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美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすかった。|父が娘に語る経済の話。

みんな経済についてどのくらい理解しているだろうか。
高校の政治経済で習った人もいれば、大学で経済学まで学んだという人もいるだろう。

僕は高校の政治経済をセンター試験で受けて以来、「経済」というものを全く学ばなかった。
学部が人文社会学部という、何してんのかよくわかんない学部だったこともあるし、単純に興味もなかったからだ。

正直センター試験に関しては、経済について根本的なところが理解できていなくてもなんとなく溶けてしまう問題ばかりだった。
なので、僕は今まで、経済について何も理解していなかったのである。

でもさすがに、テレビのニュースで何言ってんのかよくわかんないのは怖いし、新聞読んで日本の経済を語ったらなんかかっこいいなって思ったので、僕は経済についての本を買った。

それがこれ、

父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

な、長い。長すぎる題名だ。
ちなみに原題は「Talking to My Daughter About the Economy. 」
映画や本のタイトルやポスターに余計なところを足してしまうのは日本人の悪い癖である。

まあそんなことは置いといて、僕がこの本を買おうと思った理由について話す。
それはひとつだけ。

なんか父が娘に語るって書いてあるから、すごい優しく噛み砕いてあるんじゃないの?

という期待からである。
以上だ。

そして喜ばしいことに、この本はちゃんといい本だった。お金は無駄にならなかった。

ではこの本の何が良かったのか、語っていこうと思うが、実はこの本のいいポイントはもうタイトルにあった。

「美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい」のである。

余計なところとか言ってすみませんでした。日本の出版社さん。
というわけで、一つずつ、この本の魅力を語っていこうと思う。

美しい

僕が想像していた経済の本というのは、お金の流れとかを図式化して、いろんなお堅い言葉が並んだ感じものだった。
だが、この本は経済について解説した本とは思えないほど、表現が美しい。

「私が地獄だ」
クリストファー・マーロウの有名な戯曲の中で、悪魔のメフィストフェレスは突然、主人公フォースタス博士の前に現れてそう答える。
フォースタスが、自分は地獄に送られたのかと聞いたことへの悪魔の答えがそれだった。「私の行く先が地獄なのだ」メフィストフェレスはそう説明した。(本文より)

さてこれはいったいなんの話をしているのだろう。
難解すぎる。自分もこの本を読んでいて突然この節が出てきてビビった。

翻訳者の方も苦労しただろう。

「あれ?私なんの本飜訳してるんだっけ?」  

ちなみにこの節は、借金の利子の話の冒頭である。わかるかぁ。

というようにこの本では、著者の豊かな教養により、経済の話がお伽話や、詩になぞらえて語られる。
一つの物語を読んでいるように、経済を理解することができるのだ。

深い

著者のヤニス・バルファキスさん(絶対噛む)は元々、ギリシャの経済危機時に、財務大臣を務めた人だ。
EUに債務帳消しを主張した張本人である。
そんなこともあって、著者の経済に対する造詣の深さは果てしない。
まさに学校では教えてくれない資本主義の本質を語ってくれる。この辺は僕が説明するよりも実際に本を読んで感じてほしい。
(まあ僕が説明するのだるいだけだけど。)

壮大

最初、僕は経済の本と聞いて、なんとなく歴史を最初にさらっとやって、大部分は現代の資本主義に関して詳しく説明してくれるのかなって思っていた。

だが、ヤニスさんはそんなあまっちょろくなかった。今から10000年前、人々がお金という概念を生み出すところの話からガッツリ話してくれる。

はじめ僕はなげぇなぁと思って読んでいたが、後々気付かされた。
経済の本質を理解するには、そこから遡らないとダメだ。
現代だけの理解に逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。

ここでこの本を読むときのコツをお勧めしよう。

小説のように読もう。

先程の話の通り、この本は著者が娘に向けて書いた本なので、わかりやすく噛み砕くために、たくさんの比喩表現が使われている。
というか、比喩表現の方が多い。
だからあまり必要な部分だけ読むというのはお勧めしない。
(個人的見解)

とんでもなくわかりやすい

これ最初題名についてて、著者が自分でつけたんだったら“とんでもなく”自信家だなと思ったが、邦題だけだった。

まあ先程の話を読んでわかったとは思うが、この本は文字通り、とんでもなくわかりやすい。経済の大筋をこんなに優しく、芸術的に解説している本は他にはないだろう。

また、先ほど話した比喩表現が巧みなのだ。
特に、起業家はタイムトラベラー、銀行はツアーガイドという表現はすごく納得した。
まあこの辺に関しても、実際に読んで理解してほしい。

まとめ

という感じで、「美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい」この本を語ってみた。
僕としてはすごく参考になったし、経済についてもっと学びたいと思った。
何より、無知のまま生きていくことの恐ろしさを知った。
せっかく休学しているのだから、もっと本を読んで教養を身につけていきたい。

ではまた!


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