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ミステリアスな物語展開をエンターテインメント性たっぷりに描き出すカンパニーとしての充実ぶりがあふれる仕上がり…★劇評★【ミュージカル=SUNDAY(2018)】

 日常の中に現れたふとした裂け目から異世界に迷い込んだ主人公が、本当の自分、そして人生の本当の意味に気付く…。そんな現代的なドラマツゥルギーの源流とも言えるアガサ・クリスティの小説「春にして君を離れ」が世界で初めてミュージカル化された。アガサがメアリ・ウェストマコットという別のペンネームを創り出してまで書きたかったミステリー以外の作品群の中でも出色の作品が、数々のオリジナルミュージカルを生み出している日本の音楽座ミュージカルによってミュージカル「SUNDAY」に生まれ変わったのだ。模範的だと思い込んでいた自らの人生が砂漠の灼熱によってぐらぐらと揺れ動き始める主人公の主婦に突きつけられる数々の疑問の切っ先はなかなかに鋭いが、精神の最深部まで降りていかないと自分の中の「真実」が見えてこないことも多く、たとえそれが地獄の苦しみを伴うとしても、自分を見つめ直す機会が持てることはむしろ幸せなことなのかもしれない。音楽座ミュージカルならではのキャラクター付けの巧さや集団美の構築能力に加えて、別ペンネームであってもアガサらしさがにじみ出て来るミステリアスな物語展開をエンターテインメント性たっぷりに描き出すカンパニーとしての充実ぶりがあふれる仕上がりだった。ぜひとも再演を重ねてほしい作品だ。
 ミュージカル「SUNDAY」は12月15~24日に東京都町田市の音楽座ミュージカル芹ヶ谷スタジオで上演された。公演はすべて終了しています。

★ミュージカル「SUNDAY」公演情報=公演はすべて終了しています

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