブ•クソ映画です。

90分をドブに捨てたいなと思っている人以外は見ないことをオススメします。
これを見なかったところで人生に何ら影響はでません。

原題の「Orgy of the Dead」は“死者たちの乱交”
を意味します。
日本では1987年公開、2019年にはリバイバル上映もされています。
ちなみに邦題として「死霊の盆踊り」と名付けたのは江戸木純氏で、配給会社はギャガです。
なんとギャガが初めて配給した映画だそうです。

内容という内容もありませんが一言で表すなら

次々と裸の女性が出てきて踊るだけ

です。

その踊りも意味不明だし、シュール過ぎて
捕われているシャーリーが後ろで何度か笑いをこらえているのがそのまま映っています。

このエピソードがマジで意味分からないです。

上手いこと役者が揃わなかったためかシャーリー役のパット•バリンジャーはカツラを被り、全身に金粉を塗った状態で踊る死霊役としても出演しています。

バリンジャーのこのエピソードが好き過ぎます。

“全身に金粉を塗っている”という設定も、当時「007 ゴールドフィンガー」に登場した女性が全身に金粉を塗られるというシーンが話題になったのでそれに便乗しただけだそうです。

ボブ役のウィリアム•ベイツはFBIから俳優に転身した変わり種で、この時点ではほぼ素人だったそうです。
夜の帝王役のクリズウェルはセリフを一切覚えてこなかったらしくほぼ全てカンペを見ながら喋っています。しかもそれを一切誤魔化そうともしていません。

そもそもなぜこんな映画になってしまったのか。

A•C•スティーヴン監督は低予算で大作に対抗するには性描写を増やしてエロをお届けするしかないと思い立ちました。
当時アメリカでは性表現に対する規制が非常に厳しく、1950年代ではストリップショーを記録しただけの「バーレスク映画」やヌーディストの生活に密着するという名目のドキュメンタリー映画でうまいこと裸を見せる程度でした。

こうした状況の中、脚本家のエド・ウッドは「ヌーディー•グーリーズ」(裸の食屍鬼たち)という脚本を書き上げ、その内容だと間が持たないと判断したA•C•スティーヴンが踊りのバリエーションを増やしたそうです。

脚本自体を見直すのではなく、踊りの種類を増やすだけというところに愛おしさを感じざるを得ません。

推察するにこの映画で
「楽しんでもらおう」とか「怖がらせよう」
という意図はほとんどなかったんだと思います。

単なる「エロ表現のための抜け道」でしかなかったのかもしれません。
“なんとかエロを提供したい”というA•C•スティーヴンとエド・ウッドの熱意には只々脱帽です。

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