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大学で環境分野を学んだ先輩に聞く!学びを着実に仕事へ活かす秘訣とは
「環境問題に興味があるけど、大学で学ぶってどんな感じなの?」
そんな疑問はありませんか?
今回お話を聞いたのは、滋賀県庁に勤務する中川健さんです。
高校生のころ、海外で訪れた自然公園の大スケールに胸を打たれたことが、その後の人生に大きな影響を与えたという中川さん。卒業した大学の卒業研究では公園管理をテーマに選択し、現在は自然公園関係の仕事に携わっています。
環境を専門に学び、社会人として活躍する中川さんに、大学生活のことや自分の興味を大学での研究にどう結びつけていったかを聞き、「学びをいかに社会で役立てるか」そのヒントを探ります。
大学選びの決め手は「仕事に直結することが学べそう」だったから
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——中川さんは2018年に滋賀県立大学の環境政策・計画学科を卒業し、現在は滋賀県庁で公務員として勤務されているそうですね。今のお仕事内容を教えてください。
琵琶湖環境部 自然環境保全課の自然公園・企画係で、自然公園関係の仕事を担当しています。
そもそも自然公園とは、自然を保護しつつ、人がリクリエーションを楽しむことができるように指定された公園のこと。滋賀県には、琵琶湖国定公園や鈴鹿国定公園など、5つの自然公園があります。
自然公園は、「自然公園法」という法律で管理されているので、建物ひとつ建てるにも許可が必要です。公園内に土地を持つ個人や業者とやりとりして、許認可を出すのが私の仕事です。また、自然公園は市民や専門家などで作る審議会で管理の方針を決めています。私は、この審議会の事務局も務めています。
——公務員として働きたいと思ったきっかけは何だったのでしょう。
両親が公立の小学校の先生なんです。なので、私自身も将来は公務員として働くイメージを持っていました。
——行政関係の仕事を目指していた中川さんが、滋賀県立大学の環境政策・計画学科を選んだのはなぜですか?
国公立大学だったからとか、実家から通える距離にあったからとか、いろいろ理由はあるのですが、一番は環境行政を学びたかったからです。単に環境そのものを専門にする学科はありますが、ごみ問題や自然保護、生活環境の保全などを広く学べる大学はそう多くないのではという印象を受けまして。仕事にもうまく結びつきそうだと感じたので入学を決めました。
研究が卒業後の進路をイメージするきっかけに
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——中川さんが取り組んだ卒業論文の内容について教えてください。
私の研究テーマは、「自然公園における自治体を中心とした協力金制度導入に関する研究」です。「協力金」とは、植物の保全などの維持管理を目的に、公園を利用する人から任意で集めるお金のこと。滋賀県など、自然公園の運営に協力金制度を導入している自治体の実施状況や、集めたお金を各自治体がどのように使っているかなどを調べました。
——先ほど、滋賀県立大を選んだのは環境行政を学ぶためと伺いましたが、中でも自然公園をテーマに選んだのはなぜですか?
もともと関心があったからです。きっかけは高校の研修旅行で訪れたアメリカのヨセミテ国立公園でした。東京都の約1.4倍もの面積がある広大な場所で、日本にはないような規模の手つかずの大自然に触れ、大きな衝撃を受けたんです。
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その体験が忘れられず、公園管理を研究テーマにできないかと考え、滋賀県立大学で環境政策を研究する上河原献二教授に相談に行ったところ、「2015年から本格導入された伊吹山入山協力金をどううまく使っていくか、そもそも集まった金額が自然を守るのに十分かという課題がある」と聞きました。
滋賀県の最高峰「伊吹山」は日本百名山のひとつで、国内でもここにしか生えていない珍しい植物が多数見られる山です。「伊吹山の課題解決の足掛かりになるように、全国の自治体の協力金導入の現場について調べてみたら?」とアドバイスをもらって興味を持ち、上河原先生の研究室に配属になったんです。
——研究室配属とは、そんな流れで進むんですね。
滋賀県立大学は3年生の6月に配属が決まるのですが、その時期になるとみんな自分の興味に合った研究をしている先生に相談に行っていましたね。何もやりたいことが見つからないという人は、先生に具体的なアドバイスをもらったり、先輩の研究テーマを引き継いだりと、いろんなパターンがあるようでした。配属後は、決まったテーマで研究を進めて卒業論文を書き、4年生の最後に成果を発表するという流れです。
——研究はどのように進めましたか?
自然公園の運営に協力金制度を導入している、全国7つの自治体にアンケートを取りました。1回あたりの徴収金額、協力者数、徴収総額、お金の使途、そもそもなぜ強制徴収ではなく任意の協力金としているのかなどを聞き取る内容でした。質問項目は先生にもアドバイスをもらいながら決めました。
——実際に足を運んだ場所もあるのでしょうか?
滋賀県の職員や、伊吹山がある米原市の職員さんに協力金制度についてインタビューを行いました。
「伊吹山を守る自然再生協議会」という協議会を何度か傍聴しにも行きました。環境生態学科の野間先生が協議会の顧問をされているということで、一緒に連れて行ってもらったんです。
——ほかの学科との連携もあるんですね。ご自身の研究は、今の仕事のどんな部分に活きていると感じますか?
インタビューや協議会の傍聴を通して、働く現場を垣間見れたのは大きかったと感じています。
正直、自然公園関係の仕事をしているとはいえ、卒業論文の内容がそのまま役立っているかというとそういうわけではないんです。現場に入ってみて初めてわかることもあるので、常に学ぶことばかりです。それでも、実際に職員さんとお話しする中で仕事ぶりを知れたことはとても勉強になりましたし、自分の将来をイメージする上ですごくプラスになったなと感じています。
着実に「今」につながる充実した学生生活
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——滋賀県立大学は、就職後も役立つ授業が多いと聞いたのですが、印象に残っているものはありますか?
「ファシリテーション技法・演習」で学んだことは、今の仕事に活かせていると感じます。会議などをスムーズに進め、話をうまくまとめるための技法を学ぶ授業です。6人ずつのグループに分かれて司会進行をするファシリテーターを1人決め、テーマに沿って1時間くらい話しあうんです。
——具体的には、どんなことが学べるのでしょう。
発言しやすい雰囲気づくりや、参加者の思いを聞き出し深掘りするコツ、引き出した意見をうまく整理し、対立する二者を合意に導く方法など……。一見難しく聞こえるのですが、「今日は場を整える練習をしよう」など、毎回設定されている目標が明確で、着実にステップアップすることができました。
話すテーマも「滋賀県立大学の魅力は?」とか、「今話題のAIについてどう思う?」など、身近なものばかり。みんな気軽に参加していて、社会に出ても役立つスキルを楽しみながら身に付けられる印象でした。
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——授業以外のことも教えてください!クラブ活動やサークル活動はされていましたか?
Big×Bandというジャズバンド部に所属していました。このクラブは、とても積極的に活動をしているんです。学園祭にステージ出演したり、他の音楽系クラブと合同でライブを開催したり、地元のお祭りに呼んでもらったりと、一年を通してイベントが目白押しでした。担当はドラムで、3年生のときには部長も務めました。
——研究にクラブ活動に、忙しい日々を過ごされていたんですね。両立は大変ではなかったですか?
どちらも好きなことではあるので、特に苦には感じませんでした。小さいころからピアノを習っていたこともあって、音楽が好きなんですよ。今も滋賀県庁の軽音サークルに入っていて、定期的にライブを開催しています。
進路選択を控えた高校生へメッセージ
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——中川さんが思う、滋賀県立大学のおすすめポイントを教えてください。
落ち着いている学生が多いところ。あとは、自然豊かなところです。山が近くて琵琶湖もあるという、好条件が揃った滋賀県で環境について学べることは、この大学の大きな強みだと思うんです。
——確かに、なかなか他大学にはない恵まれた土地ですよね。
最後に、環境を学びたい高校生のみなさんに向けてメッセージをお願いします!
卒業してもうすぐ6年が経ちますが、この大学を選んで本当によかったなと感じています。山や水辺を身近に感じながら環境について学んだ経験は、どんな就職先を選んでも必ず役立つと思います。滋賀県立大学を、進路選択のひとつに加えてもらえたらうれしいです!