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関係性に潜む真実。繊細な演技と歌、ピアノ演奏があいまり、俳優たちの原初的な才能とこれからの可能性を同時にきらめかせるような舞台に昇華…★劇評★【ミュージカル=スリル・ミー(尾上松也・廣瀬友祐出演回)(2023)】


 日本では犯罪の名前を人の名前で表現することはほとんどない。しかし米国をはじめとした欧米では、「〇〇殺人事件」というように犯人の名前を冠して事件名とする例がとても多い印象がある。はじめは「シカゴ殺人事件」と呼んでいたとしても、やがてはその犯人のキャラクターや犯行の特異性に注目が集まるようになると、名前が冠されることは多々ある。同姓同名の人への風評被害という懸念はあるにしても、そういった例が多いのが実態である。約100年前に米国シカゴ郊外で起きた誘拐・殺人事件もまた「レオポルド&ローブ事件」という若い青年2人の犯人の名前が冠されている。この事件を題材に戦慄のミュージカルとして組み上げた「スリル・ミー」を観ると、事件の本質がまさに2人の「関係性」にこそあったことがよく分かる。だからこそ、事件には2人のファーストネームが冠されているのだ。2011年から日本人キャスト公演が始まり、若い男優にとっては「俳優としての自分を見つめ直さざるを得なくなる」極めて高いレベルの作品として定着。事件の真相を追うサスペンスフルな展開と2人の関係性が変化していくスリルが二重に観客を追い込んでいく唯一無二のミュージカルは沸騰し続けている。尾上松也・廣瀬友祐ベアら3組が織りなす2023年再演公演の出来栄えを観ていると、栗山民也によって引き出された繊細な演技と歌、ピアノ演奏のみの伴奏があいまって、俳優たちの原初的な才能のきらめきとこれからの可能性を同時にきらめかせるような舞台に昇華していることがよく分かる。(写真はミュージカル「スリル・ミー」とは関係ありません。単なるイメージです)
 
 ミュージカル「スリル・ミー」は2023年9月7日~10月3日に東京・池袋駅西口の東京芸術劇場シアターウエストで、10月7~9日に大阪市のサンケイホールブリーゼで、10月11~12日に福岡市のキャナルシティ劇場で、10月14~15日に名古屋市のウインクあいち大ホールで。10月21~22日に群馬県高崎市の高崎芸術劇場スタジオシアターで上演される。
 
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 なお、今回のミュージカル「スリル・ミー」は、尾上松也(私役)×廣瀬友祐(彼役)、木村達成(私役)×前田公輝(彼役)、松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)という3つの固定ペアで上演されていますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、ミュージカル「スリル・ミー」(尾上松也・廣瀬友祐出演回)(2023)に限らせていただきます。ご了承ください。
 この組み合わせではカバーできない、木村達成さん、前田公輝さん、松岡広大さん、山崎大輝さんのファンや関係者の皆さま方には大変心苦しく感じております。人気公演のため取材機会も限られます。また別の機会に採り上げさせていただきます。なにとぞご容赦ください。
 
★ミュージカル「スリル・ミー」公式サイト

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