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揺さぶられる人間の味~「窓辺にて」

今泉力哉監督、稲垣吾郎主演による映画「窓辺にて」を観てからというものの、何度となく考えている。人間味とは何かということを、だ。愛嬌とかクールさとか、そういうキャッチーなものじゃなく誰しもが自分で知らないうちに抱えているような人間の味。それは自分で把握している部分もあるだろうが、他の人からしか知りえないものも沢山ありそうで。そんなことを考えれば考えるほど、他者と生きることの面白さと不思議さが押し寄せてくる。

そんな人間の味が奇跡的に美しく混ざり合ったものを愛というのか信頼というのか。頂けないほどの不味さになればそれは終わったことになるのか。または自分たちではもう食べ飽きた味でも人からすれば魅力的に思えたり、傍から見れば美味しそうに見えて実はもう腐りかけだったり。そんな、人間関係の様々な味が次々と押し寄せてくる映画なのだ。劇中にパフェのように時に眩しく見え、時にもたれそうになるほどに様々な"人間味"を堪能できる。



稲垣吾郎演じる主人公が劇中で抱える感情は、"共感"という尺度で言えばなかなかシェアされづらいはず。それもそのはず、やはり感情というのはその人にとっての常識の中で動き回るものであり、それが予想のつかない方向にいくことは時に強い不快感に繋がる。約束された感動物語や爽快な伏線回収を求めがちな現代人となれば、未知なる感情や自分にとっての不正解は強く拒否してしまうはず。主人公ですらその疑問を追いかけ続けるのが本作だ。

年を重ねるほどに自分の感情を手懐けるのもうまくなるし、傷つかないように自分の心を騙せるようになる。主人公は序盤は混乱しながらも冷静で静かにその感情を抱える。物語の中で並走する玉城ティナ演じる女子高生作家が自分の感情にぐらぐらと慌て騒ぐ姿との対比としても映る。2時間26分の映画を通し、主人公はだんだんと揺れる自分を認め受容する姿が描かれているように思う。それこそ、人間味がどんどん加わっていくように見えてくる。



ふと自分に目を向けると、戸惑ったり悲しんだり怒ったり、つまり揺さぶられることを少し避けがちになっていることに気づく。やっぱり、疲れているのかな、とも思った。映画の中でも、様々な形で疲れを吐露している人が出てくる。時に無心になることも大事(パチンコとかね)かも、だけども、やっぱり自分が自分らしく、人間らしくあれるくらいには、揺さぶられていくのも悪くないんじゃないかな、と。ぼんやりと"揺れ"を認めていく時間だった。



夫婦でやっているポッドキャスト『海月の人々(((通信)))』の第11回でも映画「窓辺にて」についてたっぷりと語り合いました。完璧な人間なんていないということ、コミュニケーションの重要性、そして“疲れ”という観点。また稲垣吾郎をはじめとする俳優陣や小ネタの面白みなど、切り口多めに話しまくりました。SpotifyかYouTubeでお聞きくださいませ。


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