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感染する歓喜〜3.10 星野源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』 @福岡ヤフオク!ドーム

2018年末の大ヒットアルバム『POP VIRUS』を引っさげての5大ドームツアー。その千穐楽が福岡ヤフオク!ドームで開催された。個人的には行き慣れてない会場ゆえ、入場ゲートを180度逆でミスって全然自分の席に辿り着けないなど、もろもろあったけど無事に入場。いやはや分かってはいたけど凄い人の数。満杯のドームを観たことがなかったので、この粒の1つ1つが感情を持った生き物なのか、、と壮大な思考に至ったりもした。 

定刻10分過ぎに開演。花道の中腹に設けられたステージ上に星野源登場である。赤いパーカー、コンビニにでも行くようなラフな格好で、ドームの中央にふらっと現れたのは逆にインパクトがデカい。ザワザワした空気の中、届けられたのは1stシングル「くだらないの中に」のカップリング曲「歌を歌うときは」である。7,8年前までは1曲目の定番だったが、このタイミングでまさかの再登板。思わず変な声を出してしまった。

好きだと言うときは 笑顔で言うのよ
さよならするときは 目を見て言うのよ
歌を歌うときは 背筋を伸ばすのよ
想い伝えるには 真面目にやるのよ
真面目にやるのよ                                        (歌を歌うときは/星野源)

前回の2017年「Continues Tour」のコンセプト説明ナレーション→「Fire Cracker」カバーと比べるとかなり素朴な幕開けだ。しかし、このライブを3時間観ていけば、このオープニングも納得である。この生々しくも誠実な独白が、今回のツアーにおいても徹頭徹尾貫かれていたからだ。彼が小さな部屋からぼそぼそと生み出していた楽曲が、国民的スターの座へと辿り着いても尚、いやむしろ一層にその強度を増して切実に鳴り響いていた。

そのまま、表題曲「Pop Virus」をバンドインして披露。バンド、ホーン隊、カルテット、STUTSによるMPCも交えた鉄壁のアンサンブルでじわじわと熱を上げていく。そしてけたたましいノイズから「地獄でなぜ悪い」だ。ここで待望の「どうも~星野源で~す」である。そしてこの曲と『POP VIRUS』の親和性の高さたるや!至上の楽園のような空間も、楽しい地獄と言い切って"日々"との隔たりを取っ払う。これが彼の創るエンターテイメントだ。

ここからはアルバム曲が次々披露される。どれもが甘いメロディとしなやかなリズムで、様々なダンスを提案してくる。過去曲たちにも、STUTSによるビートが加わって、更にこちらを高揚させるリアレンジが施されていた。力業でブチ上げない、あまりにも音楽的な時間。星野源自身も自分の存在を音楽の中へと埋没させ、融け合いながら歌を届ける。「サピエンス」から「ドラえもん」という洒落の効いた曲順を経て、第1部はおしまい。

観客席の近くにこっそり登場して弾き語った「ばらばら」、1stアルバムの1曲目から「世界はひとつになれない」と歌い切った美しい孤高さもまた、今に至るまで地続きであるなぁと沁み入る。そしてセカンドステージと星野源が称した花道の先端部へ移動する、その時間を利用してSTUTSによるMPCプレイが!「Continues」~「ミスユー」、そのフレーズを用いて「夜をつかいはたして feat.PUNPEE」を!しかもラップは再録、様々な文脈や演者の交流点であり、見本市でもある現在の星野源を示す重要な時間だった。

セカンドステージでは、長岡亮介、ハマ・オカモト、石橋英子、櫻田泰啓、STUTSによるバンド隊と、星野源による小編成で自由度の高い演奏が。というか、自由すぎて「プリン」の演奏中に寝ころんだり、「POWER OF LOVE」や「愛を勝つ」を口ずさんだり、3万5000人を前にとにかくダラダラしていた。「こういう場から音楽は生まれるんだよ!」という、冗談なのか本気なのか定かじゃない名言も飛び出し、ラストは「くせのうた」でしっぽりと締めくくり。

元のステージに戻り、「化物」「恋」「SUN」と、1曲の存在感がデカすぎるラインナップで終盤を彩っていく。そしてアルバム重要曲「アイデア」へと。彼の、というか人間誰もが持つ二面性を音と言葉で紡ぎ、一緒くたにして続く日々へ繋げる新たなアンセム。1曲目を歌った花道の中腹へと向かい、この曲の弾き語りパートを披露する、円環構造のような演出。ぐっと集中力を高め、ラスサビへ、、というところで、花道を戻るべくセグウェイに乗るという、笑いに寄せまくった演出も経て、金テープの舞う大団円。星野源のあらゆるスタンスが詰まった1曲だった。

狂乱の「Week End」を経て、本編ラストは「Family Song」で温かく。前もって仕込まれた徐々に高まってくアンコールに呼び込まれ、ニセニセ明(Shingo Okamoto)という多重構造すぎるキャラクターの登場後、「時よ」で再び熱狂を巻き起こしていく。

本編ラストはアルバムの終曲でもある「Hello Song」。見果てぬ未来にも不死身のポップウィルスを撒き散らしてしまうような、タフな祈りが込められた1曲だ。アウトロで「毎日ほんとクソだけど、また会えたら笑顔で会いましょう~!!」と、声を裏返しながら絶叫する姿に、星野源という男の真価を観た。生活者のまま、自分の感情を騙すことをせず、日本のポップシーンの最前線を生き抜いている。どれほどの規模においても、彼の持つその意志の濃度は薄まることなく、それぞれにその濃さで突き刺さっていたと思う。

何処の誰か知らないが
出会う前の君に捧ぐ
この世未来切り開く
何でもない君に                              Hello Song/星野源

出演者全員が花道に出るエンディング。SEとして流れる「Pop Virus」のラララに間に合わせて、ステージに戻って再び演奏するという名残惜しさ満載の時間も飛び出しながら、終演。誰しもが思うグッドソングを新鮮な角度で提示し続け、一大パンデミックを起こした星野源。その連鎖の結実として、我々は歓喜という熱に浮かされてしまったのだ。大雨の降る福岡の夜でも、「雨の中で君と歌おう」とか口ずさんでしまえるような、そんな症状を抱えたまま、またしても始まるクソみたいな月曜と向き合いにいくのだ。

3.10 星野源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』@福岡ヤフオク!ドーム
1. 歌を歌うときは
2. Pop Virus
3. 地獄でなぜ悪い
4. Get a Feel
5. 桜の森
6. 肌
7. Pair Dancer
8. Present
9. サピエンス
10. ドラえもん
11. ばらばら
12. KIDS
13. プリン
14. くせのうた
15. 化物
16. 恋
17. SUN
18. アイデア
19. Week End
20. Family song
EN
21. 君は薔薇より美しい
22. 時よ
23. Hello Song

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