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2021年ベストアルバム トップ50
2021年のよかったアルバムを50枚、ランキング化。例年、コメントはちょっとずつ短くなってますが続けれる限りは!来年もまた素晴らしいアルバムに出会えることを祈って。
50位 My Lucky Day『All Shimmer In A Day』
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熊本発のドリームポップ/シューゲイザーバンドによる初全国流通盤。夢心地なメロウネスと疾走感溢れるビートはこのジャンル特有の湿り気というよりも、爽快感すら感じさせる。ドライブミュージックにもなり得る残響だ。
49位 クジラ夜の街『海と歌詞入り瓶』
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SMA所属の新星による1stアルバム。まだ高校卒業して直後という経験値からは想像もつかない多彩なアレンジと普遍を撃ち抜くメロディは逸品。一聴すると何をルーツとしているのか分からない記名性の強いギターポップだ。
48位 Cwondo『Hernia』
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No Busesの近藤大彗(Vo/Gt)のソロプロジェクトによる初アルバム。ダイナミズムを極力抑え、平熱なテンションを維持しながら滔々と進んでいくエレクトロポップ。"脱出"を意味する題もぴったりな、異空間小旅行のような。
47位 なきごと『黄昏STARSHIP』
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[NOiD]所属の2人組バンドによる2ndミニアルバム。憂いを帯びたソングライティングとノイジーなギターサウンドが掛け合わさった純度の高いギターロック。SAKANAMONへの羨望が滲む「憧れとレモンサワー」が白眉な出来。
46位 大和那南『Before Sunrise』
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7インチでリリースを重ねてきた20歳のSSWによるデビューアルバム。幻想的な音像にアンニュイな歌声、歌謡曲に寄り道したメロディとエッジーなビートが良バランス。チルアウトに依存しない、ダークな情感に沁み入る。
45位 WurtS『ワンス・アポン・ア・リバイバル』
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TikTokから現れたソロアーティストによる1st。ゼロ年代のオルタナティブロックを、テン年代的な編集力でネット発音楽として再構築、そしてトゥエン年代流の発信で見せていく。小手先だけ?いやぁコレが正直、絶品でした。
44位 YOASOBI『THE BOOK』
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鳴り物入りで年始にリリースされた1stアルバム。デスクトップミュージックが世界を揺さぶる、米津玄師以降に定着したこのメイクドリームを瞬発力と天性のキャッチーさで成し遂げた。何度も聴ける、軽やかさと甘さがある。
43位 D.A.N『NO MOON』
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3rdアルバム。ミニマルメロウな原点から遠く離れ、電子音からチェロ、スチールパンに至るまでを積み上げるエレクトロ交響楽に。SF的な世界設計を持つリリックに浸りながら、宇宙次元に放り出されつつ夢中で踊り狂える。
42位 パスピエ『ニュイ』
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1年ぶりの7thアルバム。エレクトロポップの要素を全面に打ち出し、レトロなシンセの鮮やかさやニューウェイブな歌謡感をより強化。「夜」を意味するタイトル通り、不安と期待の中で朝を待つサウンドトラック集となった。
41位 lyrical school『Wonderland』
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5人組アイドル、いやラップクルーによる6thアルバム。それぞれの声色を活かしたマイクリレーは充実を極め、ドープなトラックやテクニカルなリリックも歯切れの良い乗りこなす。終盤は歌モノの強さも解放し、無双状態。
40位 Shiki『Hue』
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熊本発ドラムレスバンドの2ndアルバム。透明度の高い歌声と柔らかなタッチのエレクトロニカが交差するダンスミュージック。楽曲によっては分厚いギターサウンドや清廉なピアノの音色とも融合を果たし、楽曲の世界観を作り込んでいる。しめやかな祈りと逃避のイメージが連なった歌詞も上質。
39位 ROTH BART BARON『無限のHAKU』
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三船雅也によるソロ楽団の6thアルバム。極彩色を冠した前作から真反対にある純白を想起させる本作。神秘性を纏った音像はさらに眩い光を放ち、穏やかさの中へと引き入れる。インストであればそのまま映画の劇伴に使用できそうな程に繊細に折り重なったアンサンブルに、すっかり酔いしれるはず。
38位 YUKI『Terminal』
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ソロデビュー19年目の10thアルバム。終着点を意味する題にはドキっとするがいつか迎える終わりへの目線とともに、誰かと巡り合うための場所としてのポジティブさも同時にある。コロナ禍を経て生まれた"忘れたくない"といいう感情が呼び寄せた慈しみに満ちた言葉たちはキャリア屈指の柔和さだ。
37位 KID FRESINO『20,Stop,it.』
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注目のラッパーによる4thアルバム。手練れのミュージシャンによるセッションを土台に制作したり、カネコアヤノや長谷川白紙といった異ジャンルからの客演を迎えるなど、自由な尺度で作り上げたアルバム。ビートもウワモノも奔放に弾け飛ぶ中で、歯切れ良く撃たれる言葉の連打にトリップは必須。
36位 RADWIMPS『FOREVER DAZE』
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3年ぶりの10thアルバム。ここ最近は映画の劇伴制作とそこから得たものを還元してオリジナルアルバムに注入するのが定着しており、豊かなオーケストレーションなどにその存在感が宿る。また、エレクトロポップへの本格的な傾倒によって生まれたスケール感とウォームなメロディが強く光っている。
35位 三回転とひとひねり『パスタ』
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長崎在住、術ノ穴からもリリースしていた4人組の7年ぶりの新作。飄々・淡々としながらもいつの間にか異空間に連れていかれるみたいな感覚は海辺の街に根差したまますくすくと育った。ローファイな音像、最初と最後にあるポエトリーリーディングなど、居心地の悪さと良さが混在する個性派。
34位 フレンズ『SOLAR』
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中心メンバー脱退後の2ndアルバム。おかもとえみ(Vo)がメイン作家となった結果、音楽性はよりスタイリッシュに。ソロともまた違う、フレンズ仕様の洒脱さ。三浦太郎(Gt/Vo)がセカンドボーカルに昇格したことで生まれるパワーも実感できるし「海のSHE」みたいな異端さも余裕で出せる強さがある。
33位 ずっと真夜中でいいのに。『ぐされ』
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全貌不明のポッププロジェクトによる2ndアルバム。ミステリアスで冗談めかしたような言語感覚で綴る歌詞、鋭さと甘さを兼ね備えた歌声。2つを掛け合わせて心地よく転がすメロディとビビッドなサウンドは更に磨きがかる。ただし歌うのはあくまで真夜中の独り言。その身近さに愛着が湧くのだ。
32位 NEE『NEE』
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気鋭のロックバンドによる1stフルアルバム。2010年代の代表格だった高速四つ打ちのサウンドをボカロフィルターを透過させてアップデートした正統進化の熱狂ロック。しかし享楽性は皆無であり、不穏さとやけくそ感を吐き出したような怪奇的なグルーヴが耳をハック。さぁ、フェスだとどうなる?
31位 アイナ・ジ・エンド『THE ZOMBIE』
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BiSHのメンバーによる2ndアルバム。元よりシンガーとしてのポテンシャルは破格のものだったが作詞作曲の面でも縦横無尽にアイデアをぶっ飛ばす才気を炸裂。そして亀田誠治によるアバンギャルド&オーセンティックなアレンジを味方につけ、2020年の"歌姫"としてこれ以上ない質の傑作を生んだ。
30位 Homecomings『Moving Days』
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メジャー1stアルバム。バンドの境遇になぞらえた”引っ越し"をテーマにした楽曲たちの風通しは抜群。元居た場所を懐かしみ、新しい生活に馴染んでいくまでの心の動きを捉えた温かなストーリーテーリングが優しい。ストリングスとホーンの本格的な導入、ソウルやR&Bを経由したビートなど新たなカードもマッチしており、ホムカミの懐の深さと間口の広さを物語っている。
29位 odol『はためき』
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28位 THE KEBABS『セカンド』
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その名の通りの2ndアルバム。1曲目を聴けば分かる通りの生粋のロックンロールバンド。彼らは一切期待を裏切らない。快楽中枢を満たすべく、求めた爆音をどんぴしゃでくれる。お約束な格好良さ、これヒーローなんだよな。
27位 SACOYANS『Gasoline Rainbows』
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26位 4s4ki『Castle In Madness』
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メジャーデビューアルバム。ローファイHipHopを出自に持ちつつ、近年はハイパーポップと括れる暴走的かつ爆発力の高い楽曲でフロアを昇天させるオートチューンシンガー。中毒性の高い強烈な楽曲に加え、センチメンタルでロマンチックな質感の楽曲も終盤には用意され、多面的な魅力をアピール。
25位 Official髭男dism『Editorial』
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メジャー2ndアルバム。もはや説明不要の国民的バンドだが、プリセットされた抜群のメロディと歌声の力を信用した結果、サウンドメイクはさらに先鋭の一途を辿った。すこぶるミニマルな曲もある流れの中、「Laghter」から「Universe」へと飛び去っていく終盤は時代を牽引する風格が漂っている。
24位 teto『愛と例話』
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3rdアルバム。フルエナジーな楽曲をトップスピードで聴き食らい、汗をびしゃびしゃかきながら聴く魂の咆哮。このアルバムをもってメンバー2名が脱退。身を擦り減らし求め続ける愛の代償はこんなにも大きいのかと思う。
23位 NELN『dawn』
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映像作家がプロデュースで参加している2020年結成の3人組アイドルによる1st。サウンドが爆踊りできてメロディは切ないという黄金律に、青春性と私小説で胸いっぱいになるリリックが見事。Maison book girlとsora tob sakanaとを失った世界に舞い降りた、セカイ系ガールズポップの希望の灯火。
22位 ヒトリエ『REAMP』
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3ピースバンドとなってから1作目。メンバーそれぞれがソングライティングを初めて担当したとは思えないほど重厚かつ堂々としたロックナンバーが寄り集まった濃密な41分。それぞれの個性が輝いているのは勿論、急逝したwowakaに代わってボーカルとなったシノダの歌声も初々しさの中に確かな狂気を孕み、楽曲の危うさを体現。初期衝動の再獲得を経た、可能性の塊だ。
21位 mekakushe『光みたいにすすみたい』
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1stフルアルバム。静謐な空気感で幕を開けるが、1曲1曲進むごとに様々な表情を見せてくれる。ダンサンブルなアプローチや、歌謡曲やボカロに近い領域までもをなだらかに行き来し、楽曲ごとを華麗に揺蕩っていくような歌声の求心力は特別。管楽器の伸びやかなフレーズに身を委ねたくなる「もしものはなし」から慎ましい小曲「余映」で括られるラストには息を飲むはず。
20位 岡崎体育『FIGHT CLUB』
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4thアルバム。ネタ曲と良曲の垣根はなくなり、笑いにもマジにも振り切りすぎない、極端ではない曲が増えたことで今までになく平熱で聴き通せるアルバムだ。ガチラップも、岡村靖幸フィーリングな「おっさん」もドープなインストも、興味も赴くままに生み出された楽曲ばかりで、その作為性の無さも彼の作品では新鮮に聴こえる。「Hospital」や「八月の冒険者」などの良質ギターロックを聴いていると、リスナーのボルテージは一気に最高潮に!
19位 Age Factory『Pure Blue』
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4thアルバム。10曲わずか26分という速度で駆け抜けるのは焦燥感からか、振り切りたい何かがあるからか。いずれにせよ、"目が覚めるような青"と形容するに相応しい、瑞々しいギターサウンドが青春の風景とともに流れ込んでくる1作だ。アーシーでしゃがれた歌声は少年性と貫禄を共存させたような不思議な佇まい。まだ見えぬ未来にも、絶望の深淵にも届く感情の横溢。
18位 折坂悠太『心理』
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3rdアルバム。前作以降、オープンなフィールドへの進出も果たしながら作品としてはディープな方へと潜り続けている。フォークロックの領域を実験的で遊び心に溢れる手つきで押し広げ、異形のサウンドを持つ"シン歌曲"として結実。どこか遠くの風景を脳裏に浮かんでくる歌声もまた見果てぬ可能性をもって表現力を拡張。ユーモアと理知で日々に寄り添う詞世界も絶品だ。
17位 桃野陽介『MOMONOBAND A.I.D』
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モノブライトの首謀者によるソロ1stアルバム。元より引用やオマージュを得意とするソングライターではあったが、ソロになったことで遂にモノブライト自体をもリファレンス素材とし、ストレンジな風味を振りまきつつも聴きやすくアクを抜いたギターロックへと仕上げた。固有の感情を描く詞世界は陰を濃いタッチで深みを増し、サウンド的には鍵盤が可愛らしく煌めく。一度メジャーシーンを離れてなお、あくまでポップを捨てない姿勢が嬉しい。
16位 Tempalay『ゴーストアルバム』
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メジャー1stアルバム。得体の知れないところから飛んでくる不協和音やどこかへ連れていかれそうな予測不可能な音像。その中でひらひらと美しい旋律で舞い踊る耽美で歪なサイケアンセム集。現代社会とも対峙しながら大いなる自然へと畏怖を送信する、、ともすれば宗教的なイメージすら纏いそうなところを、先鋭的なサウンドメイクで極上の幻惑ダンスミュージックに仕上げる職人技に感服。ポップカルチャーを通し、黙示録を覗き込むような。
15位 家主『DOOM』
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3人のソングライターを擁するロックバンドによる2ndアルバム。三者三様、書く楽曲はそれぞれかなり異なる。のどかさとフォーク感が漂う田中ヤコブ、オルタナティブロックに寄った谷江俊岳、ネオアコ調な田中悠平とバラバラだ。しかしどういうわけか彼らの演奏で束ねられるとツルっと聴いてじわっと昂れる。唸るギターもよく馴染んでいる。日常を肯定するでも否定するでもない、ただ見つめるという視点は生活の中でしか生まれない耐久性だ。
14位 indigo la End『夜行秘密』
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7thアルバム。1stアルバム『夜に魔法をかけられて』以来に夜へと潜り込み、その閉じた世界と底知れぬ不可思議を探り当てるようなスリリングでクールな1作。弛まぬ実験性と「夏夜のマジック」に通ずる普遍性の配合を追求。今作で際立つのはギターワークだろう。アコースティックな調べと、ここぞ!で唸りをあげる歪んだギターフレーズなどがアルバム全体の緩急を生んでいる。近年では珍しい60分に迫る収録時間も夜に浸るにはうってつけ。
13位 PEDRO『後日改めて伺います』
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年内での活動休止を発表した、アユニ・D(BiSH)によるバンドプロジェクト、休止前最終作。遂に全楽曲の作詞作曲をアユニが担当し、極めてパーソナルな独白を書きつけた1枚となった。これまでよりも更に衒いなくギターロックサウンドを希求し、田渕ひさ子のリードギターのアレンジも躍動している。歌詞はデビュー時あんなに閉ざしていたアユニが徐々に言葉を味方につけ、人を人と想い、粛々と生きることに邁進するようになったドキュメント。
12位 a flood of circle『伝説の夜を君と』
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5年連続のアルバムリリース。これ程の持久力を持ちながらクオリティを一切落とさないところにバンドとしての執念すら感じる。今まではぶっ飛ばして始まることが続いていたが、今回は表題曲からの「ポラリス」と「北極星のメロディー」でセンチメンタルな煌めきを降り注がせながら幕を開ける。その後も、ブチ上げとクールダウンを繰り返しながら進むこの構成は不安定な気分の中でも決死で這い上がろうとする姿と重なる。人間の匂いがする1枚。
11位 橋本絵莉子『日記を燃やして』
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2018年に完結したチャットモンチーのギターボーカル、えっちゃんによる1stアルバム。バンドのセンターでありつつ"陰"を担っていた彼女がここに集めた10曲は日々の隙間に潜む違和感や歪みをキャッチした言葉が光り、胸に迫る。誤解を恐れずに言えば、20代の時よりも世界への解像度が上がった結果、言葉選びとしてはより尖ったものに。具体と抽象、記憶と現在を往来する生活の中の過激派フォーク。「ロゼメタリック時代」の歌詞、震える。
10位 MONO NO AWARE『行列のできる方舟』
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4thアルバム。コミュニケーションを取り巻く不安や、“結局は分かり合えない“という悟りを織り込んだ玉置周啓(Vo/Gt)のリリックは言葉遊びの中にも真摯な観察眼が冴え渡っている。それでも重くなりすぎないのはバンドが培ってきたユーモラスな側面とそれを体現する軽やかなグルーヴや口ずさみたくなるコーラスの存在は大きい。誰かに縋りたくなる気持ちとどこまでいっても1人だという感覚は相反するものでなく、取り除くことのできない人間らしい雑味であると楽曲それぞれが教えてくれる。行列から目を背けたい僕らの、”連帯“や"共に"という言葉からはみ出てしまうマインドに届く音楽。
9位 OKAMOTO’S『KNO WHERE』
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2年8ヶ月ぶりの9thアルバム。多くの宝物が集まるMCUの惑星と同じ名を冠した本作はファンク、HipHop、ロックンロールといった諸要素をコレクトし輝かせた音楽大全だ。一方、<この世は巨大なSupermarket なんでもあるけどなんでもあるだけ>と歌う「Young Japanese」に象徴される通り、エンタメも思想も飽和しきったこの世界を冷徹に捉えたテーマが通奏。しかし中盤「Sprite」〜「Misty」に至るメロディアスな曲群で都市の若者の追想と現在地が映し出されてゆく。そして終盤は強烈な意志と共に音楽を、バンドとして鳴らす再宣誓へと向かう。都市と生き、都市を突き刺すロックアルバム。
8位 ネクライトーキー『FREAK』
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3rdアルバム。おもちゃ箱をひっくり返したような、とか突拍子もない、とか表現されがちなバンド像を飛び越え、よりスケール感を増したロックサウンドを展開した。元より、鬱屈と怨念を煮詰めていた詞世界はコロナ禍を経て更にグツグツと滾り、家の中を舞台とした楽曲が多い中でも感情の暴動は遠慮がない。ただし、"それでもやるしかねえ"という方向にエネルギーが噴出されているから決して怒りに終止するアルバムでもない。ある意味では大人になった、ということだが丸くなったわけではない。尖りながら生き続けるからこそ吐き出すことができる、大人ゆえのブチギレもあったりするのだ。
7位 peanut butters『peanut butters』
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68751342/picture_pc_48b99da17d729415069600790a80799a.png?width=1200)
コンポーザー・ニシハラとフィメールボーカル・紺野メイからなるオルタナポップユニット。宅録に端を発するグループゆえ、どこかクローズドな箱庭っぽさが特徴だが、本作ではバンド録音も板につき、晴れやかなメロディを躍動的な演奏で際立たせた。とはいえローファイさを損なうことはなく、これ以上パワフルになったら面白くない、ギリギリに着地させている。エフェクトがかった歌声はどこかヘンテコで人間味を隅に置いているような印象。Galileo Galileiがもしもメジャーに出ずに肩の力を抜いたまま『PORTAL』期の音像に辿り着いたら?というifと喩えたい、甘酸っぱいインディーポップ。
6位 DIALOGUE+『DIALOGUE+1』
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68739956/picture_pc_6ac1454580eae7695cddd98b5e6a63fb.png?width=1200)
UNISON SQUARE GARDENの田淵智也(Ba)がプロデュースとメインコンポーザ―を務める声優8人によるユニットの1stアルバム。ユニゾンが2013年にリリースした『CIDER ROAD』はロックバンドとしてJ-POPに革命を起こしにいった作品だったが、その際に用いた圧倒的な展開量と山盛りのアレンジを存分に発揮。多彩な演奏陣とソングライターを招集し適材適所に配置するディレクター力も発揮し、徹頭徹尾非の打ち所が無い鉄壁のアイドルポップ集を完成させた。ドラマチックな歌詞が魅力的に輝くのは勿論のこと、独自の言語感覚のトンチキソングもまたこのグループだからこそ、の面白みがある。
5位 吉澤嘉代子『赤星青星』
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レーベル移籍を挟んで2年半ぶりの5thアルバム。多彩なメロディラインと浮遊感溢れる神秘的なアレンジは更に美しく、上品な風合いに仕上がっている。曲世界の登場人物が憑依して綴られた歌詞はこれまでの作品と同様だが、より感情そのものを丁寧に掘り下げた描写が光る。"その想いを伝えること"が作品の中心になったのは会いたい人に会えなかった2020年の日々が大きく反映されているのだろう。叶わぬ恋、世界が許さない恋、誰にも認められない恋を飛び越え、想いの力で空気を揺らす、次元を超えて声が届く物語。多様性という言葉では零れ落ちてしまう、個と個が寄り集まった短編集だ。
4位 For Tracy Hyde『Ethernity』
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4thアルバム。夢心地なシューゲイザーサウンドに胸を打つメロディを重ねた音楽性は研ぎ澄まされ、気の遠くなるような美しさをもたらしてくれる。鮮やかな青々しさで全てを染め上げた前作『New Young City』から一転、中盤ではグランジやハードロックの要素でざらついた音像が襲いかかるなど、どこか不安定なまま物語は閉じていく。これはアメリカを題材にした舞台設定の影響が大きいのだろう。不穏と高揚が次々に押し寄せる青春譚は光も影も一緒くた。ネトフリや海外ニュースで目にしていた社会の一端を、在住経験のある語り手の言葉で聴くことができる。世界が視えるドリームポップ。
3位 カネコアヤノ『よすが』
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現バンドメンバーとなって3作目のアルバム。歌うように生き、生きるように歌う。飾らない在り方で支持層を拡大し続けているシンガーだが、日々が一変した2020年においてもその物悲しさや静かな絶望すら掬い取って命を吹き込んだ。芯の太い歌声も健在だがどちらかと言えばメランコリーで儚げな表現が印象に残り、胸の奥へと沁み渡っていく。「あぁしんどかったな、、」とあの日々のことを彼女とともに追体験していく聴き心地。希望などないと思うまで落ちた日も、希望しかないと思い笑えた日もきっと『よすが』は寄り添ってくれる。いつか思い出として振り返れる日が来ること願いたいな。
2位 Base Ball Bear『DIARY KEY』
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結成20周年でリリースされた9thアルバム。それは例えばヘンリーダーガーの遺した芸術のように、誰の目に触れることのないままでも構わないとした想いにも、大いなる意味があったりする。アーティストがしたためた日記とは、あながちそういうものなのかもしれないな、とこの作品を聴いて思う。
1位 クリープハイプ 『夜にしがみついて、朝で溶かして』
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6thアルバム。長らく謎だったバンド名の由来がジム・ジャームッシュ監督の「ナイトオンザプラネット」の台詞からと明かされたり、音楽を伝える根本のような所に触れる曲があったり。必然的にクリープハイプというバンドの在り方そのものをを従来にはない手法で改めて刻み付けた。史上最高傑作。
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