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【アップサイクル話vol.2】「缶詰文化の起点は ”もったいない”。缶詰博士が語る缶詰とSDGs」〜缶詰博士 / 黒川 勇人氏〜

こんにちは!シェアシマ広報担当です。
このnoteでは、私たちのパーパスである ”大切な食資源を活かす”をテーマに、あらゆる人・コミュニティ・企業にインタビューをしています。今回は、缶詰の魅力を発信する缶詰博士・黒川 勇人さんにインタビューを行いました。黒川さんには、当社アップサイクル・フード「ふくふくレバー」のプロモーション活動にも携わって頂きました。そんな黒川さんに、缶詰博士としての活動をうかがいました。

【缶詰博士 / 黒川 勇人氏】1966年、福島県生まれ。大学卒業後、証券会社や出版社などを経てフリーライターとして独立。2004年から、缶詰の魅力を発信する「缶詰blog」を開始。それ以来、公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認の『缶詰博士』として、執筆活動やさまざまなメディアに出演。著書に『缶詰博士が選ぶ「レジェンド缶詰」究極の逸品36』、『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』(ともに講談社)などがある。

缶詰博士が缶詰博士になったワケ

ーそもそも、缶詰博士になられたきっかけは何でしたか?

幼少期にさかのぼるのですが、共働き家庭だったため母親は朝早くに家を出て、夜遅く家に帰る生活を送っていました。妹が1人おりまして、両親のかわりに私が食事の用意をすることがよくありました。幼稚園の年長さんくらいの時から、台所に立って調理していたんじゃないかなぁ。そのとき、家にあった缶詰をアレンジして料理を作ることが多かったんですね。そしたらそれが、すごく美味しくて。小学五年生の時、祖母との同居をきっかけに調理する機会は少なくなりましたが、それ以来、缶詰を食べることが大好きになっていました。

ーなるほど。いつから「缶詰博士」としてのキャリアをスタートさせたのでしょう?

”缶詰が好き”という理由で、2004年から趣味でブログを始めたんです。内容は缶詰オンリー。そしたら翌年、そのブログがなんと『Yahoo!JAPAN」に紹介されたのです。以来、じわじわとバラエティ番組などに取り上げられるようになりました。2008年に、当時勤めていた出版会社を辞めて、缶詰一本で生きていくことに決めました。ちなみに「缶詰博士」という名称は、きちんと公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会から許可を得ているんですよ。ある日、協会に電話をかけたんです。そしたら、一番お偉いさんにつないでくれて「あぁ、君がウワサの黒川君ね、知ってるよ」って言われて。心よく活動の様子を受け入れてくれました。そこから大々的に、缶詰博士と銘打ってやらせてもらってます。

ー現在の活動内容をうかがえますか?

主には、缶詰に関する記事執筆をしています。合間に、テレビ・ラジオ・イベントでのトークショーなどに出演しています。あとは、メーカーさんと組んで”缶詰博士監修”で新商品の開発に携わることもあります。
ちなみに、いまホットなイベントが「LOCAL FISH CAN グランプリ」。これは、高校生たちが地域の課題魚を利用したオリジナル缶詰を開発し、競い合う大会です。今年で3年目の大会ですが、発足時から審査員を務めさせていただいてます。

(缶詰博士が監修した缶詰の一例)

LOCAL FISH CANグランプリ:高校生が導く海洋の未来

ー「LOCAL FISH CAN グランプリ」について、もっと教えていただけますか?

日本財団「海と日本PROJECT」の一環で、大会を通して海の課題や展望を知り、海にもっと関心を持ち、参加者が課題解決のアクションを起こすきっかけを作りたい。そんな想いが込められた大会です。いま地球温暖化の影響で海水温度が上昇し、本来南の方にしかいなかったはずの魚が北上してしまったり、今までとれていたはずの魚がとれなくなったりしています。一方で、近年SDGsが浸透してきたことを受け、いままで使い道がなく捨てられてしまっていた魚に、もう一度目を向けてみようという気運も高まっています。そんな背景から「LOCAL FISH CAN グランプリ」が誕生しました。

(「LOCAL FISH CAN グランプリ」での活動の様子)

ー「海」の食品ロス削減の活動につながりますね!

じつはこの構想自体、私も10年前からやってみたいと思っていたことでした。けれど、いろいろ掛け合ってみても実現に至らなくて。だから3年前にお声かけいただいた時、まるで10年越しの夢が叶った感覚でした。大会の出場にあたり、高校生らはまず自分たちの地域でどんな問題が起こっているのかを実態調査をします。すると、いろんな気づきや広がりがあって面白いんです。

例えば愛媛県には、「みかん鯛」といってみかんの加工時に発生する搾りかすを入れた餌で育てた魚があります。愛媛のとある高校では、その魚の余った部分を活かして、愛媛県全体をPRするアイデアを思いついたところがありました。ほかにも、今回海のない栃木県の高校も決勝に残っているのが印象的です。そこは、陸上養殖のチョウザメ(キャビアを摂るためだけの魚)の、捨てられてしまう身の部分を活用した缶詰を開発していました。

(高校生らが考案した缶詰。それぞれ特徴的でユーモアある商品がならぶ)

ー高校生ならではの、柔軟なアイデアが缶詰に反映されていて面白いですね!

高校って、基本的に3年しか在籍できないじゃないですか。だから、惜しくも優勝を逃した高校が、翌年先輩からの意志を引き継いで同じ魚をテーマにリベンジしてたりと、毎回さまざまなドラマがあって感動的です。やはり、人が集まることでいろんな化学反応が起きるし、そこから秀逸なアイデアが生まれる。それが少しでも、海の課題解決と参加者の経験につながれば良いですよね。

(今年10月に行われた決勝グランプリの様子)

日本の缶詰文化の原点:”もったいない”をなくす価値観

ー捨てられてしまう食材の利活用で言うと、当社アップサイクル・フード「ふくふくレバー」の販促活動にもご支援いただきましたね。

「ふくふくレバー」もまさに、陸の食ロス課題解決の糸口ですよね。ちなみに缶詰博士の活動で、生産者やメーカーとのつながりが沢山できました。そうした中で、例えば「発注ミスで大量にあまってしまった!」といったご相談を受けたりするんです。まず相談先として、シェアシマが頭に浮かぶようになりましたね。

(当社商品「ふくふくレバー」。23年10月グッドデザイン賞を受賞した)

ちなみに、缶詰はもともと海外で発明されたものですが、日本で発達した要因のひとつはまあまあSDGs的発想なんですよ。というのも例えば、果物って旬の時期でないと採れないじゃないですか。けれど、旬の時期にまとまってドサッと採れるから、食べきれないんです。その食べきれない分を、3年くらい缶詰にして長持ちさせようというのが、日本の缶詰業界の発端です。

缶詰の試作が成功した明治時代以降、政府は缶詰を輸出産業に育て、外貨を獲得しようと缶詰産業を後押ししました。それとは別に、各地にある農協の集積場などにも缶詰を作る機械が置かれるようになりました。付近に住む農家も、自分たちで缶詰を作っていたらしいです。いまでも、自家消費用に缶詰を作っているところは全国各地にあるんですよ。ですから缶詰文化も「捨てるのはもったいない」という、日本人が持つ価値観からきているんです。

SDGs視点での缶詰博士が担う使命

ー最後に、今後の意気込みについてお話しいただけますか?

昨今、地球環境の変化で農業や水産業の在り方自体を問わなければならない時代です。缶詰博士という活動を通じて、「SDGs」という観点からも活動の展望が開けていることは光栄です。必要なことを必要なタイミングで、始められたなぁと感じています。日々、原料の提供者だったり一次産業の方だったりと、いろんな方にお会いします。そうした中で、新たに知識を得られたときや、いろんな人たちに感謝された時にやりがいを感じられています。今後も、缶詰博士として活動の幅をもっと広げていきたいですね。ちなみに、僕の半生をしたためたエッセイ本も発行したので、よろしければぜひ手にとってみてください。

ー黒川さん、本日はありがとうございました!!

「缶詰だよ人生は(本の泉社)」缶詰博士 / 黒川 勇人

黒川さんによる初のエッセイ本缶詰だよ人生は(本の泉社)」が、今年8月に発売されました。缶詰博士の少年時代の思い出や交友録、海外の缶詰事情など、缶詰愛溢れる内容で綴られています。


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