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ギリ、ハッピ〜✌️|「こんな世界でギリギリ生きています」(読書日記)
我々はこの世を生きてく上で、お手軽に自分を助けてくれる「めがねのようなもの」をみつけていかないといけないのです。
評論家の萩上チキさんの文章とイラストレーターのヨシタケシンスケさんの絵。1つのテーマを2人の視点から描いたエッセイを読んだ。妹が「お姉ちゃんが好きそうな表紙だったから」とプレゼントしてくれた本。さすがわかってるねぇ!表紙だけでなくて内容もとても好みでしたよ。ありがとう。
萩上チキさんを存じていなかったというのもあり、『こんな世界でギリギリ生きてます』というタイトルから「こんなにツラい現実〜しんど〜」「私の不満聞いて〜分かって〜」的な内容なのかと勝手に想像していた。
けれど予想は嬉しい方向に大きく外れた。そういう話じゃなかった。これは「こんな世界でギリギリ生きていく方法を考えてみたんだよね」って話。
もう少し具体的にいうと、身の回りの他愛ない日常(例えば、歯の喰い縛りグセや趣味のゲームのこと)を別の視点から見てみるとか、過去の失敗や後悔を分析してみて問題の根幹を探すとか。自分サイズのテーマを入り口にして皆に良い影響が与えられる道を探す、すこし社会的な話。それが結果として、自分個人の気分をラクにしてくれる話。
後半には萩上チキさんがウクライナに行って、彼自身の目で見た戦争の話も出てくる。悲しい戦争もやってるこんな世界だけど、全部バカバカしくなって人生を投げ出すわけにもいかない。ちょっとでもポジティブな道、マシな方、希望のある着地を諦めないぞって気持ちが伝わってくる良い本だった。
萩上チキさんの易しくかみ砕いた分かりやすい文章は(絶望することないじゃん、諦めることないじゃん)と落ち着かせてくれる。ヨシタケシンスケさんのイラストは、ショートショートみたいな驚きと発見があって、かつ可愛い。置いていかれがちだけど、本当は何より大切な「愛」を取り戻してくれる。なんと見事なコンビネーションか。
ちょうど、こういう本が読みたい気分だった。というのも私は最近「多様性疲れ」を起こしていた。あっちもこっちも多様性を武器に殴り合ってる。YouTubeで、Tictokで、SNS各所で、一方的に「多様性〜〜〜!」って叫ばれまくってもうヘトヘトなのだ。
もちろん人の数だけ違いはあると思うし、皆が暮らしやすい世界になるに越したことないし、そのために私に出来ることがあるならやりたいし、考えて欲しい問題があるなら一緒に考えたい。でも、こちらがどう受け取って良いのか分からない「多様性〜〜〜!」が多くて、そのたびに考えを巡らせて疲れた。見分けが付きにくいので、ただ「多様性〜〜〜!」って言いたいだけの人は「個性のアピールです〜〜〜!」に言い換えてもらっても良いでしょうか。そしたら、素直にいいねを押せるのに。
ひねくれ魔人のようなことを書いてしまった。つまり、私が言いたいのは「自分が何が欲しいのか」「自分は何を求めているのか」言ってるあなた自身で分かってるかってこと。途方のない殴り合いになるか模索の道になるかの分かれ道はそこなんじゃないかな、と最近思う。
嫌な事・許したくない事・汚い事・苦しい事…、そんなものが溢れている世界だけど、ここは私の大切な人たちが住んでいる世界でもある。
その人たちの心が憎しみや悲しみで満ちないように、せめて私は笑っていようと思っている。
そして、少しのお裾分けができるくらいの他愛なくて下らないハッピーを集めていけたらいいなとも思っている。
今の私なりの「こんな世界でギリギリ生きていく方法」だ。