詩の英訳とことばについて
湧き上がってくる内面のざわつきを形にしようとして詩を描きます。私の持っている表現の方法が言葉しかないためです。普段何気なく使っている言葉は、話すにしても書くにしても内側の目に見えないものに実体を与えてくれます。ですが、言葉の枠組みから漏れてしまっている部分も常に在ります。漏れてしまったものは外側に出ていくことはなく行き場をなくし留まります。留まり続けているなにかは、気づくか気づかないかは別にして、永遠に自分の中に残り続けるのかもしれない。もしかしたら言葉以外の形を欲しているのかもしれない。誰しも同じだと思います。だから表現というものの方法や粒度はさまざまあって、どれも表象を経過した、もともとは見えなかったものを持っています。表現が叶えられるとき、人は人として生きていることの喜びを感じるように思います。
言葉であっても種類はさまざまです。世界には7,000くらいの言語があるようです。もし、表現の方法は同じでも言語が変われば違ったものが見えてくるはずなので、私は日本語の詩を英訳してみます。内容が変わらなくても、日本語の柔らかさが少し消えて、より写実的になるように感じます。どれもそうなるとは思いませんが、今回はそのように感じました。他の言語でもニュアンスの違いを表現できるようになったら試してみたいです。
他の言葉が理解できるようになると、表現の側ではなく、知覚にも変化があります。全く違う意味を同時に表す言葉がある場合や、ある対象を限定して示す特定の単語を有さない場合などがあるため、ものごとへの知覚の粒度がずれたりするようです。そして、そんな曖昧な言葉が「美しさ」を生み出すということの不思議に魅了されてしまいます。言葉というものをもっと深く感じることができるようになりたいと感じます。
英訳した詩を紹介します
noteに投稿したいくつかの詩を英訳しております
Poem "Wavering Silence"
The scent of lilies
rides the air
swimming before me
The blue of the sea
becomes the air
dancing above me
The taste of strawberries
wraps the air
hopping within me
The flicker of that day,
The bounce of today
The light of the stars
cuts through the air
freezing my time
Someday I will become air,
riding the wind,
with swaying,
On the waves of non-colored silence
becoming one with life
ゆりの香りは
空気にのって
わたしの前で泳いでる
海の青さは
空気になって
わたしの上を踊ってる
いちごの味は
空気をつつみ
わたしの内で弾んでる
あの日の揺らめき
今日の弾み
星の光は
空気をきって
わたしの時間を凍らせる
いつかわたしは
空気になって
風にのって
揺らぎながら
無色な沈黙の波の上
いのちの一つになってるの
Poem "White Swan"
listening to the sound of waves by the lakeside
the clear, cold water
gently wraps the sunlight,
quietly delivers to me
the trees embrace the cool air
standing still in the jade-like tranquility
when I sleep in the cradle of glitter
a faint breeze brushes my skin
whispering to the forget-me-not-colored dreams
hearing the faraway swan in my beatitude
into the virtuous sky,
carried by the ephemeral white,
I want to dissolve
the boundless, wounded by the distortion of dull glass shards
the graceful amber’s flight bids adieu to elegance
湖畔で聴いてた波の音
透き通る冷たい水は
陽の光をそっと丸めて
静かにわたしに
届けてくれる
木々は涼やかな空気を
抱きしめて
翡翠の静粛に
佇立していた
きらめきの揺りかごに
ねむるとき
仄かな風が
肌をかすめて
勿忘草色の夢に
ささやきかける
悠遠の白鳥を聴く
わたしの恍惚
無垢な空を
ひたすらに
泡沫の白に
のせて
溶け去ってしまいたい
愚鈍なガラス片の歪曲に
傷ついた無辺
嫋やかな琥珀たちの飛翔が
婉麗の訣別を告げていた
Poem "Lotus Flowers"
On the surface of the water reflecting silence
lotus flowers stand in a row
particles of sunlight, cloaked in the fragrance of purity
embrace my body
rigid yet tender
warm and sacred
evaporating into the pink flicker
the flower’s eyes
my roots
a tranquil spiral weaved
clouds are gliding
into which disappearing
embracing the fragments of light warmth
静謐を映した水面に
蓮の華が並んでいる
陽光の粒は純潔の香りを纏い
わたしの身体を抱き上げる
厳格でやわらかい
あたたかく神聖
桃色の明滅に揮発する
華の瞳と
わたしの根
織り成す森閑の螺旋を
滑空する雲に
消えていく
軽やかなぬくもりの破片を
抱きしめながら
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