ひりひりする。できれば顔をそむけたい。でも舞台が「見ろ」という…★劇評★【舞台=マーキュリー・ファー(2015)】
ひりひりする。できれば顔をそむけたい。でも舞台が「見ろ」という。それはまるで、観客自身もこの劇のピースのひとつなのだとでも言うようだ。ついに日本初演公演が始まった英国の劇作家フィリップ・リドリーの刺激的な戯曲「マーキュリー・ファー」は、不安と恐怖の入れ子細工のような構造体に、うっすらと紅が差すような愛がにじみ出す、痛くて、哀しくて、はてしない物語。狂気が日常と区別がつかなくなった時代に、それでもなお人間で居続けることの切なさが胸に迫る。こんなにも苦しいのに、こんなにも美しい。今年(2015年)が終わったとき、演劇界を揺さぶった作品、と、きっと言われるだろう。(写真は舞台「マーキュリー・ファー(2015)」とは関係ありません。イメージです)
舞台「マーキュリー・ファー」は、2015年2月1~22日に東京・三軒茶屋のシアタートラムで、2月28日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センターで、3月8日に福岡市のキャナルシティ劇場で上演された。
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