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音楽理論あんまり知らないけど、ブラックアダーコードを使って曲を作ってみた話。「てあそびうた」楽曲解説(前編)
こんにちは!
北海道・札幌で音楽活動をしているヨシカです。
宅録バンド 「shenome(シノメ)」 でボーカルとギターを担当しつつ、ヨシカ名義でボーカロイド楽曲も時々アップ しています。
今回は、ボカロの新曲「てあそびうた feat.カゼヒキβをニコニコ動画にアップしました!
視聴はこちら
〇ニコニコ動画
〇YouTube
ちなみに、2/21~24の期間、「ボカコレ(The VOCALOID Collection)」が開催中です!
〇公式サイト
ボカコレとは?
『The VOCALOID Collection(ボカコレ)』はボカロ文化をきっかけに生まれたインターネット等で活動するクリエイターやユーザー、企業などボカロに関わる全ての方が参加できるボカロ文化の祭典です。
https://vocaloid-collection.jp/about/
X(Twitter)では、「新曲投稿しました!」「ボカコレでアップされた曲たくさん聴きます!」という投稿が増え、普段以上に盛り上がります。
そのため、この期間に合わせて楽曲を投稿するボカロPも多い印象です。
また、さまざまなランキングが用意されており、上位入賞者には特典もあるため、「自分の楽曲の力量を試す場」としても、ボカコレは大きな意味を持っています。
自分の曲の話に戻りますが、実はこの曲、去年の時点で動画も含めてほぼ完成していました。
ですが、同時時期に取り掛かってた、宅録バンド 「shenome」 のアルバム制作に集中していたため、公開のタイミングを逃しておりました。
「いつ出そうかな?」と考えていたところ、ちょうど ボカコレが迫っていた ので、このタイミングで発表することにしました。
ということで、久々に発表するボカロ曲ですが、とてもいい曲ができたので、「聴いてください!」だけではもったいなと考えました。
なので、しっかり楽曲解説 をしていこうと思います。
■この曲を作ろうと思ったきっかけ
〇ピザラジのコード進行エピソード
この曲を作るにあたって、大きく2つのきっかけがありました。
まず1つ目は、ある日 いつも楽しみにしていたYouTube番組「オーイシ加藤のピザラジオ」 を見ていたときのこと。
その回では、ちょうどコード進行について語る回でした。
この放送を見ながら、自分の楽曲制作について振り返ってみたところ、「コード進行が手癖に頼りがちだな…」 と感じました。
「これはよくない…!」と反省し、意識的にコード進行を突き詰めた曲を作ろう と思ったのが、この曲の出発点のひとつです。
〇VX-βとカゼヒキβ
もうひとつのきっかけは、YAMAHAが2023年8月から約半年間実施していた「VOCALOID β-STUDIO」 というプロジェクトです。
このプロジェクトの一環として、VX-β というプラグイン(ざっくり言うと、新しいボカロソフトのようなもの)が無料配布されていました。
なお、プロジェクト終了後は使用できなくなる仕様で、現在はすでに配布が終了しています。
その後、VOCALOID β-STUDIOで使えたいくつかのボイスバンクが「VOCALOID 6」専用のボイスバンクとして販売 されました。
そして現在は、VOCALOID 6を持っている人であれば、VX-βを無料で使える ようになっています。
・VX-β 詳細
https://www.vocaloid.com/vocaloid6/vxbeta/
カゼヒキは、是さんの「かちまみれ」で存在を知りました。
そんなカゼヒキが、VX-βで使用できる ということを知り、驚きました。
早速試してみたところ、UTAUよりもかわいらしい印象の声 でした。
また、VX-βの魅力のひとつは、操作画面にある 「Power」ノブを動かすことで、声色を大きく変えられること です。
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例えば、ささやくような声から、徐々に力強い声に変化させるなどの調整を直感的に行うことができます。
そして、Powerを下げたときのカゼヒキの声が、か細く澄んでいて、とても魅力的 でした。
「この声を使いたい…!」と思ったのが、もうひとつの大きな理由です。
■コード進行
この曲の肝、というか 個人的に一番推しているのがAメロのコード進行です。
本来の表記とは少し異なりますが、参考程度にご覧ください。
|Gm7/9 F#aug/E Eb6/9 | DmM7 Csus2/7 | Gaug/F Bm7/-5 | Bbsus2/7 Daug|
〇ブラックアダーコードとは?
まず 目につくのが「F#aug/E」 ですね。
これは ブラックアダーコード で、
ピザラジ でも 「イキスギコード」として触れられていました。
ブラックアダーコードとは、Augコードのルートの全音上をベースに据えた分数コードのことです。
実際に鳴らしてみると、 独特な不安定さや違和感があります。
「え、これどうやって使うの…?」ってなる、 クセ強コードです。
ちなみに自分の曲でブラックアダーコードを使った時がありました。
ですが、使い方もわからずかなり無理やりねじ込んだような印象を受けます。
その時の記事はこちら。
今回はその時のリベンジですね。
〇F#aug/E → Eb6/9 の流れ
この流れでは F#aug/Eを「裏コードの代理」として使用 しています。
ブラックアダーに限らず、オーギュメントを裏コードの代理にするのが好きなんですよね。
裏コードとは、例えば、キーがCのとき ドミナント(G) がありますよね?
それを 画像のような五度圏で見たときに反対側のコードをドミナントとして使うという考え方です。
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ざっくり言うと、着地したいコードの前に半音上のセブンスコードを入れるってイメージです。
そしてその後の Eb6/9 ですが、M7/9 だとおしゃれすぎるので、より浮遊感のある6/9を選択 しました。
〇DmM7 → Csus2/7 → Gaug/F の部分
次はDmM7 Csus2/7 Gaug/Fの箇所ですね。
ここで「DmM7」が登場します。
これもなかなか クセ強コード ですよね。
まず、Gmキーのダイアトニックコード を確認すると、
Gm Am-5 Bb Cm Dm Eb F
なのに、なぜ Csus2/7 や DmM7、Gaug/Fなのか?
正直、理論的な部分はあまり気にしていません、、。
実際に打ち込んだ画像を見ると、DmM7 Csus2/7 の箇所は 「半音で動く部分」を中心にコードを組み立てたように思います。
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一応、無理やり 理論的に考えてみると…
DmM7 Csus2/7 Gaug/FをダイアトニックコードにするとはDm → Cm → Gm/F で、ディグリーネームにすると 「Vm → IVm → Ⅰm / ♭VII」 ですかね?
Dm は ドミナント で、Cm は サブドミナント。
そこから トニック(Gm)にゆる〜く着地する感じです。
ただ、ここで Dmのドミナント感を強めるために「DmM7」 に変更。
Cm も より浮遊感を出すために「Csus2/7」に変更 しました。
(sus系はコード感が希薄なので、ふわっとした響きになります)
そして、Gm に戻る部分はトニックセブンス的な役割 にしたい。
でも 普通のセブンスだと雰囲気が違う…
そこで 浮遊感を意識しつつ、若干の不穏感を足すために「Gaug」 を採用。
さらに、ルートをサブドミナントの代理であるFに変更。
こうやって振り返ってみると、「パワープレイで作ったな…」 というのが正直な感想です。
もし、コード理論に詳しい人がいたら、この進行について、コメントで解説してくれたらうれしいです…。
■コード進行を自分なりに振り返って
理論的な理解はまだまだ勉強が必要ですが、自己完結的に分析してみると「浮遊感を意識していたんだな」と思いました。
このコード進行は かわいげがありつつも儚さや謎めいた雰囲気、不気味さ も感じさせる「カゼヒキβ」の声にぴったりハマっていると思っています。
次回はメロディーやアレンジについて、解説していこうと思います。
もし、このコード解説を読んで気になった方は、ぜひ「てあそびうた」を聴いてみてください!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm44646424
また、noteでは自分が作った曲や制作したMVについて、詳しく書いているので、興味があればぜひフォローしてみてください
ではまた!