踏み出せば何かが変わる/社会人10年目の春に
この春、社会人歴が10年目に入った。よく続いたなという気もするし、まだまだ先は長いなと、これから先の未来を考えると若干の気疲れもおぼえる。この10年、いろいろなことがあり過ぎた。学生時代に漠然と予想していたことも、予想を超えていたことも、どちらもたくさんあった。
自分の場合、社会人としてスタートした環境を離れ、新たな環境に身を置いたことがこの10年の大きな決断だった。変化は常にリスクと隣り合わせ。前向きに変化していきたいが、悪い方向に転ぶのではないかという怖さや不安もつきまとう。しかし、一歩踏み出してよかったと思っている。それまでの環境では見えなかった景色が見えたし、出会えなかった人たちと出会うことができた。
故郷にUターン就職した当時の自分には、その10年後いまの土地で、いまの会社で働いている自分の姿はまったく見えていなかった。次の10年で何が起こるのかわからないが、心身ともに健康で10年後を迎えられたら、それだけで十分なのかもしれない。
10年目を迎えた横浜ⅮeNAベイスターズ
社会人として過ごした時間を思い返すうちに、自分の身近なものでもうひとつ、10年目に入ったものがあることに気付いた。応援しているプロ野球球団・横浜DeNAベイスターズ。IT企業ⅮeNAが旧運営会社からベイスターズ球団を買い取り、新生ベイスターズが誕生してから10年目になる。
今シーズンから球団生え抜きレジェンドの三浦大輔氏が新監督に就任し、いままさに大きな変化を起こさんとしている。残念ながら開幕から2度の引き分けを挟んで6連敗を喫し、順風満帆な船出とはいかなかった。新たな挑戦をするためには、うまくいかないことだってある。それが開幕0勝6敗2分けというここまでの戦績に表れているような気もする。
3年ほど前に刊行された三浦監督の著作に、『踏み出せば何かが変わる』という本がある。現役時代の回顧や、引退後の野球解説者経験を通じて得られた知見などについて書かれている。タイトルは本書が訴えるメッセージそのもの。「迷ったらまず始めてみよう、一歩目を踏み出してみよう」との激励であり、三浦監督本人がその言葉で自らを鼓舞しているようでもある。
ベイスターズはかつて長く低迷していた。私自身はDeNAベイスターズになってからのファンなので、その時期のことは伝聞でしか知らない。ただその時期、ニュース番組のスポーツコーナーで、ベイスターズの順位はだいたい低い位置だった記憶はある。
そうした低迷期を経て、10年前に新たな球団へと変化し、そして集客やPRの面で球団が努力した。人気が出るに従って選手たちの意識も徐々に変わり、練習の成果が成績にも表れ、最近は上位争いもできるチームになった。三浦監督は2016年に現役を引退するまで、長い低迷とその後の大きな変化を自ら体験してきた。ベイスターズは10年前に一歩目を踏み出し、前向きに変わってきた。
監督に就任したいま、タイトルの「踏み出せば何かが変わる」は、三浦監督が自分自身に言い聞かせているようにも思える。昨シーズン終了後に投打の主力がFAで巨人に移籍。コロナ禍もあり、チームのここ数年の躍進を支えた外国人選手たちはいまだに合流できていない。エース格の投手が負傷のため複数離脱している。逆境を数え上げればきりがない。
しかし、すでに一歩は踏み出した。最初はうまくいかなかったとしても、状況は必ず好転する。監督自身もそう信じて采配を振るっているのではないか――そんなことを想像する。
この文章の趣旨には全く関係ないが、昨日友人たちと散歩をした。青空が気持ちよく、とても穏やかな休日を過ごせた。人と会う理由として散歩が有力な選択肢になったことは、コロナ禍における前向きな変化のひとつかもしれない。
踏み出してから分かるもの
"迷っているならば、まずは一歩目を踏み出してみろと言いたい。踏み出してから分かるもののほうが多い。自分に合うもの、合わないものがあったとしても、それは経験としてのちに生きてくる。合わないからといって捨てるのではなく、「こういう方法もあるんだ」と自分の中に仕舞っておく。いろいろな方法を知っていれば、次に迷った時に開ける引き出しにもなるからだ。引き出しはたくさんあったほうがいい。”
『踏み出せば何かが変わる』のまえがきには、上記のような文章がある。監督自身がいま、「踏み出してから分かるもの」を痛烈に感じているのだろう。開幕0勝6敗2分けは、変化のため避けられない痛みなのかもしれない。その先に明るい未来が待っているなら、その経験は前向きな変化のためのものだったと納得できる思い出になるはずだ。
自分もまた、社会人10年目の春は変化の春になりそうだ。ご縁があり、本業やプライベートの活動とはまた別に、新しいことに挑戦させてもらえることになった。当たり前だが不安もある。開幕0勝6敗2分けは避けたいが、慣れるまではうまくいかないかもしれない。
それでも「踏み出せば何かが変わる」と願いながら、前向きに挑戦したい。とても面白そうなことでもあるし。後から振り返ったときに「いい経験だった」と思えるものにできればいい。
ここまで書き進めたところでスポーツニュースのサイトをのぞいたところ、ベイスターズ開幕9戦目にして初勝利の速報が目に入った。ようやく三浦監督のもとに白星が届いた。「変化のため避けられない痛みなのかもしれない」とか書いておいてなんだが、正直ほっとした。若手の阪口投手を先発に起用し、見事1軍初勝利。変化を象徴するような白星、という気もする。明日は久しぶりにスポーツ紙を購入しよう。
まだ故郷で働いていた3年前の秋、私事で上京した際にベイスターズの本拠地・横浜スタジアムへ応援に行ったことがある。コロナ禍もありなかなか難しいかもしれないが、今シーズンはできれば球場まで直接応援に行きたい。前向きな変化を遂げた新たなベイスターズを目にするのが、いまからとても楽しみだ。
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