2022年1月の展覧会(ホー・ツーニェン 百鬼夜行/ミニチュアライフ展2)
ホー・ツーニェン 百鬼夜行@豊田市美術館
アジアの歴史にまつわる複合的な作品を創るシンガポールのアーティスト、ホー・ツーニェンによる映像作品の展示会。浮世絵や漫画作品などの造形をベースに、この展示のためにデザインされた100体の妖怪たちが真っ暗な会場の中でスクリーンに投影され続ける。百鬼夜行と名付けられた通り、第1の部屋では100体の妖怪が闊歩し、第2の部屋ではそのうちいくつかの妖怪についての注釈が入り、第3の部屋では第二次世界大戦中に暗躍したという"のっぺらぼう"の物語、第4の部屋ではこの展示を貫いていた"虎"というテーマに迫る作品と、徐々に第1の部屋の意図が判明していくような構成だった。
不安や恐怖といった"得も知れぬ感情"に対して輪郭を与えてきた妖怪たち。人間の心を投影する存在とし継承され続けてきた妖怪だが、人間社会が成熟するに伴って排他された後、そんな人々の心にある蛮性や狂気のメタファーとしての"化け物"として根付いていく、、、そんな日本の精神史を第二次世界大戦を分岐点として描くという一連の流れ。すべては結果として"人"なのだ、という途方もない恐ろしさを感じざるを得ない。我々のすぐそばに、そして自分の心にだっていつの間にか妖怪を忍び寄ってくる。防衛本能を鋭敏にさせてくれる、シリアスだが奥深く思考が巡る上質な展示会であった。
展示終了日に行われた、ホー・ツーニェン本人と中継を繋いで行われた質疑応答も面白かった。かなりメッセージ性の高い展示だが、ヘヴィになりすぎていないのはこの展示における"あまり売れようとしてる感じのないアニメーション"が重要だと思っていたのだが、北朝鮮の制作会社に依頼していたのだという。この会社への発注方法が非常に興味深かったんで気になった方は上記リンクから是非。個人的にも発見と今後への関心が連なっていく意義深い展示だった。特に「狸」が幻聴を聴かせるという伝承であるとか、健忘症を引き起こす妖怪「鉄鼠」など、精神疾患と妖怪というのも強く結びついているのではないか、と思わせる言説がいくつもあった。ここは掘り下げたい。
初めて豊田市美術館に行ったのだけど、さすがは「日本一美しい美術館」とうたわれているだけあってその洗練されきった建築には見惚れてしまうものがあった。あと本当に無機質空間すぎて、緊張するかなと思ったけど意外にも居心地がよくてそこも驚き。時間がなくて、1番美しいとされている水面のショットを捉えることが出来なかったのだけどこれはまたの機会に。
MINIATURE LIFE展2~田中達也 見立ての世界~@JR九州ホール
もうすっかりミニチュア界の巨匠となった田中達也氏、狂気の365日ワークの片鱗をまたしても目撃できた。ほんわかした作風でありながら毎日続けてると考えると身震いする凄みがある。ジャルジャル的な執念を感じている。
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