マハーバーラタ/6-25.五日目の戦い
6-25.五日目の戦い
五日目の朝、
太陽はちょうど東の地平線を赤く縁取りながら現れた。
カウラヴァ軍の総司令官ビーシュマは、マカラヴューハ(ワニの陣形)に軍隊を整え始めた。
一方、パーンダヴァ軍ではアルジュナ、総司令官のドゥリシュタデュムナ、そして王のユディシュティラが協議し、タカの陣形に決定した。
くちばしの位置にはビーマ、
両目の位置はシカンディーとドゥリシュタデュムナ、
頭の位置はサーテャキ、
首の位置にアルジュナ、
左の羽はドゥルパダとヴィラータ、
右の羽はケーカヤ兄弟によって形作られ、
背骨はアビマンニュとドラウパディーの息子達、
尾の位置にはナクラとサハデーヴァに守られたユディシュティラが陣取った。
戦いの口火を切ったのはビーマ。
カウラヴァの陣形の首の位置に突っ込んでいった。
するとビーシュマが現れ、ビーマと戦い始めた。
アルジュナがビーシュマの所へ急いだ。
ビーシュマのアストラに対抗することができるは彼だけであった。
ドゥルヨーダナはドローナの所へ駆け込んだ。
これ以上弟が殺されるのは見たくなかった。
「ドローナ先生! 私はあなたの助けを必要としています。あなたと祖父ビーシュマは神々を相手に戦える人です。パーンダヴァ達などあなたの手に掛かれば大したことはありません」
ドローナは怒りのため息をついた。
「なんと愚かな。
今になってもパーンダヴァ達が無敵であることが理解できないのか?
しかし、その愚かな期待、受けよう。
能力以上の力を発揮し、全力で役割を果たしてみせよう」
ドローナは返事を待つことなくパーンダヴァ軍へ向かった。
彼の猛攻撃の対象となったのはサーテャキであった。
しばらくはこの二人の見事な戦いが続いたが、双方が援軍を送り、混戦状態となっていった。
ドローナの次の標的となったのはシカンディーであった。
『シカンディーからビーシュマを守れ』
これはドゥルヨーダナが戦争の始めに指示したことであった。
シカンディーはビーシュマを殺す運命をもつ女性で、男性に生まれ変わってこの戦いに参加していた。
ビーシュマ自身もまた、シカンディーと直面しないように戦いを避けていた。
ビーシュマはパーンダヴァ全軍を相手にしながらも、ドゥルヨーダナの弟達を必死にビーマから守っていた。
昼が近づき、太陽は天頂から戦士達を焼いていた。
既に何千もの戦死者を出し、戦場は人間や馬、象の血や死体で滑りやすくなっていた。
ほら貝を吹きならして進むアルジュナとクリシュナを筆頭に、パーンダヴァ軍がビーシュマに襲い掛かった。
カウラヴァ側の戦士達がビーシュマの旗の周りに集結し、両軍の間で大きな戦いが起きた。
ヴィラータがビーシュマに矢を当てて傷付けることに成功した。
ビーシュマは一度怒りの目を向けたが、冷静に戦い続けた。
アシュヴァッターマーがアルジュナに挑んだ。
この二人はドローナのお気に入りの弟子であった。
ドローナの息子と、ドローナの一番にお気に入り。
この戦いは見る者を興奮させた。
アルジュナはグル(先生)の息子との戦いにはあまり気が進まず、他の場所へ行こうとした。
彼はドゥルヨーダナとビーマが戦っている横を通り過ぎながら、ドゥルヨーダナに矢で傷を負わせた。
ドゥルヨーダナはその胸の痛みを気にするそぶりを見せずに戦い続けた。
アルジュナの息子アビマンニュはまるで鎌で熟した穀物を刈り取るかのように敵軍を切り殺していった。
誰一人としてその若きライオンを止めることができなかった。
ドゥルヨーダナの息子ラクシュマナがわずかに対抗したが、すぐに怪我を負い、クリパによって戦場から連れ出された。
サーテャキも素晴らしい活躍をしていた。
まさにアルジュナの弟子であることを証明した。
アルジュナと同じ輝きを戦場で放っていた。
彼の前に現れたのは因縁の相手、ブーリシュラヴァスであった。
この戦いは長引き、それを見たビーマがサーテャキを戦闘馬車に引き入れて連れ去った。
その間もビーシュマとアルジュナの戦いは続いていた。
二人の力は拮抗し、どちらも引くことはなかった。
太陽が沈んだ。
ビーシュマは疲れ切った戦士達の表情を見た。
この日の戦いはとても疲れるものであった。
軍を引き下げることを決めた。
全員にとって夜が来たのは歓迎であった。
肉体的に精神的にくたくたになっていた。
アルジュナは祖父や先生との戦いの原因となったドゥルヨーダナを恨んだ。
(次へ)
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マハーバーラタ 6.ビーシュマの章
マハーバーラタの第6章 戦争を前に思いやりの気持ちに圧倒されてしまったアルジュナ。 クリシュナによる教えバガヴァッドギーターによって 知識…
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