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マハーバーラタ 6.ビーシュマの章

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マハーバーラタの第6章 戦争を前に思いやりの気持ちに圧倒されてしまったアルジュナ。 クリシュナによる教えバガヴァッドギーターによって 知識を得たアルジュナは再び立ち上がり正義の戦…
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マハーバーラタ/6-1.クルクシェートラ平原にて

6.ビーシュマの章6-1.クルクシェートラ平原にて 第一章(始まりの章)あらすじはこちら 第二章(サバーの章)あらすじはこちら 第三章(森の章)あらすじはこちら 第四章(ヴィラータの章)あらすじはこちら 第五章(準備の章)あらすじはこちら 開戦前日の夜、ヴャーサがドゥリタラーシュトラを訪問した。 「息子よ。これから恐ろしい日々が始まる。 あなたの息子や、彼に味方する王達が死んでいくことになる。 残念ながらこれは運命の法則通りだ。 もしこの戦争をその目で見たいと願うなら、目

マハーバーラタ/6-2.ユディシュティラの戦いの作法

6-2.ユディシュティラの戦いの作法 戦闘準備が整った両軍を突然の沈黙が襲った。 その沈黙の中で目を疑うようなことが起きていた。 ユディシュティラが突然鎧を脱ぎ始めたのだった。 そして武器も地面に置いた。 裸足になった彼は敵陣へ向かって歩き始めた。 全員が息を殺して彼に注目した。 ユディシュティラは親愛なる祖父ビーシュマに向かって真っすぐ歩いているのが分かった。 ビーマが彼の後に続いた。 アルジュナ、ナクラ、サハデーヴァもその後を追った。 誰一人としてユディシュティラの

マハーバーラタ/6-3.バガヴァッドギーター①~アルジュナの悲しみ~

6-3.バガヴァッドギーター①~アルジュナの悲しみ~ ドゥリタラーシュトラは言った。 「サンジャヤよ、ダルマの宿る土地クルクシェートラに戦う意欲に燃えて集まった私の身内達とパーンダヴァ達はどうなっているのだ?」 サンジャヤが言った。 「王であるドゥルヨーダナはパーンダヴァ達の軍隊の配列を見てドローナ先生に近づいて話しかけました」 ドゥルヨーダナは言った。 「ドローナ先生、あなたの優秀な弟子であるドゥルパダの息子によって配置されたパーンドゥの息子達の大軍を見てください。

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[補足]バガヴァッドギーター①~アルジュナの悲しみ~

「ドゥリタラーシュトラは言った」という一文から バガヴァッドギーターが始まります。 しかし、マハーバーラタのお話とスムーズにつなげる為には 「ここからバガヴァッドギーターである」などという違和感のある文を 入れるわけにはいきません。 そこでヴャーサは”ここからが聖典の部分ですよ”と暗に示すために 「dhṛtarāṣṭra uvāca(ドゥリタラーシュトラは言った)」という一文に 吉兆な始まりの言葉を忍び込ませています。 「ドゥリタラーシュトラ」という名は「宇宙を支える者」と

マハーバーラタ/6-4.バガヴァッドギーター②~知識~

6-4.バガヴァッドギーター②~知識~ サンジャヤは言った。 「同情の気持ちに圧倒され、苦痛で涙をいっぱいにためた目で悲しむ彼に、マドゥスーダナ(クリシュナ)が話しました」 シュリーバガヴァーン(クリシュナ)が言った。 「アルジュナよ! 今はこんなに重大な局面なのに、一体どこからそんな絶望感が起きてくるんだ? それは全く正義の人のすることではないし、あなたの輝かしい名声を上げるものでもない。天界へ導くような行いでもない。 敵を滅ぼす者パールタ(アルジュナ)よ。女々しくし

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[補足]バガヴァッドギーター②~知識~

正論を語り、涙を流して動けなくなったアルジュナに対して、 クリシュナがいよいよ教えを始める章です。 まず、「クリシュナの微笑み」に関して。 ↓バガヴァッドギーター2章10節 「両軍の真ん中で座り込んでしまった彼に向かって、フリシーケーシャ(クリシュナ)はまるで微笑みかけるかのようにこのような言葉をかけました」 シャンカラバーシャ(解説)はクリシュナの教えが始まる2章11節から始まるので、この微笑みに関しては自由に想像して楽しんでいい範囲かと思います。 クリシュナは人生の

マハーバーラタ/6-5.バガヴァッドギーター③~カルマ~

6-5.バガヴァッドギーター③~カルマ~ アルジュナは言った。 「行いを統括する神ジャナールダナ(クリシュナ)よ。知識が行いよりも優れているというのであれば、なぜ私に恐ろしい行いをさせようとするのですか? ケーシャヴァ(クリシュナ)よ。 まるで矛盾しているかのように聞こえる言葉で、私の考えを混乱させているかのように思えるのです。自由を得る為にはどちらがよいのか、一つに決めて教えてください」 シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「おお、罪の無い者よ。この宇宙の始

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マハーバーラタ/6-6.バガヴァッドギーター④~知識と行いの放棄~

6-6.バガヴァッドギーター④~知識と行いの放棄~ シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「私は滅びることのないヨーガをヴィヴァスヴァーン(太陽神)に教えた。ヴィヴァスヴァーンはマヌに教え、マヌはイクシュヴァークに教えた。 このように世代から世代へ伝えられ、リシ(聖者)である王がそれを知った。しかし、敵を焼き尽くす者(アルジュナ)よ。長い時間によってこのヨーガは衰退してしまったのだよ。 昔と変わらない同じヨーガが私によってあなたに話された。なぜならあなたは私のバ

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マハーバーラタ/6-7.バガヴァッドギーター⑤~隠退~

6-7.バガヴァッドギーター⑤~隠退~ アルジュナは言った。 「クリシュナよ。あなたはカルマ(行い)のサンニャーサ(隠退)を称賛し、カルマヨーガもまた称賛しています。この二つのうち、どちらがよいのかはっきりと話してください」 シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「サンニャーサ(行いからの隠退)とカルマヨーガ(ヨーガとして行いをすること)の両方が自由へと導く。しかし、この二つのうち、カルマヨーガの方がカルマサンニャーサよりも良いものだ。 強力な武器の使い手(アル

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マハーバーラタ/6-8.バガヴァッドギーター⑥~瞑想~

6-8.バガヴァッドギーター⑥~瞑想~ シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「カルマパラ(行いの結果)に執着することなく、すべきことをする人がサンニャーシーであり、ヨーギーでもある。単なるニラグニ(火の儀式を手放すこと)やアクリヤ(行いをしないこと)でのことではない。 パーンドゥの息子(アルジュナ)よ。それがサンニャーサ(手放すこと)と呼ばれるものであり、それがカルマヨーガであると知りなさい。限られた結果に対する欲望を手放していない人は全くカルマヨーギーではない

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マハーバーラタ/6-9.バガヴァッドギーター⑦~間接の知識と直の知識~

6-9.バガヴァッドギーター⑦~間接の知識と直の知識~ シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「プリターの息子(アルジュナ)よ。『私』に専心し、『私』に明け渡し、ヨーガを選ぶことで全く疑いを残さずに『私』を完全に知る為の方法を聞きなさい。 このジニャーナ(間接の知識)をヴィジニャーナ(直の知識)と共に、全く省くことなくあなたに教えましょう。これを知れば、この世界においてこれ以外の知るべきことなど何も残らない。 何千もの人の中で、わずかな人だけがシッディ(モークシ

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マハーバーラタ/6-10.バガヴァッドギーター⑧~不滅のブラフマン~

6-10.バガヴァッドギーター⑧~不滅のブラフマン~ アルジュナは言った。 「最高の人(クリシュナ)よ。そのブラフマンとは何ですか? アッデャートマ(自分自身の中心をなすもの)とは? カルマ(行い)とは? アディブータ(生き物たちの中心をなすもの)は何であると言うのですか? アディダイヴァ(神々の中心をなすもの)は何であると言うのですか? マドゥスーダナ(クリシュナ)よ。この体において誰がどのようにアディヤジニャ(儀式の中心をなすもの)であるのですか? そして、考えが安定

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マハーバーラタ/6-11.バガヴァッドギーター⑨~知識の王、秘密の王~

6-11.バガヴァッドギーター⑨~知識の王、秘密の王~ シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「さて、偏見や嫉妬のないあなたに、グッヒャタマジニャーナ(最も秘密にされている知識)をヴィジニャーナ(直の知識)と共に、詳しく解き明かそう。これを知ることであなたはアシュバ(不吉なもの、サムサーラ)から解放される。 これはラージャヴィッデャー(知識の王)であり、ラージャグッヒャ(秘密の王)であり、最も偉大な浄化であり、直接認識されるものであり、ダルマに反しないものであり、

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マハーバーラタ/6-12.バガヴァッドギーター⑩~神の栄光~

6-12.バガヴァッドギーター⑩~神の栄光~ シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。 「強力な武器の使い手(アルジュナ)よ。限りのないものを明かす『私』の言葉をもう一度聞きなさい。限りのないものを喜ぶあなたの為に説明しよう。 スラ達もマハーリシ(賢者)達も私の輝きを正確に知る人はいない。なぜなら私が彼らの源であるのだから。 限りのないイーシュワラである『私』のことを、アジャ(生まれないもの)、アナーディ(始まりのないもの)として知る人は、限りある命の中にいたとして

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