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【洋画】市民ケーン(1941)

監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ、ジョゼフ・コットン、ドロシー・カミンゴアなど
上映時間:1時間59分

「市民ケーン」鑑賞しました。2度目の鑑賞。英国映画協会が選ぶ「オールタイム・ベストテン」では5回連続の1位、AFI選出の「アメリカ映画ベスト100」でも堂々の1位と、まさに映画界の金字塔と言われる作品。キューブリックやスピルバーグなど数々の著名映画監督も、影響を受けた作品として名前を挙げています。

ザナドゥと呼ばれる荒廃した大豪邸で、新聞王ことチャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)が息を引き取った。彼は死ぬ直前に「薔薇のつぼみ(Rose Bud)」と言い残す。

翌日彼の死は新聞で大々的に報道される。ある新聞社の編集者トンプスンは、彼の言った「薔薇のつぼみ」の意味を探るために、彼の旧友であり、新聞社「インクワイラー」のパートナーであったバースティン、リーランド、彼の2番目の妻スーザン、ザナドゥの執事を訪ね、ケーンの歴史を紐解いていく。

映画構成が芸術的すぎる。ここまで綺麗なパッケージって、観たことなかったかも。最初の見づらい屋敷の映像から、ケーンの死を映し出す。新聞記者がケーンが死に際に言った「薔薇のつぼみ」の意味を探るために彼の知人をあたっていき、証言に合わせてケーンの過去を幼少期から順を追ってフラッシュバックする。最後に「薔薇のつぼみ」の答え合わせがあり、最初のシーンに戻っていく。

特に最後のシーンに戻っていくところが芸術的すぎる。正直「薔薇のつぼみ」のアンサーは明瞭ではなく(後述)、その答えに思慮を巡らしている間に、オープニングの映像を今度は順序を逆にして一番最初に戻っていく。構成としては「過去⇒現在⇒過去」というフラッシュバック形式ですが、シーンを一つずつ逆に戻していくのが斬新かつ繊細で美しい。

ちなみに現在では一般的になっているこのフラッシュバック形式も、この作品で初めて開発されたようです。映像技術も当時では非常に斬新であったようで、映画界の発展に多大な貢献をしたという意味でも、業界内での評価が高いのだと思われます。

そして問題の「薔薇のつぼみ」ですが、僕の解釈は「愛情」です。ケーンが長らく欲していて、結局手に入れることができなかったものです。「薔薇のつぼみ」は幼少期に遊んでいたそりのブランド名?で、つまるところケーンが愛情を受けて育っていた時期を暗示しています。

この映画を見ると親からちゃんと愛情を受けて育つことがいかに大切かが分かります。僕も最近ようやく気づいたのですが、自分を無償で愛してくれる人って親だけなんですよね。当然のことに思われがちですが、実はすごく重要なことです。

人間には誰もが必ず「愛されたい」という欲求があります。しかし幸運なことに多くの人は自分の愛情ゲージを、親からの愛情で満たされています。だから愛情が足りていないと感じることもほぼありません。この親からの愛情を失ったらと一度考えたことがあるのですが、急にとてつもない不安に襲われました。自分がカラッポになってしまう感じというか、急に自信がなくなるというか。親からの無償・無制限の愛情が、実は自分の心の大きな後ろ盾になっていたのです。離婚などで親からの愛情を十分に受けることができなかった子が、精神的に不安定に育つ理由がなんとなく理解できました。

親以外の人との愛情関係は、交換条件のもとに成り立っています。それはズバリ相手を同じく愛することです。しかし愛情を受けずに育ったケーンにはそもそもの愛情が何かが分かっておらず、結婚相手に金品を与えるという間違った愛情を注いでしまいます。ケーンとの結婚生活を送るスーザンはマジで見るに堪えず、吐き気すら催しそうでした。かわいそうすぎて・・・

主演・監督・脚本を担当したオーソン・ウェルズは、当時なんと26才!!その年でこの脚本を書き上げるのも信じられないし、年老いたケーンを特殊メイクで演じているというのも驚き。いろいろと規格外です。

「市民ケーン」は愛情とは何かについて考えさせられる作品。フラッシュバック形式の先駆者で、その構成は今見ても芸術的で美しい。またいずれ見返したい。

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