本選びって難しいよね
『本屋大賞』
『このミステリーがすごい大賞』
『芥川賞』
私は、年に片手で数えられるくらいの数冊は目を通す、といった、いかにも普通な人間で、決して、読書家ではない。
だからこそ、大賞という言葉に惹かれてしまう。
本の表紙を見て、帯を見て、大賞受賞など、何かしらの賞の功績が書かれている本を見ると、ただ安直にこれは多くの人が評価して、おそらく万人受けする本だから面白いに違いない、と思う。
加えて、著名人による一言や、あなたは絶対ラストで涙する、ラストのどんでん返しがすごい!などという謳い文句があると、その小説にものすごい期待を寄せてしまう。
そして地雷を踏んで、後悔することが多い。
例えば、いつかの本屋大賞に選ばれていた、辻村深月さんの『かがみの孤城』という作品。
正直、私には全く刺さらなかった。まず、とても長い。ほんとに長かった。私が今まで読んだ中で最も長かったといってもいい。重要ではないシーンも多かった。
加えて、伏線はかなりわかりやすくなっており、この女性っておそらくあのひとなんだろうな、この鏡の中の子たちはここがズレてるんだろうな、ということが序盤のうちに予想できてしまう。
いじめと主人公の心情表現が素晴らしいと知人に絶賛されていたが、いじめ方や動機があまりにも幼稚だと感じた。また、中途半端だと感じる場面も多かった。単純にいじめ、という暗いテーマが自分に合ってなかったのもある。
主人公の心の心情は詳しく描写されていたと思うがそれ以外の登場人物の心情はサラーっと流されてしまっていたように思う。私はどの登場人物にもあまり感情移入ができない作品だった。
最後のエピローグに関しては、これ要る?!みたいな感じだった。
重いテーマが好きなには刺さるのかもしれないが、私ってそういえば、重い話とか、長い話とか、全然好きじゃないよな、って思い出した。
次に、このミステリーがすごい大賞に選ばれていた『方舟』という作品。
心底胸糞が悪かった。時間が限られている中で、生贄を探すために、犯人を見つける暗ーい雰囲気にまずテンションが落ちた。どこまでいっても暗い。ちょっと希望を見せてまた落とす。暗すぎる。普通に病みますこれ。最後の展開に驚きはしたものの、正直、暗すぎて読んでられなかった。
暗いけれど、ミステリーとしては面白いのかもしれない。しかし私ってそもそも暗い話嫌いだしな。さらに言えば、ミステリーも苦手だしなって思った。まじでなんで読んだんだろうこれ。
そして芥川賞に選ばれていた『おいしいごはんが食べられますように』も読んだことがある。
表紙がかわいかったので、ほんわかしてるストーリーを期待して読んだ作品。思ってたのと全然違った。ものすごい後味が悪い。ものすごくイライラする。登場人物の誰一人として好きな人がいない。芦田さんに対する批判の気持ちをわかるけれど、私は、なによりも、特に、主人公が中途半端で、思考回路が気持ち悪いと感じてしまった。
私は食べることに喜びを感じるタイプだ。友だちと二人で食事に行くときも、話すことよりも食べることを目的で行く。だからこそ、主人公の行動や気持ちにかなりの嫌悪感を覚えてしまった。文章は読みやすかったとは思う。
これもはじめにレビューを見ておけば読まなかっただろうな。絶妙にずっと気持ち悪い空気感がほんとに嫌だった。かなりの地雷。
私が好きな本は、単調で、比喩的でありながら、考えさせられる本、文章自体が、表現が、美しいと感じる本。また、面白い視点で物事を捉えた本、思ったことを素直に書いた本、優しい本である。
この傾向からも読み取れるように暗い話、重い話、ミステリーなんてものは基本向かない人間だ。
具体例を挙げるなら、
サン=テグジュペリ『星の王子さま』
オーストラリアの児童書である『なまけものの王様とかしこい王女の話』
オードリー若林『ナナメの夕暮れ』『カバーニャ要塞の野良犬』
石井好子『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』
夏目漱石『夢十夜』
基本的に、本は借りて読むが、これらの作品は、自分の本棚に並べるくらいには好きだ。
冷静に考えれば、そりゃあ、暗い話なんて合わないよな、である。
大賞に選ばれていてもやっぱりあらすじを見てから、自分の好きな作品傾向と合ってるかどうか確かめるべきだな、と心底感じた。