「うまくいかない人間関係 逆転の法則」を読んでみた!
私たちは日々誰かと何かしらの関わりがあり、コミュニケーションをとっています。その中で、もっとよい人間関係を築きたいと願ったり、頑張っているのにうまく人と関われないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
(1)「よい人間関係」が幸せを生み出す
2002年にイリノイ大学とペンシルベニア大学が「幸せな人」に関する調査を行いました。これによると、幸せな人と不幸な人の大きな違いは「よい人間関係」があるかどうかでした。幸せな人は、例外なく人との「よいつながり」があったのです。また、健康に関する調査においても、長寿に影響を与える要素として、飲酒、喫煙、心臓疾患などの項目以上に、「人とのつながり」や「人からのサポート」が大きな影響を与えることもわかってきました。
人間関係は大切であると誰もが思っています。だからこそうまくいかないととてもつらいものです。人間関係の構築には、時間とエネルギーを使ってしっかりと向き合う必要があります。
さらに著者は「人間関係はスキルである」と述べています。
ピアノやゴルフと同じように練習することで誰でも上達することができるのです。
本著では大きく2つの考え方を採用しながら、人間関係に切り込んでいきます。
ひとつがポジティブアプローチ。
弱みを治して解決するギャップアプローチに対して、強みを伸ばして解決するのがポジティブアプローチです。「ないもの」ではなく「あるもの」に注目することを重視します。
もうひとつが「ものの見方」を少し変えることで、人間関係が大きく変化する方法です。目標は「どろどろトライアングル」を「幸せトライアングル」に変えること。これについて、後ほどくわしくまとめてみたいと思います。
(2)人間関係のトラブルに共通すること
親子関係、夫婦関係、嫁姑関係、ママ友関係、パワハラ、上司との関係、部下との関係、生徒や患者との関係…。
様々な人間関係がありますが、これらがうまくいなかいとき、そこには「3つの立場の人」が存在しているといいます。
人間関係のうまくいかない状態を著者は「どろどろトライアングル」と名付けました。登場人物は「犠牲者」、「迫害者」、「救済者」の3者で構成されています。
のび太くん、ジャイアン、ドラえもんの関係を考えてみましょう。
ジャイアンにいじめられたのび太くんが、ドラえもんに助けてもらう。
よく見かけるシーンです。
このときのび太くんが犠牲者、ジャイアンは迫害者、ドラえもんは救済者になります。
あるいは、童話シンデレラではかがでしょうか。
継母にいじめられたシンデレラが、王子様に出会い人生を変えていきます。
このときシンデレラは犠牲者、継母は迫害者、王子様は救済者になります。
犠牲者は救済者に助けてもらい一件落着したようにも見えますが、実はここに大きな問題が含まれているといいます。
(3)「どろどろトライアングル」が抱える問題点
ドラえもんの話であれば、一旦はドラえもんが解決してくれてのび太くんにひとときの平安は訪れるものの、これが根本的な解決にはなっておらず、第二話では再びいじめられてしまいます。
また、シンデレラでは王子様が現れなかったら、シンデレラはいじめられたまま人生を終えることになるのです。
この「どろどろトライアングル」から抜け出すには、3つの立場の登場人物が、お互いに人のせいにせず、自分の人生を切り開いて夢を実現させていくこと、つまり「自分の道を自分で決めて創造していくこと」が求められます。
具体的には、のび太くんがジャイアンと縁を切る、とか、やりたいことを築き上げていくといった具合にです。そうすることで、のび太くんはその後、ドラえもんに泣きつくことがなくなるのです。そして、ドラえもんはのび太くんを助ける役から、背中を押して励まし、勇気づけていくコーチ役に変わっていくことになります。
(4)犠牲者、迫害者、救済者の気持ち
人間関係がうまくいっていないときは、3つの立場がそれぞれの悪循環の世界で生きています。
以下3つの立場の人が考えていることを見ていきたいと思います。
①犠牲者の気持ち
一見するとかわいそう、と思われがちな犠牲者ですが、実は自らとてもラクな世界に生きることを選択しています。
犠牲者は現状を変えたくありません。自分の身の回りに起きている出来事はすべて誰かのせいであり、自分の責任にすることを避けています。
そのため、結果として新しいことや難しいことにチャレンジする必要も頑張る必要もないので、傷つくこともありません。犠牲者はいまの地位に安住したいので、心のどこかでは救済者のアドバイスを受け入れようとはしていません。
②迫害者の気持ち
迫害者の役割は実は元犠牲者であることが多いです。
さらに迫害者自身も、自分を犠牲者だと思っている場合もあります。
もともと犠牲者だったことがある場合は、ふたたび犠牲者になることを心の底から恐れています。
そのため、具体的な行動として、
・相手を非難して自分の優位を保とうとする
・先制攻撃をしてマウントを取る
といった行動で、一時的に安心感を得ようとしています。
③救済者の気持ち
救済者は一見するといい人に見えますが、必ずしもそうとは限りません。
救済者の原動力となっているのは、自らに対する「無価値観」であり、自分に価値がないことを常に恐れています。そのため誰かの役に立つことで自分の価値を証明しようとしている場合も多いです。
救済者の行動としては
・求められていないのに先回りして助ける
・その人ができることなのに代わりにやってあげる
・無意識のうちに自分の肯定感を高めるための行動をとってしまう
などがあります。
救済者は、犠牲者をつらい場所から解放してあげたり、悪から救ってあげたりすることで自己肯定感を高めようとしています。
その結果、犠牲者自身に問題解決能力が身につかないどころか、犠牲者自身に無力感を与えてしまうことにもなります。こうして、知らず知らずのうちに犠牲者のやる気の芽を摘んでしまうことにもなりかねないのです。
ここまでのお話の中で、3者に対するイメージが変わった人もいるのではないでしょうか。
・犠牲者は、一見つらそうに見える現状に満足していること。
・迫害者は、心の中に恐れや不安があること。
・救済者は、決して人のために行動しているわけではないこと。
このように3つの立場の思惑が、悪循環に絡み合っている状態を「どろどろトライアングル」と呼んでいます。
(5)互いに役割を見つけて足を引っ張りあうことに
これらの3つの立場いずれにも共通しているものがあります。
①おそれから行動しているということ
・犠牲者「傷ついたらどうしよう」と考え恐れている
・迫害者「自分が犠牲者になったらどうしよう」と恐れている
・救済者「無価値観から自分を守りたい」と恐れている
②自分の幸せに責任を持っていないこと
・犠牲者「救済者に依存したい」と人任せである
・迫害者「自分が犠牲者にならなければよい」と責任を転嫁している
・救済者「犠牲者を助けることで自分の存在価値を得たい」と無責任になっている
③自己肯定感が低いこと
不安が行動の原動力になっているため、自分の意思で行動するのではなく、とにかく今の不安を打ち消すために行動している場合が多いです。
これらの3つの立場による「どろどろトライアングル」では、それぞれが育った環境の中から、自らのドロドロの役割を見つけて演じている、とも考えられます。
それでは一体どのようにしたらこの悪循環から抜け出すことができるのでしょうか。
(6)「幸せトライアングル」を作り出す方法
①ものの見方をかえること
まずは、自分の人生の主導権は他人ではなく自分が持っている状態を作ります。
これからの未来の人生も、これまでの過去の人生もすべて自分の決断だったと受け入れることが大切です。過去に起こった悪い出来事の理由探しを辞めて、これまでの人生においては、そのときできるベストのことをやり続けて今があるのだと、現状を受け入れます。
②未来から現在に時間が流れている
私たちは時間は過去から現在に、現在から未来へ流れていると考えますが、実際はその逆です。時間は未来から現在に向かって流れている捉えると説明がつくことが多いです。
つまり、いま目の前に起こっている(よくない)出来事は未来から見ると、それを乗り越えた際に大きな成長につながるはずだと考えて、今を生きていくのです。
「今起きていることは、よりよい未来のために必要なのだ」という視点を持つことが大切です。また、過去の「事実」は変えられないですが、過去の「意味」を変えることはできます。ものの見方を変えることで、過去も未来に起こった出来事について、その意味づけを変えることができるのです。
③「ないもの」を補うのではなく、「あるもの」に感謝して強みにする
私たちは無意識のうちに「ない」ことに注目をしてしまい、当たり前のように「ある」ものを見落としてしまいます。犠牲者マインドにおいては「今日もこんな悪いことがあった」とネガティブなフィルターで考えます。これを切り替えて、いま「あるもの」を探す習慣をつけることで、自然ともっとこうしたいという理想の未来も引き寄せることになります。
「あるもの」に気づける方法として著者は、毎日よかったことを3つずつ書いてみることを薦めています。
上記の①~③のようなことを意識して過ごすことにより、「どろどろトライアングル」が「幸せトライアングル」に生まれ変わります。
「幸せトライアングル」では、犠牲者は「クリエイター」に、迫害者は「チャレンジャー」に救済者は「コーチ」に役割を変えることができます。
以下、クリエイター、チャレンジャー、コーチの特徴について見ていきましょう。
・クリエイターの特徴
クリエイターは自分の人生を自分で作っていこうとする人です。
愛と情熱が行動のベースにあるので、人や社会や未来のすべてを信じています。犠牲者は救済者にすべてを丸投げをしますが、クリエイターはコーチに必要なサポートだけを頼むことができます。
クリエイターのマインドは、自らが欲しいもの、また理想とゴールを見ています。理想が明確なので、そこに近づく小さな一歩を行動に移していくことができます。
・チャレンジャーの特徴
チャレンジャーはクリエイターにとって相手に行動を起こさせるきっかけをくれる人です。
犠牲者がクリエイターになることで、ものの見方が変わり、夢や願望を叶えるためのきっかけを与える人物に生まれ変わります。チャレンジャーのおかげで、チャレンジさせてもらえてる、成長させてもらえている、ありがたい存在になるのです。
・コーチの特徴
コーチは相手の成長を信じ、励ましてサポートする存在になります。
それまで犠牲者のことを「可哀想な人だから私が助けてあげなくちゃ」と思っていたのが、「あなたは大丈夫、きっとできる」と相手を信じ勇気づけ成長を支援するコーチになります。
救済者は人のためにと思って行動していましたが、コーチは人の成長をきっかけに自分も幸せになることを目指します。また、コーチはクリエイターを全面的に信じており、その結果、犠牲者は自信を取り戻し、やってみよう!という気持ちになります。
(7)著者の闘病体験から見えたもの
「幸せトライアングル」の視点が実際に活用できたエピソードとして、著者は自らが乳がんを宣告されて、闘病生活を行った時の自身の気持ちの変化についてのエピソードを紹介してくれています。
宣告された直後は、「どうして私が」「周囲がストレスをかけたから」「医者はもっと早くみつけてくれなかったのか」と周りの人を攻撃し、また過去の自分の行動を責める気持ちが生まれたと言います。
自分が犠牲者で、病気が迫害者、医者が救済者の「どろどろトライアングル」の構造ができあがりました。
しかしその後、「幸せトライアングル」の視点を持つことを心がけ、自身が「犠牲者」から「クリエイター」に変わろうと心がけたと言います。
具体的には、
・過去を振り返って原因探しをしない
・人や環境を責めない
・がんを治すために自分に何ができるかを考える
・未来から現在の自分に向けてのメッセージと捉える
病気になったことで、どのような成長ができるのだろうと考えた著者は、これまで自分が周りの人に頼ることが苦手だったことを知りました。また忙しい日々の中で体のことをしっかりケアできていなかったことので、もっと体を大切にすることができたそうです。
自分の人生。病気のことも治療のことも自分の責任で向き合いたいと考えました。
勇気を出して周りの人に頼ることを覚え、その結果たくさんの人から温かいサポートを与えてもらったことで、心理的に大きく落ち込むことなく乗り越えられたと話しています。
このような経験を乗り越え、著者はますます、ものの見方を変える方法について、また同じ時間をどのように捉えていくのかについて考えるようになれたそうです。
(8)幸せは遺伝や環境では決まらない
人の幸せは遺伝や環境よりも「今日何をするか」「何を考えるか」に影響されます。何かに強く没頭している時間や体験のことをフロー体験と言いますが、この時間を多く作る人ほど前向きに元気に生活できることがわかっています。
ものの見方と考え方を少し変えることで、人間関係が大きく動き出すことがあるのです。
まとめ
人間関係が悪化しているときの構造=「どろどろトライアングル」を抜けだし「幸せトライアングル」を生み出す方法を、著者の実体験を交えて紹介をさせていただきました。
冒頭にあったように、人間関係のスキルは練習によって身につきます。
・理想の未来を思い描いて、先取りすること
・いま「あるもの」を見ること
・自分の強みを知り、それを認め利用すること
・ベネフィットファインディング(この悪い出来事があったからこそ、成長があったと考えること)の考え方を持つこと
人間関係が好転し、人生にいっそう彩りが生まれるように、1つずつできることから始めてみませんか。