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純粋な魂をより純度高く磨き上げるような壮大な作品に結実…★劇評★【ミュージカル=笑う男(衛藤美彩出演回)(2019)】

 「レ・ミゼラブル」や「ノートルダム・ド・パリ」など傑作ミュージカルにつながった名作小説を数多く発表したヴィクトル・ユゴーの作品は、物語をきれいにまとめたり、説教的なお話を押し付けてきたりすることなく、人間の残酷さや醜さ、社会の冷徹さなどを包み隠さず盛り込み、それが登場人物らの持つ純粋な魂をより純度高く磨き上げるような壮大な作品に結実していることが多いが、連日大きな歓声を持って迎えられているミュージカル「笑う男」はユゴー作品の中でもとりわけその要素が大きく、徹底して繊細な表現を体得している選び抜かれた俳優陣の懸命な演技もあって多くの人々の心を震わせる仕上がりになっている。ある種の屈折を抱えながらも、生きることに妥協のない主人公グウィンプレンを演じた浦井の多層的な表現は、人間の複雑さを表すだけでなく、最後まで「希望の物語」として位置づけられ続けるこの物語の力強さをよりいっそうスケールアップしている。翻訳・訳詞・演出は上田一豪。(写真はミュージカル「笑う男」とは関係ありません)
 ミュージカル「笑う男」は4月9~29日に東京・日比谷の日生劇場で、5月3~6日に名古屋市の御園座で、5月10~12日に富山県魚津市の新川文化ホールで、5月16~19日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで、5月25~26日に北九州市の北九州ソレイユホールで上演される。

★ミュージカル「笑う男」公式サイト

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