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今年よく読んだ3冊
noteで「年末年始連続投稿チャレンジ」みたいな企画をやってるので、日々の生存確認を含めてトライしております。
今回は #今年のベスト本 というお題に挑んでみました。
実を言うと、今年の読書状況はかつてないほど寂しいものでした。
多忙が続いたこともありますが、最寄りの駅ビルから書店が撤退してしまい、新刊は立ち読みすらしなかったのが最大の要因です。
今回紹介するのは、iTunesで購入した電子書籍、または本棚から発掘して久々に読み直した3作となります。
『48億の妄想』筒井康隆
1965年、あの筒井康隆さんが初めて手がけた中長編小説です。
街の至るところに「テレビ・アイ」なるカメラが設置され、国民がそこに映ることを意識して生活を送るというもので、当時としては近未来SFと言える世界観です。
作詞家のサエキけんぞうさんが著書で紹介していたので、大学時代に購入して何度もリピ読みした愛読書でした。
テレビ・アイのアウトプットは、本書では「テレビ放送」でしたが、58年経った現実社会ではそれが「SNS」に変わっています。
ドライブレコーダーに捕獲されるマナー違反者、逃走中に防犯カメラに映る容疑者はもちろん、フェイスブックやインスタグラムでのリア充アピール、バカッター騒ぎ、ウケたくて備え付けの醤油を舐めてみる底辺さんに至るまで、「映え」の意識に浸る人間どもの姿態を見事に予測しています。
そのSNSは、当時のテレビほど権威もなく、お手軽かつお気楽なツールとして利用されており、その簡便さゆえに、前述の痴態が世に放たれています。
しかし、地上波もネトフリもアマプラもようつべも横並びの「コネクテッドTV」普及によって、政治的発言を繰り返すユーチューバーを、高齢者が「テレビに出ている専門家」と勘違いしてすっかり信じ込むという、悪夢のような社会問題も勃発しています。
奇しくも今年最初の投稿では、そんなことにも触れております。
令和になって本書を読み直すと「こりゃ和製トランプの爆誕待ったなしだな」と、うすら寒い読後感が得られました。こわいこわい。
『人の波に乗らない 笑ってる場合かヒゲ 』藤村忠寿
今年の新刊も一冊紹介しておきます。
HTB北海道テレビ放送の名物ディレクターで、俺たちの愛知県出身・藤村忠寿さんによる『笑ってる場合かヒゲ』シリーズの第3巻。
朝日新聞北海道版に連載されているエッセイをまとめたもので、ひとつのテーマが4ページほどと読みやすいのがありがたいです。
『水曜どうでしょう』時代のエピソードはもちろん、50代半ばの生き方や考え方が書かれており、4歳ほど年下の自分にとっても、人生訓として、コンテンツ論として我が事のように頷けます。
とりわけ本書はコロナ禍の時期に執筆されたものがほとんどで、赤平での野鳥観察など、真似はできなくとも「そんな生き方もいいなあ」と興味深く読みました。
『どうでしょう』はレギュラー放送終了からすでに20年以上経っており、先日配信された最新作ではかつての無茶無謀な企画性は消え、ハプニングに対する軍団の悲喜こもごもや会話の緩急を楽しむものとなっています。
本書にはそのうち「緩やかさ」のベースとなる、無理せずに楽しむ生き方が描かれています。
『タイタニックは沈められた』ロビン・ガーディナー ダン・ヴァン・ダ−ヴァット
僕は「失敗事例」というやつが大好物で、とりわけ企業案件では同じ轍を踏まないよう読むたび肝に銘じております。
世界に数多ある失敗事例の中でも、最高の古典と言えるのが1912年の「タイタニック号沈没事故」でしょう。
本作は、ジージャンズの星⭐️ジェームズ・キャメロン監督『タイタニック』(1997)公開前後に発売されたタイタニック本のひとつで、10回以上リピ読みしています。
この夏、本棚の奥から25年ぶりに発掘、たちまち2回転するほど面白かったので挙げてみます。
本書では造船時と最後の出航に起こったことが集中的に網羅されているため、沈没に至った理由を察することができ、関連書籍では抜群の読みやすさを誇ります。
誰かが仕向けたとしか思えないようなハプニングが、偶発的に同時多発したこと、さらにそれぞれの関係者が、異変について深く考えなかったことが手に取るように伝わってきます。
タイトルのように誰かが書いたシナリオによって沈没したわけではなく、「運のなさがマジハンパなかった」とほろ苦い読後感が残りますが、一方で関係者の誰かが「これ、ヤバくないスか?」と口にしていたら未然に防ぐことができたはずです。
年末に発覚したダイハツの不祥事で、トヨタ会長の豊田章男さんがTPS(トヨタ生産方式)の「アンドン」について語っておられました。
アンドンには「間違ったことがあれば立ち止まる」ことも含まれており、同じグループのダイハツではそれが機能してなかったから頼むよひとつ、という談話です。
このアンドンがしっかり機能している前提であれば、逆にほとんどのメーカーにその発想はなかったわけで、この考えがものづくりや企業理念すべてに行き渡らない限り、世界から「失敗事例」はなくならないということになります。
僕のような物好きのニーズが満たされるようじゃいけませんよね。
ということで、書き進めてからどの本も、2023年以降の道標となるものばかりだったよね、と強引にまとめたところで、宴もたけなわではございますが、これにてお開きといたします。
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