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久しぶりに『君の名は。』を観て

『君の名は。』は僕の大好きな映画の1つだ。
感想を書く前に僕の新海誠監督と『君の名は。』に関する想い出でも書いてみようと思う。

高専1年生の時、当時僕は寮で先輩との2人部屋に住んでいた。ある日先輩がパソコンで綺麗な作画のアニメを観ていた。

「それ何観てるんすか?」
「『言の葉の庭』ってやつ。まだ始まったばっかりだし、最初から一緒に観るか?」

先輩は映画を巻き戻してくれて、最初から一緒に観た。全ての画面が芸術作品みたいに美しくて、言葉の一つ一つが詩みたいで、ひたむきに生きる孝雄と雪野先生の姿に心を震わせた。45分の短い映画だったけど、この映画と出逢い、僕は新海作品にのめり込むことになる。

秒速5センチメートル、雲の向こう約束の場所、ほしのこえ…
過去作は全部観て、画集や新海誠監督のインタビュー記事の載った雑誌、小説版やコミカライズ版などを集めに集めて、頭からつま先まで新海誠に染まっていった。
でも今思うと、あの極端なのめり込みの3割くらいは、通ぶれる何かが欲しいという、思春期真っ只中でなおかつサブカルな人が多い高専の環境で生まれた欲求によるものだったのかもしれない。
そして高専2年生になって君の名は。の上映が始まった。新海誠ファンの自分にとっては待望の新作だった。

当時僕には好きな人がいた。中学校に上がる時に大阪から京都に引っ越した僕は中1の時にその子に一目惚れした。でもすぐに周りにその子が好きなことがバレてしまって、話しかけようとする度に周りに冷やかされて、結局中学時代はあんまり話すこともできなくて、3年間で3回告白して毎回振られた。でも中学を卒業してからも彼女は誕生日をお祝いする連絡だけは必ずくれた。
そして高2の夏に誕生日のメッセージをもらったことをきっかけにLINEでよく話すようになった。
それで自分は彼女のことを全然知らないし、もう冷やかす人もいないから彼女と好きに話をしてもいいんだと気がついた。
そもそもなぜ5年間も片思いしておきながらそんな単純なことに気が付かなかったのか、今思うと不思議で仕方ない。たぶん彼女を神かなんかだと思ってた節がある。笑
それでしばらくLINEを続けた後、彼女に「今度公開の君の名は。一緒に観に行かない?」と勇気を振り絞ってデートに誘った。
「ごめん!もう友だちと約束しちゃった」と返信が来たけど、こちとらもう既に3回振られてる。その程度ではへこたれない。
一方でその夏、僕はネパールで世界中から集まったメンバーと共に5週間のヒマラヤの環境保全ボランティアに参加していた。そのため公開日からしばらくは日本にいなかった。
ネパールで過ごしているある日、Twitterで以下のような彼女のツイートが流れてきた。
「君の名は。めっちゃ面白かった!もう一回観に行きたい!」
それを見た瞬間に僕は彼女にメッセージを送っていた。
「2回目僕と観に行ってくれませんか?」
「いいよー!」
ヒマラヤの中腹の村でガッツポーズした。

そして無事帰国してその日が来た。その日のことはもうあんまり覚えてないけれど、イオンシネマの前で待ち合わせしたことはよく覚えている。最寄り駅が同じなのに、お互い気恥ずかしくて映画館の前で待ち合わせにした。
映画館の横には島村楽器が入っていた。
僕が待ち合わせ場所に着いた時、ちょうど、吹奏楽部だった彼女が、楽譜の陳列された本棚の高いところに背伸びして手を伸ばして気になったもの取ろうとしていた。その後ろ姿があまりにも可愛くて、あれから10年近く経った今もそのシーンだけは鮮明に覚えている。
その後冬の2回目のデートの帰り道に告白しようとするも勇気が出ず彼女の家の前まで来てしまって、彼女が家のドアを開けようとするその瞬間に想いを告げた。部活や受験勉強と恋愛の両立に悩む彼女は「少し考えさせて」と言って、彼女の家の前の公園のベンチに並んで座った。そこで1時間近く悩む彼女を半ば説得してお付き合いにこぎつけた。
結局彼女には半年後に振られて、その後僕は1年近く立ち直れない日々を送ることになるというお話はまたいつか。

と言うわけで甘酸っぱくて苦い想い出が君の名は。には詰まっていて、大好きな作品なのにずっと観るのを避けていた。
彼女とはもう連絡を取っておらず、昔未練たらしくインスタをフォローしたもののフォロリクを拒否されたっきりなので、どこで何をしているのか全く知らない。僕もあれから色々恋愛して彼女のことは何年も前にちゃんと想い出にできている。

だいぶん本題から逸れてしまってもはや昔の恋人の話が本題になっている気がするけど、そこはご愛嬌ということで。
それでふと思い立って君の名は。を久しぶりに観てみた。やっぱり最高だった。過去作では主人公と主人公の好きな人が結ばれることは基本的になく(小説番言の葉の庭を除く)、その切なさこそがむしろ彼最大の特徴とも言えたが、君の名は。ではちゃんと最後2人が再会し結ばれた。本当によかった。瀧と三葉の結婚式があるなら絶対行く、てか行かせてください、ご祝儀もいくらでも包ませていただきます。それくらい良かった。
あとさやちんがクソ可愛い。可愛すぎる。可愛すぎてごはん3杯はいける。
下書きを書き始めてから筆が重く、ここに辿り着くまで2週間経過しているため肝心の感想が薄すぎる。やっぱり心も言葉もなまものだ。人にはその時にしか描けないものがある。
だから、僕は、言の葉の庭、雲の向こう約束の場所や秒速5センチメートルが君の名は。と同じくらい好きだけど、君の名は。はたぶん世間全体からの評価としては新海誠の最高傑作になると思う。
君の名は。以降の彼の作品は正直あまり刺さるものがなくなってしまった。ハッピーエンドと君の名は。の作風に囚われてしまったように見える。いつか新海誠があの切なさをまた描いてくれる日が来たらいいなぁ。

って書きながら、バレーボールのために体育館に向かってたんだけど、体育館に着いてからシューズを持ってくるの忘れたことに気がついた。
というわけで次回作のタイトルは『しゃぴんのど忘れ』でお願いしたい。

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