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2022年上半期ベストアルバム 10
毎年恒例の上半期ベスト。名古屋に住み始めて通勤が車になったのでわんさか新譜も聴けるようになった上半期。トップ10は迷うことなく決められた。例外もあるけど全体的に質量のずっしりした作品が揃った印象。でたらめに長けりゃあいいって話では決してないのだけど、たっぷり聴けてしっかり心に残るアルバムというのが今の気分には合っていたのかな、と思ってる。
10位 羊文学『our hope』
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メジャー2ndアルバム。明らかに上昇気流の渦中でありながら着実にバンドとしての足場を広げているのがよく分かる、浮足立っていないブレイクスルー作だろう。美しく残響をゆらめかせる音色を機軸にしながら、フォーキーな楽曲やシンセサイザーの導入など挑戦的なアレンジも自然に着こなしている。また昨年の『your love』から『our hope』へと繋がっていく現在のモードは”愛と希望”を描くことに注力しているように思える。誰もが疲れきっている時代にあって激しいサウンドでありながらどこか慈しみ深く、ケアをもたらす羊文学の音楽は祈っている。せめて光とほのかな暖かさを、と。
9位 ナードマグネット『アイム・スティル・ヒア』
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大阪発パワーポップバンドの3rdフルアルバム。コロナ禍、メンバー脱退というバンド活動の苦境、そうでもなくても苛立つこと、理不尽なことも多い日々で須田亮太(Vo/Gt)のパーソナルで誰にも見せない傷も多かったはずのこの3年間。その末に生まれたのは、地の底まで気分が落ちても怒りに溢れる日があったとしても自分は自分にしかなりえないという事実を確かめるような1作だった。今ここにいて、ここから変えていくことを鳴らすこのロックアルバムは引用やオマージュを超越して何よりも"一人称"が強く響き渡る。11曲28分という痛快すぎるランタイムでありながら、ずっしりとした重量感。
8位 Cody・Lee(李)『心拍数とラヴレター、それと優しさ』
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2018年結成の5人組バンドによるメジャー1stアルバム。タイトルで全部言い切っちゃってる作品っていうのがあると思うがこれもその1つ。快楽中枢を突くグルーヴィなバンドサウンドにドキドキするし、歌詞は青春の風景を沢山のカルチャーと共に描いていてまるで照れを知らない恋文のようだし、そして全編に渡って包み込むようなアコギの音色がこの日々をそっと彩っていく。こんな時代なんだから愛だの恋だの言ってる場合かなんて声も聞こえてきそうでビクビクするけど、いつだって僕らの暮らしに必要なのはこういう大切な誰かとか今日のご飯とか季節の移ろいなんじゃないかって思うのだ。
7位 リーガルリリー『Cとし生けるもの』
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前作にあったオルタナティブな様相からガラッと雰囲気を変え、研ぎ澄まされたギターロックがひしめくメジャー2ndアルバム。添加物を受け付けない、骨太で鋭利な3ピースサウンドは冷たさの奥にある温かみ、優しさの傍に忍ばせた怒りなど、相反する精神世界が鏡面のように並び立っている不思議さがある。歌っている事象も夢想や御伽噺から少しずつ現実に立脚し始めているが、たかはしほのか(Vo/Gt)のペンはあくまでも彼女のフィルターを通した言葉を紡いでおり詩としての強い芯を感じる。何かを言わなきゃ何も言ってないと言われる世界において静かに抵抗して怒りをも光らせる気高さよ。
6位 ズーカラデル 『JUMP ROPE FREAKS』
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北海道発3ピースバンドのメジャー2ndアルバム。胸踊るグッドメロディ、うきうきするシンプルなサウンドという可能性だけでまだ行けるポテンシャルを持っているそうだったが、ホーンや鍵盤によってその音世界をより豊かなものにしている。厄介な気持ちやどうにもならないことをあれこれ考えこんでしまう夜を柔らかくほどいていくような温かみと、どうしたって離れられない故郷の街並みや恥ずかしい記憶と結びついていくノスタルジーがたまらなく胸を打つ。トレンド性や機能性が重要視されるシーンだからこそ、僕なんかは口ずさんで気分が良くなるこんな音楽を愛していきたかったりする。
5位 UlulU『UlulU』
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2015年結成バンドの1stフルアルバム。ガレージロックとも形容できそうなほど荒々しくこざっぱりした楽曲たちで幕を開けるが、重厚な4曲目「イルミナント」から「愛の讃歌」のカバーを経て長尺のロックバラッド「Terminal」に連なる中腹の流れで一気に引き込まれた。ギターソロは必要だと叫んでいそうなエネルギッシュなバンドサウンド。後半は開放的な表情も覗かせ晴れやかなフィーリングもある。思い出と生活がくるくる巡る歌詞も親しみやすい一方、歌声はどこか冷えた質感を携えている。熱すぎず、でも冷めすぎない、平成生まれテン年代前半ロック育ちのバランス感覚。快進撃に期待。
4位 ゆうらん船『MY REVOLUTION』
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2016年結成の5人組バンドによる2ndアルバム。サイケな匂いのフォークロックと思っていると不意に空気を裂くようなアレンジが飛び出すし。いつの間にか小躍りを誘うビートも躍動し始める。そんな幻惑的な聴き心地に酔いしれるインナーワールドの探訪録だ。散文の中にほのかな感傷が立ち上がる歌詞も絶品でそれを過度に切なく聴かせない内村イタル(Vo/Gt)の緩やかな歌唱もマッチしている。褪せた風合いにモダンな感性、ニューレトロなんて言葉じゃ収まりきらないアバンギャルドさが耳を惹く1作。くるりやフィッシュマンズが現れた時に高まった熱を令和で再燃させてくれるのは彼らかもしれない。
3位 RAY『Green』
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令和元年始動の4人組女性アイドルグループによる2ndアルバム。シューゲイザー×電子音楽×アイドルポップという成分表示に惹かれて聴いたのだが、そんな明瞭なラベリング以上の美しい詩情とロマンチシズムが滴る大巨編。トラックが変わる度にハッと息を呑む絶景が目前に広がるので打ちのめされながら聴き終わった。薄暗く、そして切ないメロディという統一感はあるがダンスビートからロックバラードまで幅広いトラックを展開し、変拍子などは用いない直情的なバンドサウンドも胸を打つ。そして何より4人の歌声。憂い、神秘、祈り、悲しみが息づきこの世界の語り手としてあまりにも雄弁。
2位 春ねむり『春火燎原』
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2016年に活動開始したポエトリーラッパー/トラックメイカーによる2ndフルアルバム。とてつもない気迫をもって届けられる激情の62分。教室の片隅から目前に横たわる社会までをシームレスに繋ぎながら、違和感に満ちた世界の胸ぐらを掴む言葉を放射し続けていく。イノセントなボーカルと憤怒するシャウトが入り乱れる歌唱も聴き手を魂ごと湧き立たせてくる。デスクトップで生まれた音楽がこれほどまで肉体と思考を伴って届けられる衝撃も強く、たった1人でも楽器を持たずとも思考と肉体をもってすればロックンロールしてしまえるのだと実感する。とにかくライブを観てみたくなる1作。
1位 ASIAN KUNG-FU GENERATION『プラネットフォークス』
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3年半ぶりの10thフルアルバム。やはり我々は分かり合えない。じゃあ冷笑して終わりにしますか、ではなく音楽を通してであれば、僅かにでも繋がり認め合うことはできないだろうか。そんな意思に呼応するように多数のゲストミュージシャンを招いたり、シンセベースやトークボックス、メロトロンの導入で多彩な音像を追求したり、全編に渡って風通しの良い作品に仕上がった。皮肉とユーモアが交互に訪れ、絶望と希望も綯い交ぜな歌詞はどこか拠り所を探しているように聴こえるが最後の「Be Alright」が肯定する"LIVE"こそが答えなのだろう。またいつか笑って出会うためのロックミュージック。
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