見出し画像

本当は、ぜんぶ優しさだったんだ。 〜漫画『町田くんの世界』を通して〜


なんだか元気がない日が続いている

ここ2ヶ月ほどで、ズーンと気や体調が落ちてしまった。

大学から始まって、社会人で壁にぶち当たって、そしてまた2回目の壁に来てしまい、ここでやっと”落ちる”周期がわかってきた。
1月から予兆が見え始めて、だんだんと来て3月にピークが来る。そして、2年ごとに。引越しとか、異動とか、他の要因もあるかもしれないけれど、
季節的なものが引き金となっていることは間違いなさそうだ。そこから、他の要因でストレスが膨らんでいってズーンときてしまう。

3月中は、あまり会社に行けていない。どうしても、会社に行くのが怖いと感じてしまう。

特に、上司とお局さんの存在にビクビクしていた。「あの人たちはなんで腫れ物みたいに私のことを扱うのだろうか、どうせ影では悪口言ってる」という思い込みばかりで視野が狭くなり、どうにかこうにかして会社に行っても、人の目が気になって余計人間のことが怖くなってしまう。

でも、実際そんなことなくて「まずは、君の体調が優先だよ」と言ってくれている。それについても「どうしてこんな精神状態の時に、決断を迫るんだ、意地悪だ」と子供のように斜に構えてしまう。

そして、何をするのもめんどくさくなり、1日中引きこもって動画をエンドレスで観たり、動いてもたまにご飯を作るくらいで、ほとんど飲まず食わずでベッドの上にいる。自分でもわかっている、全くもって不健全だと。

*****

『町田くんの世界』と言うマンガ

話は少し変わって、私は意外と漫画好きだ。いつも携帯の電子マンガで無料のを読んだり、気になる作品やいつも読んでいる作品は購入したりしている。例のごとくベッドの上でダラダラしている際に、「町田くんの世界」という漫画を見つけた。

冒頭部分のお試しを読んでみると、日常の中で関わる人たちとの出来事を通して、町田くんの人柄を感じられる作品で、派手さはないけど、柔らかい印象を受けた。続きが気になったので検索してみた。

すると、映画化がされていて、今年の6月には公開されるとのことだった。しかも監督は石井裕也監督。これはなんと!と胸が弾んだ。石井監督の作品は好きで、最近のものは結構みている。(本当はやや不純な動機があるけれど、それは後ほど)

石井監督の世界観とマッチする作品、ということはこの漫画は間違い無いだろうと、電子マンガを早速購入して、1〜7巻を一気に読み切ってしまった。そして、この落ち込みを救って言葉も見つかった。そして主人公の町田くんは、どことなく私に似ていると思った。

*****

あらすじ

町田くんは、”とにかく優しい人”だ。8人家族の長男で兄弟からは帰って来るなり「お兄ちゃーん!」と飛びつかれるほど慕われている。それは、町田くんがいつも兄弟に対して、失敗してもいいところを褒めてくれたり、誰も気がつかない些細な貢献もちゃんと見てくれて褒めてくれるからだ。

学校でも、女子も男子もみんなに好かれていて、それは町田くんの言動が知ってる人知らない人関係なく、心から優しく、純粋な気持ちでいつも気にかけてくれて、そして誰に対しても平等だからだ。同様に街の人からも好かれていて、けれど人気者という感じではなく「めちゃくちゃ顔の広い好青年」という立ち位置で、周囲を和ませている。

町田くんは冴えない見た目の地味メガネ男子なのだけれど、優しすぎるが故にたまにモテてしまう。魅力しかない主人公なのである。

「みんな家族だと思って愛する」「やっぱり世界は美しい」と心から思ってしまえる、町田くんはあまりに眩しすぎる。でもそんな人はこの世にはいない、過剰な表現だ、とは全く思わなかった。

刺さったシーン(号泣した)

途中で、サラリーマンの青年が「この世界は悪意に満ちている」と嘆くシーンがある。なぜみんな影では悪口を言ったり、思いやりを持てなかったり、することに居心地の悪さを感じている。そんなところで、町田くんの存在を通勤の電車で知る。町田くんを観察していると、突然一緒にいた美少女が泣いて電車を降りてしまった。それに動揺を見せるも、自然とおばあさんに席を譲った。その姿を見て、サラリーマンは、

”他人の思いやりのなさに失望していた けど 俺自身に思いやりはあったか?”

と自問する。自分こそ思いやりを持てていなかったことに気づいた。そのシーンがいまの私の状況に似ていて、ストンと落ちてきた。

*****

読んで気づいた、周りのみんなの優しさ

私は、どうしても人の悪口や、文句を言うのだけの人がいる空間が苦手で自分が言われてるわけでなくても、息苦しくなってしまう。みんな悪い人なのかな、とかずる賢く無いと人間関係をうまく気づけなかいのでは無いかと、不器用な自分を責めてしまうところがあった。大人になると悪意ばっかりだ、と。

でも、それは違う。本当はみんなとても優しくしてくれて、それはみんな本当は優しいからだし、私もちゃんとまわりに優しく接してきたからだと、町田くんに気付かされた。

会社を休んでいる間、twitterを見て連絡をくれる友達、グループのメッセージで「無理しなくていいよ!」と言ってくれる友達がいる。

会社のひとも「一緒に飯行こうよ!」「会社これなさそうだったら、郵送しようか?」と連絡をくれたり、くれなかったり。
連絡をくれて、優しい言葉をかけてくれる人も、あえて連絡をせずにそっとしておいてくれるのも、全部平等な優しさだった。

本気で連絡をしてこないのは、「どうでもいい」「お前なんかいらない」って思っているからだと勝手に思い込んでいた。どうせ会社の人なんて深い仲には慣れないし、興味もないし、と本当は気にかけて欲しいのに、遠ざけることで自分の気持ちを守ることにいっぱいになっていた。大切なことを忘れていたのは、私の方だった。

そして、今日家に帰ると友達のデザイナーさんの古本さんから、貸していた本が届いていた。手紙には「退職おめでとう!さきちゃんはこれからまくいくと思うから、勝手に応援しています。」ととても優しい言葉をもらった。

知り合った年月はまだ短く、実際にあったのも2回ほどだけれど、大好きな人でメッセージをくれたり、Twitterでしょうもないやり取りをしたり、距離はとっても近くに感じる。

私は友達がいっぱいいて、別に頭も良く無いし、肩書きもないし、可愛くはないし、なんでこんなに友達がいるのだろうと思っていた。けど、それは町田くんと同じようにみんなに優しく誠実に接せられていたからなのだと思う。もう、そう言うことにしたい。

このところ社会は優しくない、私がしょぼいから見放されちゃうんだ、と悲観的になって自分を責めて、周りの優しさにも全然気づけていなくて、そして優しさを返せていなくて、本当に浅はかだったなと思う。

「いつもの明るい咲ちゃん」にすぐには戻れないかもしれないけれど、町田くんと出会えたことで、私の世界は美しく、そして人に優しくなれそうだ。誰かを責めて、殻に閉じこもってしまう時は、またこの漫画を読んで気持ちを思い出したい。

*****

勝手に映画化おしらせ

映画が公開されたら、必ず見にいこうと思います。超絶新人が主演らしいですが、脇は豪華です。なんせ愛しの池松壮亮氏がいますからね(ハート)※石井監督作品が好きな、不純な動機とは「池松くんが出てる率が高い」からでした。だから池松くんファン歴もそろそろ10年目に突入です。


この記事が参加している募集

頂いたサポートは、おいしいゴハンに使わせていただきます。