M型Leicaを1年使ってみて
Leica M10-Pを導入して約1年が経った。
結論から言うとこのカメラを導入して良かったと思う。
オートフォーカスが使えない、動画機能が無い、手振れ補正が無い、ズームレンズが実質無い、135mm以降の望遠レンズが無いなど制限の多いカメラでは有る。
この制限はM型Leica特有のものが多く、他のカメラであればなかなか味わうことの出来ないものだと思う。
そもそも自分がLeica M10-Pを導入した理由として、不便さゆえの撮影プロセスの充実さを味わってみたかったこと、M型ユーザーがこぞってM型に夢中になるため、自らの手で経験することで批判出来る立場になりたかったことが挙げられる。
Leica M10-Pを一年使用することで生まれた学びや気づきが有ったため、良かった点、悪かった点を自分なりにまとめていきたい。
◼︎良かった点
-持ち出し頻度が増す仕様
①薄さは正義
カメラシステムとしてのコンパクトさはやはり正義であるとM10-Pを1年間使ってみてとても感じた。
M10-Pを導入してからは持ち運びのカバンの制約が減ったため頻繁にこのカメラを持ち運ぶようになった。
もちろん重量も軽いに越したことは無いが、自分の中で持ち運びの頻度を上げるのはカメラとレンズを組み合わせた際の薄さ。
あるMマウントレンズ(Noctilux等)を除けば重量約350g以下のレンズが多いため、首からカメラをぶら下げた時のフロントヘビー感も無く、カラダに密着してくれるため持ち運びも全く疲れない。
②何よりルックス
細かいスペックよりも持ち歩きたくなるルックスが1番大事だと自分は思っている。
このカメラの洗練されたルックスは好きである。
業務用途でメインに使用するカメラであればもちろんスペックは重要だが。
あとM型を首からぶら下げて東京駅、銀座駅付近でスナップしていると「Leicaの何の機種ですか?」と何回かLeicaユーザーの方に声を掛けられた。
他のメーカーの機種を持ち歩いている時はそのように声を掛けられた事はまだ無い。
③スナップに丁度良い画素数
高画素機でのスナップ撮影では、撮影後に大量の高画素データが生成され、ストレージの容量を圧迫するという懸念が自分の場合どうしても出てきてしまう。
そのため個人的に2000〜2400万画素程度の画素数がデータ容量をあまり気にせず写真を撮れるので精神衛生上良いなと使っていて感じた。
そういった理由も有り、M11シリーズで採用されている6000万画素は私の運用では画素数が大きいと感じたためM10シリーズを導入した。
-豊かな撮影体験
最近のミラーレスカメラは精度の高いオートフォーカス機能を有しているし高精細なEVFも搭載されており細かいピント位置まで調整して撮影を行うことが出来る。
また、ボディ内手ぶれ補正も付いており、カメラ任せで有る程度狙った写真を失敗せず撮影する事が出来る。
反面、M型Leicaはオートフォーカスが無くレンジファインダーでピント合わせを行うため、カメラの設定を多くを自らに委ねられていることで撮ってる感をより味わうことができ、撮影体験の向上に繋がっていると感じている。
-ウェイトパフォーマンスの高さ
私は、"カメラシステム(ボディ+レンズ)の重量あたりの画質の良さ"を勝手にウェイトパフォーマンスと呼んでおり、このウェイトパフォーマンスが他メーカーのカメラと比較しても高いなと感じた。
(私は重量400g以上のNoctilux 50mm/75mmやSummilux 75mm/90mm等は使用した事がないため、そういったレンズを除き、400g以下のレンズを使用する前提で話す。)
画質の良さという言葉も、人によっては収差が少ない事を指したり、シャープネスが高い事を指したりと定義が難しくは有るが、自分の場合は主にマイクロコントラストが高いことを指す。
もちろん、中判カメラや、フルサイズミラーレスに大口径単焦点レンズを付けたりすれば、描写は一級品になるがその分本体サイズと重量は増加していく。
M型Leicaはオートフォーカス性能という他のカメラでは基本となる機能を省略することでレンズの小型化を実現出来ており、上記のようなカメラに匹敵する描写を実現出来ているのだと思う。
なお、ここまで読んで頂いた方には、ウェイトパフォーマンスは良いかもしれないが、コストパフォーマンスは悪いだろうと思った人がいるかもしれない。
確かに購入時の価格自体は他のメーカーと比較すると高いかもしれないが、下取りの際は他メーカーよりも価格が高く付き、リセールバリューが圧倒的に良い事が分かった。
試しに私の所持しているM10-Pを査定見積に出したところ、購入した際とほぼ同等の値段が提示され、レンズに関しては同等程度か、むしろ購入時よりも高く付くものも有った。
もちろん下取りのタイミングによって買取額も増減するが、他メーカーのカメラだと下取りで購入時の半額以下になるケースが大半だ。
M型Leicaユーザーが"M型Leicaは実質タダ"という理由はこういったところに有り、上記の背景も踏まえるとコスパは非常に高いカメラだと感じる。
-写真の表現技法の意識
私は写真家の森山大道さんのお写真が好きで、展示会にも足を運んだことがあるのだが、M型Leicaを使用し始めた事で森山さんの作風でもある「アレ・ブレ・ボケ」といった写真の構成パラメータについて意識が向くようになったと感じる。
私が森山大道さんの写真表現が好きな理由としてはアレブレボケの表現により、荒々しさであったり、写真に不確実さが付与され、ノンフィクションを撮影しているのにも関わらず、フィクションというか、現実と非現実の間を見せてもらっている気分になるからだ。
今までは便利なミラーレスカメラを使用していたため、高感度ノイズやブレ、ピンボケ等はカメラの機能によって良い意味でも悪い意味でもオブラートに包まれてしまい、写真の一要素として取り込むことが出来なかった。
目の前の光景を綺麗に残す事だけにフォーカスしてしまいがちだが、その時の自分の見え方や感じ方までそういった技法を使用し写真に付与出来ると写真が一皮剥けて来るのかなと最近感じているところだ。
(私は今は全くそれが出来ていない)
①アレ(荒れ)
例えば、別で所持しているCanon EOS R5といったカメラだとISO6400と高感度に設定してもそこまで画質の劣化やノイズ感を感じなかったのだが、M10-Pの場合はISO3200程度でかなり粒状が荒くなる。
とはいってもネガフィルムで撮ったような嫌らしくない粒子感のため、それを絵作りとして今後はもっと積極的に夜スナップ等では使っていきたいなと思う。
②ブレ
近年発売されているミラーレスカメラにはカメラ内手振れ補正やレンズ側の手振れ補正が採用されている機種が多く、ある程度シャッタースピードを遅くしても角度ブレやシフトブレを低減出来ている。
私の所持しているEOS R5は24mmの焦点距離で撮影した際は手持ち撮影でシャッタースピード1秒で撮影しても角度ブレやシフトブレが発生しないくらいボディ・レンズの手振れ補正が強力だ。(もちろん被写体ブレは発生する)
反対にLeica M10-Pはボディ・レンズの両方に手振れ補正はついておらず、またボディ側にグリップも無いため非常にブレやすい構造になっているように感じる。実際にシャッタースピード1/60や1/120程度でもブレた写真は生成されている。
そういったブレが生じた場合に写真によっては不確定さというかゆらぎが付与されている気がする。
そういった効果を狙って最近はあえてシャッタースピード1/60や1/30などで撮影しブレを付与させたりしている。
③ボケ
特にオートフォーカス機能の無いレンジファインダーのM型Leicaではピンボケは宿命とこの1年間で感じた。
しかし、自らどの部分にピントを合わせるかという意思を写真に付与しやすくなると感じた。
◼︎良くなかった点
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