AdobeStock_76964778_Preview夜の遊園地

夢幻のベールに包まれながら、登場人物や私たちが「オペラ座」から続けてきた長い旅路の終着駅に連れていってくれる…★劇評★【ミュージカル=ラブ・ネバー・ダイ 石丸幹二・平原綾香・咲妃みゆ・香寿たつき・小野田龍之介出演回(2019)】

 ミュージカルとして知られる「オペラ座の怪人」の原作はガストン・ルルーの同名小説だが、ミュージカル化の立役者で作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーがミュージカル化した完全オリジナルの正統的続編が「ラブ・ネバー・ダイ」。ホリプロが日本人キャストで初演した2014年から5年ぶりに再演が行われ、連日盛況が続いている。しかしなんとも興奮するキャスティングが実現したものだ。主人公のファントム役には「オペラ座の怪人」日本人キャスト版を日本初演した際にファントムを演じた市村正親と、ラウル役でデビューし、その後の輝かしいミュージカル人生を築いてきた石丸幹二。いずれもこの作品の深いところと結びついている二大スターによる競演に加え、柔軟な演技力と国内屈指の歌唱力を持つ濱田めぐみや、本作でミュージカルデビューした後「ビューティフル」や「メリー・ポピンズ」などでの熱演で今やミュージカル界期待の新鋭に成長した歌手の平原綾香ら実力を伴った俳優陣が集結した。その中で石丸と平原に目立ったのは、前作以上に登場人物たちの心の葛藤と繊細な愛情のやり取りが刻み付けられている本作にまっすぐに向き合う姿であり、アンドリュー・ロイド=ウェバーが持てる音楽的なテクニックと知識を最大限まで駆使してオペラといってもおかしくないほどの域にまで昇華させた異次元のミュージカルに歌唱力の限りを使って挑んでいく真摯な姿だ。作品を包む「イリュージョン」というテーマが、観客たちを夢心地のまま、どこにもないけど、どこかにきっとある場所へと連れていくような夢幻のベールのように全体を覆い、登場人物たちや私たちがパリの「オペラ座」から続けてきた長い旅路の終着駅に連れていってくれる。(写真はフリー素材のイメージ画像で、ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」とは関係ありません。舞台写真はブログでのみ公開しています)
 ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」は1月15日~2月26日に東京・日比谷の日生劇場で上演される。

 ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」2019年公演は、ファントム役とクリスティーヌ役、ラウル役、メグ・ジリー役、マダム・ジリー役がすべてダブルキャストであるため、多くの組み合わせが実現していますが、ここでは実際の公演を取材することができた「石丸幹二・平原綾香・咲妃みゆ・香寿たつき・小野田龍之介出演回」についての劇評を掲載しています。ご了承ください。

★ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」公式サイト

★キャストスケジュール=希望する出演者を選んで検索することができます。ただし既に終了している組み合わせがある可能性がありますので、ご注意ください

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