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香港の現状/そして、中国人は日本映画をどう観ているかという話

 火曜水曜とニ夜連続「BS世界のドキュメンタリー」を観て、金曜日にはアップリンク吉祥寺で、香港の反スパイ法反対デモを内側から撮影したドキュメンタリーを観てきた。BS世界のドキュメンタリーは、ネット広告自動取引の裏側と、ハンガリーにおける民主主義の危機について取り上げていた。

 ハンガリーがひどいことになっていることは、ニュースで見て知っていたが。完全に、旧ソ連のミニチュアのような腐敗した独裁国家に戻っていることを知って、衝撃を受けた。オルバン首相が民主化運動のリーダーだっただけに。

 「香港 裏切られた約束」は、素人がデモ隊と行動を共にして撮った記録ぐらいの認識でいたら、立派なドキュメンタリー作品だったのでびっくり。こちらもニュースで連日観ていたけれど、実際はその十倍以上凄まじい弾圧で、隣に座っていた女性が途中で泣き出したぐらいである。

 催涙弾や放水を浴びながらカメラを持って動き回り、バッテリーが切れた時には近くにいた外国人カメラマンに助けてもらうなど、それ自体が映画になりそうな撮影だったとか。その映像を、自分のパソコン一台で映画に出来てしまう時代。ITは使い方次第という例である。

 監督は今イギリスに亡命中だ。終映後は、同時刻にアップリンク京都で行われている監督のトークショーをZoomで中継。質疑応答コーナーでは三人が質問した。そのうち二人は香港人で、あと一人は大陸の中国人だった。

 香港人二人は現状を嘆き、この映画を一人でも多くの人に観てもらいたいという、願望を込めた感想を述べた。もう一人が中国人だと名乗ると、会場にちょっと緊張が走った。その人は元教師で、日本語で話した。デモの様子を連日ネットで観ていたそうである。

 今の中国では、香港についても歴史についても話すこともできないと、やはり嘆いていた。私はそれを聴きながら、日本の方が少しはマシかなと考えた。どちらがマシかなどという比較でしか考えられないなんて、全く嘆かわしい。

 ハンガリーとはどちらがマシかな。何しろ、自民党の総裁選なんか悪夢なのだ。河野太郎?とんでもない。小泉進次郎?有り得ない。茂木元幹事長?論外。あーあ。

 話は全く変わるが。今、中国で一番人気のある日本人監督は三宅唱だという。昨年は「ケイコ、目を澄ませて」が世界中の映画祭で高く評価された。「夜明けのすべて」の上海プレミアも大好評だった。その他、山中瑤子監督の「ナミビアの砂漠」も上海でアジアプレミアを開催。

 コンペ部門に出品された呉美保監督の「ぼくが生きてる、二つの世界」も、受賞は逃したものの、マスコミからも観客からも高い支持を得たそうだ。テーマは、今年度のアカデミー作品賞を受賞しら「コーダ あいのうた」と共通しているものの、東アジア的な描き方が好評だったとのことである。東アジアで同じテーマを共有し、それに共感できるということは素晴らしいことだ。

 香港のドキュメンタリーを上映しているアップリンクは、小さな劇場ながら、吉祥寺パルコの地下にある都会的な空間。そこに少数ではあっても、香港情勢を心配する日本人や香港人が集まってくる。「こういう場所があることが救いだな」と思いつつ、私は帰宅についたのだった。


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