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禁忌の子【感想】

山口未桜著『禁忌の子』
を読み終えました。

とても面白い作品でした!
どれほどかというと、
「読みながら飲もうと思っていたコーヒーが冷めてしまう」
くらい夢中になりました(笑)。

ちなみに、私は映画館では必ずポテトをお供にしますが、面白い映画だとポテトがエンディングまで残ります。
本書もそれに匹敵する面白さです。

しかし、センシティブな内容もあるため、読み手を選びそうとも感じました。

※後半はネタバレありの感想です。

あらすじ

救急医である武田航のもとに、溺死体が搬送される。
その遺体は、武田と瓜二つの容貌をしていた。
兄弟のいない彼には心当たりがなく、
同僚で、頭脳明晰な城崎響介と共に調査を開始する。
武田と溺死体の関係、そのルーツとは——。


雑多に感想

冒頭に引き込まれる

救急医療の緊迫した現場から始まり、
テンポ良く物語が進んでいきます。
しかし、瓜二つの溺死体が発見される瞬間、
物語は一気に急ブレーキ。
緩急の効いた展開で、物語に一気に引き込まれました。

表現

巧みな心情表現により、
私の涙腺は決壊寸前でした。

中盤以降、判明していく事実。
登場人物の関係の複雑さ。
それによって起こってしまった悲劇。

誰しもが抱くような喪失感、
その心のうちの描写が丁寧で、
思いっきり感情移入してしまいました。

※以下ネタバレありです。


城崎響介について

城崎は聡明で冷静ですが、その反面、
人の感情が欠落しています。
そこが彼の魅力でもあり、感情移入の難しさでもありました。
武田の相棒という立場ですので、頻繁に物語に登場するものの、
私の中では浮雲のように、違和感として存在していました。

「立花から優しい」と評されていて、
最終的に「学生時代における恋人の死の残滓」
が少なからず彼に影響を与えていることがわかります。
次回作も城崎が中心のようで、彼の感情面の成長が気になるところではありますが、
私の食指が動くかは微妙です。

笑える要素が散りばめられている

一番印象的で、面白いと思ったのは、
武田の「溺死体に対して、尻毛が自身と同じように生えている」
という観点を述べたことです。
良い意味でしょうもなくて、笑いました(笑)

蜻蛉(I was born.)

物語の終盤、武田は「愛」について
胸の内で語ります。

数奇な運命のもとに生まれた航と絵里香。
兄妹事実が判明したからといって、
夫婦の愛は揺らがない。

そして、その二人の間に生まれた娘は
禁忌の子」。
だからこそ、
武田夫妻の意志によって生まれさせられた
ことが強調されていると感じます。

最後の最後にタイトル回収は激アツですね。
私には、現在、
子供ができる予定はありませんが、
「I was born.」を忘れず、大切に育まなければな、と改めて思い至りました。

おわりに

雑感をつらつらと書きましたが、
私は、中川信也のことは、哀れな過去があったとしても許せません。

そして、武田航が、中川に襲われた妻を、
墓参りに行こうと誘うのは、物語の帰結としてはきれいだけど、腹に据えかねますね……。

深まる謎がどんどん解決する流れは、
一気読み必至。
万人にお薦めはできませんが、
読後感は確かに残る作品でした。


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