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それもあなただ(小説まとめ)

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自作の小説をまとめたマガジンです。
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#短編

アイロニーさん(小説)

 怪文書、というと、少し大袈裟になるのかもしれません。  それでも正直、初めて見たときは…

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柴田彼女
11日前
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宙に文字をひらう(小説)

 母は小説家だった。  高校時代に執筆を始め、大学時代に目立つ賞をいくつか取り、流れのま…

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柴田彼女
1か月前
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なんか生きてたってみんな言うんです(小説)

 その夜は妙に客入りが悪かった。  隣町で祭りがあるからそれなりの売り上げを見込んでわざ…

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柴田彼女
3か月前
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おいしい隣人(小説)

 その、本当に言い出しにくいんだけどさ、最近極端に痩せてきている気がするんだけど……だい…

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柴田彼女
3か月前
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みんな私の邪魔をしている(小説)

 周りの人たちは因習だとか時代遅れだとか犯罪だとかいろいろ言っていたけれど、私は別にそれ…

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柴田彼女
4か月前
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そしてまた一年後(小説)

 暗闇の中もがいている。  頭の先を引っ張られるような、掴まれるような感覚があって、次の…

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柴田彼女
4か月前
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魔法少女は卒業できない(小説)

 チッチは、 「ああ、君こそ魔法少女に相応しい。その秘められた力で、世界を救うんだ」  私の部屋の窓際、ゆらゆらと蜃気楼のように揺れるカーテンに見え隠れしながら、そう言って、ひょい、と私の肩に乗ってきた。二つに割れた尻尾の片方で私の頬を撫で、 「君は、きょうから魔法少女になるんだよ」  尻尾の先をマッチ棒のように光らせると、一つの指輪を私の前に出現させてみた。ぽう、と淡い紫の光と共に私の掌の中に指輪が納まる。それは私の薬指にぴったりのサイズで、 「これは【契約】だからね。契約

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悲しくておめでとう(小説)

 まだ上手に一人で歩けなかったころ、膝をすりむいて泣いてしまったある日の夜、父は家族三人…

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柴田彼女
6か月前
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偽物の朱夏(小説)

 教室の隅で、ずれた眼鏡を直しながら一人きりで人間関係に重きを置くライトノベルを読んでい…

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柴田彼女
6か月前
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そこにあるもの(小説)

 カロリーメイト、インゼリー、エナジードリンク、時々、カップ麺。  昼時の綿野くんの食事…

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柴田彼女
6か月前
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指が立つ、火が灯る(小説)

 小指を立てる。小さな火が灯る。ほんの一秒か、それ以下か。  私に使える魔法は、たったそ…

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柴田彼女
6か月前
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しおりちゃんの家(小説)

 しおりちゃんの家はなんだか少しおかしい気がする。お母さんがいつも笑っている。突然遊びに…

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柴田彼女
7か月前
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清らかな水(小説)

 どうにも心を壊せないんだよ。  そう言ってへらへらと笑った彼の心がいまだ壊れていないだ…

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柴田彼女
2年前
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カーテン

 真白な室内へ陽光が真っ直ぐに差し込んでいる。看護師が濡れタオルで俺の顔を拭う。夏の熱気で彼女の顔が薄く赤らんでいる。不意に彼女が顔を背ける。ドアのほうを見ながら談笑する彼女は、一体誰と何を話しているのだろう。  事故当日の記憶は途中までで途切れている。  大型トラックの運転手だった俺は、その日も明け方の高速道路をかっ飛ばしていた。俯いて目頭を抑えていた時間なんてほんの数秒だったと思う。しかし再び開いた瞳に飛び込んできたのはそびえ立つ防音壁で、それは眼前まで迫っていた。避け

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