では、ベイトソンの世界観はいったいどのような点でこれまでのものと異なるのかを見ておきたい。それは、バーマンによる次のサイバネティクスによる認識論の定式化によって簡潔にまとめられている。
サイバネティクスによる認識論の定式化
バーマンはさらに「ベイトソンの世界観に内在する倫理観がもっとも明確に現れるのは、ベイトソンが自分の認識論を生物に適用するときである」と述べ、以下のような直接に倫理観にかかわる4つのテーマを掲げている。
さらにバーマンは環境へのかかわりについても次のように書いている。
ここでのバーマンの説明は、外見的には環境問題へのアプローチとして同じように見えても、その意識がデカルト的な二元論的世界観の場合にはサイバネティクス的本質が見えなくなって「暴走」に走り、環境問題の解決にはならないと指摘しているのである。なぜなら、「西洋の個人主義は<精神>をはじめから混同してしまっている」からだというのだ。
バーマンは(3)の「耽溺と順化は生理学的に見て根本的に異なっている」の説明では、時代をとらえて次のような見解をあげている。
現在、私たちが時代のなかで見たり(あるいは行っている)全体論的思考の出現が、「自己修復的フィードバックの大きなプロセスのひとつの現れ」かもしれないというバーマンの考え方は、まさにベイトソン的であるといえるだろう。