【Podcast】「視線」と「名付け」【第170回芥川賞まとめ】
幸せな人しかたどり着けない場所では3回に渡って第170回芥川賞について話してきました。
#2 九段理江「東京都同情塔」の話
#3 安堂ホセ「迷彩色の男」と川野芽生「Blue」の話
#4 小砂川チト「猿の戴冠式」と三木三奈「アイスネルワイゼン」の話
全体を通して、私たちの話を簡単に、選評みたいにまとめると、「視線」と「名付け」というテーマが裏拍として流れているような選考でした。
そんなつながっていないようで同じ時代の同じ文学賞の候補に選ばれた作品をまとめて読んだ感想として、他者からの「視線」に自身の「名付け」を委ねてはいけない、ということが、この言葉が氾濫する大独り言時代に必要なことなのではないかということを思いました。
「Blue」で眞靑が自身の名前を自分で付けるように。他者からの視線はどうしても生活には着いてくるけれど、自分のための言葉まで奪われてたまるか、みたいな。
今回の候補作で書かれている存在は、小説という形式だからこそ、そこに立ち現れる存在であり、その、小説でしかない言葉の在り方を読むことが、とても面白かったです。面白かったというのもあり、なるほど、と納得するのもあり、自分も気を付けよう、と思うこともあり。
その世界はこの世界とも地続きでもあるはずなので。その立体感の説得力もあり、
あとは3人で話したこととして、自分たちの世代の、同世代にある小説だということが感じられて、それが嬉しかったり。
そんな感じでした。放送では結構時間を取って各小説の話をしているので、よかったら「同じ時代の小説」を読んで私たちの話してることも聞いてみてください。
guca owlも「限られたもんに選ばれた賞より大衆が本物」って言っているし。
◯今回紹介した本
・九段理江「東京都同情塔」
・安堂ホセ「迷彩色の男」
・川野芽生「Blue」
・小砂川チト「猿の戴冠式」
・三木三奈「アイスネルワイゼン」