見出し画像

源孝志が縦横に張り巡らせた戯曲と蓬莱竜太の大胆な演出によって時を超えて結びついた江戸歌舞伎の改革児中村仲蔵と、現代演劇の申し子藤原竜也の2つの役者の魂は激しくスパークし、舞台の深淵を私たちに感じさせてくれた…★劇評★【舞台=中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~(2024)】

 新聞記者時代に3年以上の長きにわたって毎月、蜷川幸雄さんにインタビューをさせてもらっていた時、自らが見出したと言われている藤原竜也に話が及んだことがある。たまたま同時期に藤原にもインタビューの機会を得た私は2人がそのころどんな凄まじいやり取りをしたのかを図らずも聞くことになった。詳細は控えるが、蜷川さんは藤原を徹底的に厳しく指導した。藤原は何度もくじけそうになりながら食らいついた。蜷川さんは藤原が持つ天性の才能を認めながらも徹底的に千尋の谷(千仞之谿、極めて深い谷のこと)へと突き落としたのだ。そこから這い上がる力こそ、蜷川さんが求めていたものだった。江戸時代に最下級の役者階級から三座の座頭にまで出世した歌舞伎役者、中村仲蔵の一代記を舞台化した「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」で藤原が演じる仲蔵はまさに逆境を這い上がる役者の権化。「現代演劇の申し子」と言われるまでに成長した藤原の姿は、まさしく仲蔵と二重写しになって、壮絶な凄みを感じさせるものだった。「京都人の密かな愉しみ」などで知られる源孝志が縦横に張り巡らせた戯曲と進境著しい気鋭の演出家・劇作家、蓬莱竜太の大胆な演出によって時を超えて結びついた二つの役者の魂は何度も激しくスパークし、舞台という場所の深淵を私たちに感じさせてくれた。(写真は舞台「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」とは関係ありません。単なるイメージです)。

 舞台「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」は2024年2月6~25日に東京・池袋の東京建物Brillia HALLで、2月29日~3月1日に広島市の広島文化学園HBGホールで、3月7~10日に名古屋市の御園座で、3月15~17日に仙台市の東京エレクトロンホール宮城で、3月22~24日に福岡市のキャナルシティ劇場で、3月27~31日に大阪市のSkyシアターMBSで上演される。
 
★序文は阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログにのみ掲載しています

★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含めた劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。藤原竜也さん、市原隼人さん、池田成志さんら俳優陣の演技に対する批評、源孝志さんの戯曲や蓬莱竜太さんの演出・舞台表現に対する評価などが掲載されています。場合によっては、特定のスタッフワークについて言及することもあります。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」公式サイト

ここから先は

5,471字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?